最新情報へジャンプ
化粧品原料を検証する-1

ちょっと、化粧品原料を細かく検証してみましょう。

ラウリル硫酸Naとラウレス硫酸Na
共に「合成界面活性剤」と呼ばれています。最初に開発し世に広まったのは、ラウリル硫酸Naの方で、泡立ちも良く、脱脂力も良かったのです。しかし、その界面活性能の高さから、刺激が強すぎるとされ、より安全性をアップしたモノがラウレス硫酸Naです。どうやって刺激を下げたかは、単純で、その分子量を大きくしたのです。分子量を大きくする方法として、ポリオキシエチレン鎖(PEG)をつけるコトで、分子量を大きくし、肌への浸透を抑えました。
しかし、2つ共、旧表示指定成分に当たります。
現在では、シャンプーをはじめとする化粧品へのラウリル硫酸Naの配合は稀です。ただ、練り歯磨きなどの分野では使用がされています。今は、多くのシャンプーの主剤として、ラウレス硫酸Naが使用されています。
このラウレス硫酸Naは、塩化Naを少量加えると激しく増粘し、あのどろっとしたシャンプーの感触を生みます。全成分表示をよく見ると「塩化Na」って表記があるはずです。
また、最近では、コンディショニング感を考えて、Na塩ではないラウレス硫酸TEAやラウレス硫酸アンモニウムなどの使用が増えています。
水質に関係なく非常によく泡立つコトから、サロン用商品でも使用されます。
ただ、TEAタイプでもアンモニウムタイプでも脱脂力がありますから、皮脂の多い頭皮状態の場合は最適ですが、20代後半〜30代以後の皮脂分泌の少なくなって頭皮への使用は、考えるべきだと思います。

ココイルグルタミン酸Na
代表的なアミノ酸系界面活性剤です。肌のバリア成分は残し、余分な皮脂や汚れは洗い流すという選択洗浄性に優れています。肌への刺激も少なく、生分解性にも優れ環境にも優しい界面活性剤です。
また、ラウレス硫酸Naなどのアニオン界面活性能は、ミセル化していない単体で浮遊しているトキが最も刺激が強いとされています。ココイルグルタミン酸Naは、このミセル化していない単体で浮遊しているアニオン界面活性能を包み込む性質があり、それによって、アニオン界面活性能の刺激を抑えると、言われています。実際に、処方開発を行うに当たり、1日5回の洗髪を数ヶ月行った時期がありましたが、頭皮、手共に荒れるコトはありませんでした。
ただ、最近になって、ジラウリルグルタミン酸リシンNaなどのアミノ酸系界面活性剤を機能性原料と表記し、化粧水や美容液への配合例を見かけます。しかし、ココイルグルタミン酸Naを始め、この手のアミノ酸系界面活性剤はアニオン界面活性剤です。化粧水など塗り切り化粧品への配合はお薦めできません。その安全性は、洗い流すコトが前提だと思って下さい。

石ケン素地
石鹸の歴史は長く、非常にいいモノの1つだと思っています。また、日本の風土から、日本の水は軟水である為に、石鹸は十分に泡立ってくれますし、その使用感は日本人好みです。
ここでは、石ケン素地の仮の問題と本当の問題を上げてみましょう。
まずは、仮の問題です。
石鹸は、脂肪酸と水酸化Naや水酸化Kなどのアルカリ剤との中和反応で作られます。精製度の高い石鹸を製造する場合、オイルから作らず脂肪酸を材料とするのです。
ただ、問題になるのは、製造に使用されるです。その水に精製水など純度のいい水を使用しているメーカーでは問題ないのですが、常水(水道水)を使用しているメーカーでは、製造中に発生する金属石鹸(石鹸カス)を避ける為に、EDTA4Naなどのキレート剤を配合します。しかし、商品化される際には、このEDTA4Naは、「キャリーオーバー」というルールに従って表記されるコトはありません。ですから、消費者側は、「石ケン素地」という表記だけでは、旧表示指定成分であるEDTA4Naが配合したタイプなのか否か区別はつけられません。しかし、実際には、洗い流し商品なので、EDTA4Naの配合の有無が刺激の有無にはつながりません。
続いて、本当の問題です。
石鹸は安心、石鹸は安全というイメージからか石鹸乳化という方法が存在します。本来、石鹸乳化とは、今のようにノニオン界面活性剤のが発達していなかった時代に考え出された乳化法です。まじめな処方担当者なら、その刺激性を考慮しアニオン界面活性剤を塗り切り処方するコトはないでしょう。しかし、未だに石鹸乳化処方を安全と謳っている商品があります。
ちょっと考えて下さい。洗顔した後、その泡を残したままってのはどうでしょうか?良い訳ないですよね。石鹸乳化のクリームを塗り切り使用するというコトはそういったイメージなのです。
この話をすると「肌は弱酸性なので、石鹸乳化のクリーム塗っても、最終的に石鹸は弱酸性環境になって働かなくなるから安全です!」と言う方もいます。しかし、洗顔をして、泡を洗い流さす「肌は弱酸性なので、石鹸の泡を残しても、最終的に石鹸は弱酸性環境になって働かなくなるから安全です!」とは思わないはずです。
石鹸は、いい原料です。しかし、使い方を誤ってはいけないと思います。

ラウラミドプロピルベタイン
ベビー用シャンプー、リンスインシャンプー、傷んだ髪用のシャンプーの主剤になります。
由来は植物です。
ベビー用に使われる原因は、この成分が眼刺激が少ないコトが理由の1つになります。目に入っても痛みは控えめですむからです。また、両性界面活性能ですので、洗い流しの際に幾分髪に吸着し、コンディショニング効果を発揮します。
ラウレス硫酸Naなどのアニオン界面活性能は、ミセル化していない単体で浮遊しているトキが最も刺激が強いとされています。ラウラミドプロピルベタインを始め、両性界面活性能は、このミセル化していない単体で浮遊しているアニオン界面活性能を包み込む性質があり、それによって、アニオン界面活性能の刺激を抑えると、言われています。

ベヘントリモニウムクロリド
旧名称を「塩化アルキルトリメチルアンモニウム」といい旧表示指定成分に当たる四級カチオン界面活性能です。名前があまりにも変わっているので、ネットで検索しても旧表示指定成分と認識できない場合があります。ステアルトリモニウムクロリドジステアリルジモニウムクロリドなども同じ中まで、旧表示指定成分になります。何れもリンスやトリートメントに配合されるコンディショニング成分です。
旧表示指定成分と言ってもしっかり洗い流せば刺激を受ける可能性は低くなります。また、電荷の関係で、肌にではなく髪に強く吸着しますので、しっかり洗い流してもコンディショニング効果は充分に期待できます。
ただ、最近では、より刺激の少ない三級カチオン界面活性剤(アミンタイプ)の使用が増えています。三級カチオン界面活性剤としては、ベヘナミドプロピルジメチルアミンステアリルPGジメチルアミンステアロキシプロピルジメチルアミンなどがあります。
四級カチオンにしても三級カチオンにしても、頭髪に使用するコト且つ洗い流すコトが前提と考えます。塗り切りでは頭皮や首筋に付着し、刺激になる可能性を残します。また、フェイス用のクリームに配合している場合を見かけますが、安全性を軽視指定のではなか?と疑問を持ちます。フェイス用や塗り切り処方に使う原料ではないと思います。

PEG-数字
ポリエチレングリコールと読みます。PEGは、俗にいう合成高分子です。旧表示指定成分に当たるのは、分子量が600以下の小さいタイプです。具体的には、PEG-12より数字の小さいタイプ(例えば、PEG-8など)です。PEG-20などは、分子量が大きく、刺激が減少しますので、旧表示指定成分になっていません。ただし、PEG-32などは、その中にPEG-6といった分子量600以下のPEGを含むタイプあるので、一概に数字が12より大きいから安心とは言えません。(注意:PEG-32には、PEG-6を含まないタイプもあります。)
ただ、今、化粧品へのPEGの使用はPEG-75以上のモノ(分子量2600以上)が殆どです。配合目的は乳化助剤です。日本製製品でのPEG-12以下のタイプの配合はまず見かけなくなりました。
また、PEG-8とPEG-8◯◯(例えば、PEG-8ヒマシ油)は、全く別ものですので、混乱のないようにして下さい。
軟膏基剤としてはワセリンが有名ですが、ワセリンは水溶性の成分を溶かし込むコトが困難です。そこで、水溶性の成分を入れるコトの出来る軟膏基剤としてポリエチレングリコール軟膏が日本薬局方に記載されています。
今でも、乳化剤目的やエモリエント目的で、分子量の大きいPEG-75やPEG-150が使用されていますが、乳化の主流ではなくなってきました。

PPG-数字
ポリプロピレングリコールと読みます。PEGと似た構図なのですが、今や日本の化粧品への配合はほぼ見かけなくなりました。

PG
プロピレングリコールと読みます。旧表示指定成分です。グリセリンやBGよりもさらりとした使用感の保湿成分です。今は、わざわざ配合する例は少なくなり、代わりにDPG(ジプロピレングリコール)が多く使用されています。ただ、PGは可溶化力が強いので、シャンプーなどへの配合は未だにあります。わたしとしては、洗い流す場合は、全く安全な原料だと思っています。
DPGは、PGが2つ付いて分子量が大きくなって刺激を緩和したモノですが、それでも塗り切り商品(化粧水など)で、高配合(全成分表示で上位5番目までに入る)と、赤みや痒みを感じる方がいます。旧表示指定成分でなくても、注意が必要は原料の1つだと思います。


化粧品原料を検証する-2

続いて、化粧品原料を細かく検証してみましょう。

ベヘネス−10
旧名称をポリオキシエチレンベヘニルエーテルと言います。高級アルコールであるベヘニルアルコールにPEGが付いた形のモノです。ベヘナスには5、10、15、20、25、30などのタイプがあり、数字の違いはPEGの長さの差です。基本機能は乳化剤なのですが、例えば、ベヘネス-5は、親油性乳化剤となり、ベヘネス-30は親水性乳化剤となります。
ヘアケア商品だけでなく、塗り切り商品への配合も見られます。洗い流しの場合は全く危惧する成分ではないでしょう。クリームや乳液など塗り切る場合でも、肌バリアを破壊し、刺激を与えるというデータはないですね。ただ、ベヘネス-5などPEGの短いタイプの場合、不純物として分子量の小さいPEGが混じっている可能性が想像されます。肌質の敏感な方は、できれば、数字の小さいタイプはチェックして使いのがいいでしょうね。

セテス−15
旧名称をポリオキシエチレンセチルエーテルと言います。高級アルコールであるセタノールにPEGが付いた形のモノです。セテスには、1、2、3、4、5、6、10・・・と非常に多くのバリエーションがあります。数字の違いはPEGの長さの差です。基本機能は乳化剤です。セタノール自体は旧表示指定成分ですが、PEGを付けて分子量を大きくするコトで刺激の緩和を図っています。構造上且つ含有されるであろう不純物からして、ベヘネスの方が刺激は低いと思いますが、セタノールで大丈夫な方は、使用を危惧する必要はないでしょう。
乳化構造の作りやすさや使用感などは、セタノールの方がベヘニルアルコールより上になりますので、古くから沢山の処方に採用されてきました。ですから、セタノールをベースとするセテスー◯の方がベヘネスー◯より細分化されたのでしょう。

セタノール及びステアリルアルコール
セタノールやステアリルアルコールは、確かに旧表示指定成分です。分類としては、高級アルコールに属します。しかし、これらの成分配合の乳液など、塗り切り商品数が非常に多いにも関わらす、特にこの2成分に刺激を感じるという方は、今まで会ったコトはないです。実際に、アトピーなどの敏感肌用化粧品への配合例も多く見かけます。旧表示指定成分でないモノでもこの2品よりトラブル率の高い原料があります。
そもそも、セタノールやステアリルアルコールが、「特定のヒトには刺激を感じるかもしれない原料」として表示指定成分に指定されたその背景を辿ってみましょう。

それは、もう30年以上昔の話になります。当時、アメリカでとある化粧品を使用して「黒皮症」が起こりました。その原因を調べていくと、どうもセタノールだったようです。そのセタノールは、石油合成由来のであり、不純物があったとされています。一方、このコトを受けて日本のセタノールやステアリルアルコールを作っているメーカー数社が会議を開きました。当時、日本にもセタノールなどは当然ありましたが、石油合成系ではなく、鯨油(クジラ)由来でしたので、同じセタノールと言っても、石油合成で生じたような石油由来の不純物は混じっているはずもありません。しかし、某大手K社が、「表示指定成分になったら、宣伝になるんじゃないか?」という暴挙を発し、皆も大手に習えで、セタノールやステアリルアルコールは表示指定成分に名を連ねるコトになったそうです。
さて、振り返りましょうか。アメリカで起こった黒皮症の原因は、石油由来の不純物が原因です。なのに、鯨油由来のセタノール等が表示指定成分になった、とまぁ、非科学的なお話です。
また、同じ高級アルコールベヘニルアルコールミリスチルアルコールなどがありますが、それらは表示指定成分ではありません。因に、両者とも植物由来です。

どうして、表示指定成分ではないのか?
それは、セタノール騒動があった時代は、原料は個別申請でしたが、ベヘニルアルコールが出来た時代は、今の粧配規、粧原基など化粧品原料がある程度法的にまとめられた時代なので、「新しい」から「その原料でのトラブル報告がない」ので、表示指定成分にはならなかったのです。
同じコトが多くの原料でも言えます。セタノールやステアリルアルコールよりも刺激が明らかにあるにも関わらず、配合上限もないし、表示指定成分でもない原料!そんなモノが溜まりたまったので、化粧品は、「全成分表示」に踏み切ったのです。

ミネラルオイル
鉱物油として未だに毛嫌いされる方もいますが、今は、化粧品グレードのモノは精製度も高く、ベビーオイルにも使用されるくらいの安全性の高さを誇ります。構造からすると、ワセリンの仲間になります。
昔は、ミネラルオイルを使用して、肌が黒くなったという「油焼け」の症状を訴えた例もありましたが、それはミネラルオイルそのモノが原因ではなく、そこに含まれた不純物が原因でした。当時、ミネラルオイルは「流動パラフィン」と呼ばれていました。不純物の多い流動パラフィンの場合、水の上に1滴たらすと、ガソリンさながら虹色に光ったそうです(不純物の多さを意味します)。しかし、それは、世に携帯電話もなければ一般家庭にパシコンは愚かワープロも無かった時代の話です。精製技術がどんどん進む工業会で、安全性がブランド価値を生む時代になり、そんな不純物だらけの製品は、「安いから」としても日本企業で取り扱いされるコトはありません。今や、ミネラルオイルは最も刺激の少ない原料の1つに位置されています。

イソステアリン酸PEG-15グリセリル
トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル
イソステアリン酸PEG-8グリセリル
ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリル(PEG-7グリセリルココエート)
これらは皆同じ仲間で、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルという仲間になります。
通常、オイルは、グリセリンに3つの脂肪酸が付いた形をしています。その内1つの脂肪酸を残して、残り2つをPEGに換えたタイプがこの群になります。
優れた乳化力を持ちますので、洗い流しや拭き取り型のクレンジングの主剤に使用される場合があります。

この類いの乳化剤は、肌の表面に残すと肌バリアをどんどん破壊する!とお話される本やサイトがありますが、そうではありません。分子量が大きいので、ちゃんとした使用を行えば、肌深くに浸透して肌バリアを破壊するコトはありません。
しかし、「使用感はしっとりしているのに、長期使用していると肌が乾燥を感じる!」と言う方はいます。この「乾燥感」を感じているトキに「肌バリアを破壊してる!」と言われると「そうかもしれない!」と、思ってしまいますよね。でも、原因はソコではないのです。

この手の乳化剤は、グリセリン部分や脂肪酸部分がある、且つ、ノニオン界面活性剤というコトで、使用後、肌のつっぱり感が低いです。低いだけなら良いのですが、しっとり感まで与えてしまう>場合があります。このしっとり感がオイルなら、肌に浸透して、肌の乾燥を防ぐのですが、この成分は肌に浸透しませんから、「本当の意味での保湿やエモリエント効果はありません。あるように感じさせるだけ」なのです。
にも、関わらず、結構、しっかりした乳化力を持っていますから、肌の皮脂成分を石鹸以上にしっかり奪います。でも、石鹸のような「皮脂を奪われた自覚症状を残さない」ので、クレンジング後の「ケア」を侮ってしまう場合が多いのです。若しくは、石鹸で乾燥を感じてしまうような皮脂量の少ない方でも、つっぱらないので、「気楽に使えてしまう」のです。
ですから、肌バリアは壊しませんが、「意外にしっかり脱脂してる」ので、使用後は、ちゃんと化粧水や美容液を使い、肌ケアしましょうね。

イソステアリン酸ポリグリセリル-2
ジオレイン酸ポリグリセリル-10
トリラウリン酸ポリグリセル-10
これらは皆同じ仲間で、ポリグリセリン脂肪酸エステルという仲間になります。
グリセリンを重合とう方法でいくつもつなげて、そこに脂肪酸を何個か付けて作ります。他にも、2つのグリセリンが引っ付いたジグリセリンから作ったり、ジクロロプロパノールなどから作る場合もあります。このコトは、同じジオレイン酸ポリグリセリル-10でもそこに含まれるであろう不純物が異なるというコトです。
まぁ、ポリグリセリン脂肪酸エステルの場合、不純物と言っても、環状グリセリンとかペンタグリセリンとかそんな感じの不純物になりますから、肌への危惧という成分はありません。(ただ、処方担当としては、この不純物や実際の重合比によって、乳化安定が変わりますから、厄介なのですが)。
ベヘネス−10やセテス−15、スアリン酸PEG-15グリセリルとの違いの1つに、遊離したPEG単体の不純物を含まない点があるでしょう。
このポリグリセリン脂肪酸エステルは、ノニオン界面活性剤であって、刺激は少ないグループになります。◯◯ポリグリセリル-10などになると、グリセリンが10個繋がった形になって、分子量も大きいので肌への浸透もなく、肌バリアの破壊も低くなります。また、耐熱性に優れるので、分解して分子が小さくなって悪さするようになるコトもありません。
非常に多くの種類があって、わたしも全ては把握できないのですが、肌への刺激は、このグリセリンがいくつ付いているかではなく、そこに付く脂肪酸の長さはチェックが必要かもしれません。 例えば、肌が弱いヒトは、◯◯ラウリン酸とかで始まるタイプよりも◯◯ステアリン酸で始まるタイプの方がマイルド
だと思って下さい。

ステアリン酸ソルビタン
ヤシ油脂肪酸スクロース
ミリスチン酸グリセリル
この類いは、ソルビトール()、スクロース(ショ糖)、グリセリンなどをベースに脂肪酸を付けたタイプで、多少の差はあれ、お仲間です。その多くは、食品添加物として、食品に使用されたりもします。
この類いでは下記の2つをチェックしましょう。

1)カプリル酸タイプ、若しくはカプリン酸タイプ
こういった脂肪酸が極端に短いタイプがあります。具体的には、カプリル酸グリセリルなどです。こういった短い脂肪酸タイプは、抗菌性などがあるので、化粧品用途でも抗菌助剤として使用される例があります。しかし、刺激を感じる方もいます。どういった方がどのくらいの濃度で刺激を感じるか?という細かいデータは持っていませんが、処方を組んで来た経験上、フェイス用の塗り切りや洗顔フォームに配合した場合、唇や目元にぴりぴり感を感じるそうです。ただ、それは、使用している原料に含まれる不純物(遊離したカプリル酸)が原因なのだろうと思っています。現に、カプリル酸の製造メーカーを変更すると、刺激が緩和されます。

2)ステアリン酸グリセリル(SE)
問題なのは、ステアリン酸グリセリルではなくて(SE)と表現されている部分です。 この(SE)とは「自己乳化型」と言う意味であって、「ステアリン酸グリセリル以外に、石鹸などの不純物をわざわざ配合しています」という意味です。昔は、不純物(添加物というのが正しいかもしれませんが)としては、石鹸が主だったのですが、最近では、石鹸以外に、モノ脂肪酸グリセリルが配合されている場合もあります。
こういった成分が添加されるのは、ステアリン酸グリセリルが少々溶けにくいので、その溶解能を上げるコトが目的です。また、同時に、製品の安定性やクリームのキメも向上します。

洗い流し商品(洗顔フォーム)に配合するなら何ら危惧するコトのない原料ですが、クリームなどの塗り切り商品への配合は危惧されます。いわば石鹸乳化と同じ感じです。アニオン界面活性剤の塗り切り使用は避けるべきです!まぁ、その当たりもあって、不純物の選択が石鹸→モノ脂肪酸グリセリル(ノニオン界面活性剤)に移行しつつあるのでしょう。でも、全成分表示だけでは、石鹸タイプかモノ脂肪酸グリセリルタイプかは区別がつきません。また、(SE)タイプを使用しなくても、不純物のないステアリン酸グリセリルでも処方は組めるはずなのです。手を抜かず、良い商品作りをしたメーカーさんのを買って欲しいですね。

ポリソルベート60
ポリソルベート80
これらは皆同じ仲間で、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルという仲間になります。どこかで、似た名前がありましたね。イソステアリン酸PEG-15グリセリルなどのポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルの「グリセリン」部分が「ソルビトール(糖)」に変わったタイプです。
非常に高い乳化力を持っていて、微量配合でもいい仕事をします。医薬品ではオロナイン軟膏などにも配合されていて、知らぬ間に一度が使っているのではないでしょうか。

ただ、この成分をネットで検索すると様々なモノが掛かってきます。
例えば、ポリソルベート80は、細胞培養を行っている分野の方では、「Tween80」と言う名で使用された経験があるかもしれません。
培養細胞は、肌の細胞と違ってバリアのない剥き出しの無防備な細胞です。そういった細胞を飼う培地に何かを添加したい場合に、Tween80を使用します。当然、適量があって、多く配合すると細胞は死にます。逆に言えば、適量も守れば、剥き出しの細胞すら殺さないのです。
また、物質の生体に対する毒性を見る場合、水に魚を用いる場合があります。その確認したい物質が水に溶けやすいといいのですが、難溶性の場合、Tween80で乳化して添加する場合があります。ですから、毒性試験でTween80の名をよく見かけますが、「何の毒性をみているのか!」を見間違えると、Tween80が単純に悪者に見えます。
このように、医薬品や科学の分野での使用が多い原料ですから、安全性、毒性の両方の情報がネットに流れている原料です。

PEG-◯水添ヒマシ油(◯は数字)
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とう仲間になります。
安全性が非常に高い乳化剤の一種です。分子量が抜群に大きく、使用されて来た歴史も長く、クリームなどの塗り切り化粧品への配合が多いですね。分子量が抜群に大きい理由は、ベーズにヒマシ油を使っているからです。わたしは、最も安全性の高い乳化剤の1つだと思っています。

水添レシチン
レシチンは、天然の乳化剤です。化粧品用途では、卵黄由来のタイプと、ダイズ由来のタイプがあります。水添とは、「水素添加」と言う意味で、レシチン中の二重結合を安定型にする工夫です。同じ方法をスクワレンからスクワランを作る場合に行っています。この水添をしたコトを「合成」と謳う方がいますが、ならば、中和して作る石鹸も充分合成です。また、水添レシチンと同じ構造のレシチンは、通常的に卵黄やダイズの中で見つけるコトができますので、天然にある構造です。

レシチンには、ナノカプセルで有名なリポソームを作る材料になります。
実は、レシチンというのは、総称名であって、レシチンには、二本鎖タイプのホスファチジルコリン(PC)一本鎖タイプのスフィンゴミエリンやリゾホスファチジルコリン(LPC)などの混合成分です。
実際には、水添レシチンの場合、化粧品原料では、PC濃度をしっかり管理されているのが一般的です。例えば、PC含有量が95%以上のタイプなら、非常に奇麗なナノカプセル(リポソーム)が簡単に作れます。より小さいナノカプセル(リポソーム)を作りたい場合、LPCを用いるといいのですが、LPCは、ヒスタミンの誘導や溶血性の報告がある為、選択的に除去されている場合が多いです。
こう書くと「レシチンの中にあるLPCが怖い!」と思われがちですが、濃度的に問題が生じるコトはないでしょう。レシチンは、卵黄やダイズ由来なので安価に思われる方もいるでしょうけど、恐ろしく高い原料です。また、(下記に記しますが)臭いもあるので、高濃度配合はまずありえません。
レシチンのいいトコは、ナノカプセルよりも、レシチンそのモノが持つ使用感です。塗布、べとつかず、心地よいしっとり感を体感できます。ですから、化粧品に配合する場合、ナノカプセルを作る目的ではなく、レシチンを配合している場合も多いのです。
欠点は、臭いですね。レシチン特有の生臭さが問題になります。その臭い改善の方法としても、レシチンを水添して、水添レシチンにして使用するという方法がとられます。また、濃度を高く配合しないコトも臭い対策の1つなので、高濃度配合をするコトはまず、ありません。

トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル
ベビーオイルにも使用されるさらっとしたエステル油です。上記の、◯◯グリセリルという乳化剤と似た感じを受けるかもしれませんが、全く別ものです。特に乳化力はありません
最近、表示名称が変わって、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルと表記されている場合も多いです(「酸」が付きましたが、構造は全く同じです。表記方法が変わっただけです。)。
安全性にも優れています。

ミツロウ
古くから、乳化の為に使用されてきた原料です。口紅への配合の他、手作り化粧品の分野では、クリームを作る際の乳化剤として使用されているようですね。
ミツロウを乳化剤として使用する場合、ホウ砂を併用すると非常にいい乳化条件を作るコトができ、古くからこの方法が使われてきました。しかし、今現在、化粧品へのホウ砂の配合は禁止されています。が!ミツロウの乳化目的に限って許されています(ホウ酸じゃなくて、ホウ砂です)。化粧品基準には、ホウ砂は、「ミツロウ及びサラシミツロウを乳化させる目的で使用するもの」に於いてのみ「商品100g中への配合は、0.76g(ミツロウ及びサラシミツロウの1/2以下の配合量である場合に限る。)」とされています。とはいえ、ホウ砂の配合された化粧品をお薦めはしませんけどね。

そもそも、ミツロウのホウ砂を用いた乳化など、最近の若手の処方担当者は知らないと思います(汗)。一度、原料メーカーの方とお話したコトもあるのですが、「ホウ砂」自体、ここ何年も問い合わせもないですし、ミツロウのホウ砂乳化やってるって話も聞いたコトがない。と言うぐらい、消え去りつつある技術です。

さて、ミツロウですが、口紅の使用に於いて、たまにトラブルを生じる場合があります。原因は、精製度の問題です。極端に精製度の高いミツロウで作った口紅はもろい仕上がりになりがちです。逆に、適度な精製度の場合、粘りがでて、スティックの固さや使用感向上につながります。オイルもそうなのですが、表示名称だけでは、その精製度までは判断できません。ただ、精製度は、メーカー別で自社基準があったり、処方担当者の拘りがあったりしますから、ミツロウ入りの口紅Aでトラブっても、別メーカーのミツロウ入りの口紅Bではトラブらなかったりします。


化粧品原料を検証する-3

更に続いて、化粧品原料を細かく検証してみましょう。

パルミチン酸エチルヘキシル
イソノナン酸イソノニル
トリオクタノイン
これらは、エステル油という分類になります。エステル油とは、由来が植物だったり石油だったりしますが、人工的に作られたべとつかない油です。人工的に作ると言うと危惧される方もおられるかもしれませんが、天然油より優れた点もあります。それは、「使用感」と「酸化安定性」です。また、植物由来のエステルの場合、生分解性にも優れ、化粧品では広い分野で使用されています。
非常に多くの種類がありますが、携帯電話のない昔ならともかく、今の工業技術と安全性がブランドになる時代背景からして、エステル油はまず、安全な原料と思います。

パルミチン酸デキストリン
植物由来の半合成のゲル化剤です。特にオイルのゲル化に優れているので、ヘアケアよりもクリームやUVカット化粧料、ファンデーションなどへの配合の方が力を発揮します。
最近では、パルミチン酸デキストリンを配合するコトで、口紅や口紅下地などをしっとり感を出させる為に「」を配合したりします。しかし、わたしの経験上、口紅に「水」の配合のあるタイプはトラブルを生じやすいと思っています。その原因が、パルミチン酸デキストリンであるかは不明ですが、口紅の全成分表示に「水」の表記がある場合、トラブルがちな唇の方が、ご注意下さい。
同じ仲間にステアリン酸イヌリンなどもあって、環状シリコンの乳化目的で配合される場合もあります。

キサンタンガム
発酵法で得られる天然高分子です。加熱行程なしでも、いい増粘をしますし、伸びも良くいい感触の高分子です。使い用によっては、乳化剤を使用せず、こういった高分子にオイルを分散させて、乳化剤フリーのクリームを作るコトができます。
ただ、発酵法で製造されていますので、5%以上配合すると腐りやすいとも言われますし、殺菌を兼ねた加熱行程をプロは行います。

カルボマー
キサンタンガムとは対照的な、合成の高分子です。使用の歴史は非常に長く、安全性もピカイチです。塗り切り使用でも、石油系原料で非常に安全な例です。通常、中和してゲルにしますので、全成分表示には「水酸化Na」や「水酸化K」が共に載ります。また、最近では、アルカリ性のアミノ酸(アルギニン)での中和でゲル化したタイプも出回っています。
水とアルカリがあれば0.1%でもゲルになりますから、素人さんでも扱いやすいので最近では手作り化粧品のネット販売でも購入が可能なようです。注意点は、中和後、弱酸性にしておくコトと、塩を入れるとゲルが壊れてしまうので、塩の配合を避けるコトです。

カルボキシメチルセルロース
(化粧品では使用されていない?)
カルボキシメチルセルロースCa
(旧名称:カルボキシメチルセルロースカルシウム)
セルローズガム
(旧名称:カルボキシメチルセルロースナトリウム)
共に植物由来の高分子です。
セルローズガムは、洗顔フォームやパック、アイシャドウ、クリーム、美容液など幅広い分野で使用されています。使用しているメーカーも、資生堂、DHC、オリビス、ファンケル、コーセー、ポーラ、アユーラ等非常に多くのメーカーが使用しています。また、食品に添加されている場合もあります。セルローズガムの場合、実際にトラブルが少ないからこそ、多くの分野、多くのメーカーで使用されているのだと判断できます。
しかし、塩の差だけのはずなのですが、カルボキシメチルセルロースCaは化粧品への配合例は殆ど見かけません。まして、塩のない「カルボキシメチルセルロース」は化粧品原料としての登録すらされていないのではないでしょうか?

カルボキシメチルセルロース」はネットで検査すると、いくつか刺激性のデータが掛かります。その多くは、「カルボキシメチルセルロース」が菌によって分解された際に毒性物質が生じるといった内容です。しかし、化粧品に配合される場合、商品の抗菌性は保持されていますので、こういった報告をもって、セルロースガムが危険だ!と、言うのは如何な物かと思います。また、「カルボキシメチルセルロース」として、ナトリウム塩タイプもカルシウム塩タイプも、塩を持たないタイプも一緒の扱いに解説される場合が多く、わたしは「塩尾タイプで、刺激なども随分違うのではないか?」と思っています。

ヒドロキシエチルセルロース
ヒドロキシプロピルメチルセルロース
セルロースガム同様に基礎化粧品からヘアコンディショナーまで幅広い分野でしようされている植物由来の高分子です。特に、ヒドロキシエチルセルロースヘアコンディショナーへの配合が多いのに対して、ヒドロキシプロピルメチルセルロースボディーシャンプーへの配合が多いように思いますが、それは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは石ケン素地との混合原料があるからかもしれません。
共に、洗い流し商品への配合では、使用感も軽く、安全性も高くて良いと思います。しかし、美容液などの塗り切り商品での採用は、医薬品メーカーの美容液や海外メーカー組が殆どで、日本の大手基礎化粧品メーカーは、塗り切り基礎商品の採用例は少ないようです。
間違ったイメージかもしれませんが、医薬品を主にしているメーカーや海外メーカー組は、日本の化粧品メーカーに比べて、安全性に対する基準が甘い気がします。

アクリル酸アルキルコポリマーAMP
アクリル酸アルキルコポリマーNa
アクリル酸アルキルコポリマーアンモニウム
耐水性のある被膜を形成する合成系の高分子です。AMP塩はアイブロウ、Na塩は洗顔フォームなどでも使用例がありますが、あまり多くの場では使用されていません。
一方、アンモニウム塩は、アイブロウやマスカラ、特に、マスカラではマックスファクターやカネボウ、コーセー、花王、オルビスなど多くのメーカーでの採用があります。先にも上げましたが、多メーカーで採用のある原料は安全性が高い場合が殆どです。一方、あまり採用のない原料は、「新しい」か「何かあるか」のどちからかですね。
アクリル酸とう名前の部分から「合成」をイメージしてビニールやプラスチックのような印象を受けるかもしれません。実際には、CH2=CHCOOHという非常に短いモノで、これが並ぶとポリアクリル酸となりますが、アクリル酸アルキルコポリマーアンモニウムの場合、アクリル酸に炭素鎖8までのアルキルが付いた形になっています。
使用される場所が、アイブロウやマスカラであって、そういう部位に使用するのであれば問題のない原料でしょう。原料の安全性を考える場合、「どこで使うか」もその安全性に大きく影響しますからね。逆に言えば、こういった原料を安易にフェイス用の美容液などに配合するコトはちょっとお薦めできませんね。

加水分解コラーゲン
加水分解ケラチン
加水分解シルク
加水分解コンキオリン
加水分解エラスチン
本来、コラーゲンもケラチンもシルクもタンパク質でありそのままでは水に溶けません。そこで、加水分解するコトで、分子量を小さくすると共に、親水性の部分を剥き出しにし、水に溶けるタイプにしたモノが、この加水分解◯◯です。こういった加水分解◯◯を界面活性剤だと誤解されている方もいますが、そうではありません。界面活性剤とは極性の異なる二相を混濁させる性質がある物質のコトであり、加水分解化は、単純にこの物質が水に溶けやすくなった、と言うコトだからです。
また、合成ポリマーだと誤解されている方もいます。加水分解◯◯は、あくまでも、「ぼろぼろにするコトで、親水性を上げる」という方法を取ったモノであり、何かを合成して加えたモノではありません。

通常、加水分解◯◯を髪の修復を期待し、コンディショナーやトリートメントに配合する場合、分子量が500前後が最良と言われ、分子量が数千になると、髪の表面に付くだけであったり、洗い流されてしまったりします。しかし、分子量500前後のモノは、醤油のような臭いがあるので、フェイス用に用いる場合は、臭いの少ない分子量数千のモノを選択します。また、最近では、分子量数万の大きいタイプも扱われています。
当然、分子量数千〜数万のモノは肌への浸透は期待できません。しかし、乾燥を感じている肌の多くは、物理的に傷ついていたり、バリアがもろくなっていたりします。そういった部分の表面に付き、内部からの水の蒸発を抑制したり、長く肌表面に水を止めて保湿するコトは美肌作りとして有意義な方法です。ヒアルロン酸Naのように、加水分解◯◯が、肌表面でしっかり保湿してくれるコトも、健全な肌状態を作る1つの方法であります。
更に、起源について、少しコメントしましょう。
加水分解コラーゲンの起源になるコラーゲンは、動物(ウシ)由来のタイプとサカナ由来のタイプがあります。サカナの場合、シャケだったりタラだったりマグロだったりします。本来、コラーゲンは、その動物の体温付近で柔らかくなります。ヒトの体温とウシの体温が似ているコトから、ウシ由来のコラーゲンが一番ヒトに馴染むと言われます。一方、寒い地方に生息するシャケの方が、南洋のマグロよりも体温(?)が低いので、シャケのコラーゲンの方が低い温度で柔らかくなります。この性質は、加水分解されても引きずる点があり、由来動物によって、その使用感や安定性は異なります。

ケラチンの場合、羊の毛(ウール)由来が一般的です。本来、髪と最も組成が似ているので、傷んだ髪の修復には加水分解コラーゲンよりも加水分解ケラチンの方が向いています。

PPG-3ミリスチル
ポリオキシプロピレンアルキルエーテルとう仲間になります。
PPG-3ミリスチルの場合、構造上、PPG(ポリオキシプロピレンオキシド)構造を持つので、分類的にはノニオン界面活性剤、つまり乳化剤に分類されますが、親水性が低く、水馴染みが非常によくありません。まるで、オイルみたいな感じです。実際に、ポリアミド変性シリコンの分散剤に使用されるくらい、水馴染みはよくありません。そこで、使用した際には、ワセリンのような感じになるので、便宜上「エモリエント剤」に分類される場合があります。まぁ、乳化剤と紹介しても、実質そういった方法で使えない訳で、オイルや高級アルコールのような感じで使用しますから、「エモリエント剤」と紹介されるのでしょう。
分子量も400以下なので、髪への吸着も良く、整髪用油分として使用される例が多いようです。 しかし、実際には、コロンや日焼け止め、美容液など幅広くしようされています。
この成分そのモノが肌バリアを破壊しうる乳化剤とは思いません。ただ、このPPG-3ミリスチルが与えるしっとり感やすべすべ感は、表面上の偽りであって、肌バリアになりうる成分を「補給」したから肌の手触りがよくなった訳ではありません。トリオクタノインなどの「脂肪酸とグリセリンの合成でできたエステル油」とは全く異なり、PPG-3ミリスチルは「補給」という意味を持ちません。ただ、化粧品に含まれる成分には「補給目的」の成分以外にも「使用感を楽しむ為目的」の成分もあるってコトを知って頂きたいのです。
「しっとりして、しかもべたつかないからいい感じ♪」と、感じるのはいいですが、それは表面上の偽りでもあるコトを知っていて下さいね。

こう考えると、「安全」、「危険」で分類しるよりも、「補給」、「使用感改善」で分類した方が、参考になるかもしれませんね。

紫外線吸収剤
サリチル酸ヘキシル、ホモサレート、◯◯PABA◯◯、メトキシケイヒ酸オクチル(メトキシケイヒ酸エチルエキシル)、オキシベンゾン−◯、t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン等々沢山の種類があります。
紫外線吸収剤は、紫外線を吸収した後に、熱エヘルギーに変換して、その刺激を防ぎます。しかし、分解性があり、分解した際に、毒性の高い成分が生じる可能性を指摘されています。また、合成系ですので、その不純物自体の危惧も懸念されます。
高SPFや高PA値を簡便に出せますから、海外を中心に配合が進み、今や、日本でも通常の日焼け止めに配合されています。
まだまだ、安全性等、危惧される新参者の原料です。
最近では、ヘアケア用のオイルとしてシア脂クパス脂(テオブロマグランジフロラム種子脂)などは、紫外線吸収能のデータがあり、天然の紫外線吸収剤として配合される場合もあります。

レモン精油(レモン果皮油、レモン油)
柑橘系精油の多くは、光毒性のフロクマリンを含有します。しかし、レモン精油などは、そのフロクマリンを精製行程を通し、フロクマリンフリーにしたタイプが化粧品に配合される場合が多いようです。ただ、メーカー確認は必要かと思います。
また、グレープフルーツ精油は、日本人の最も好む香調の1つです。しかし、グレープフルーツ精油には本来フロクマリンが殆ど含有していないコトを理由に、フリクマリンを除去する行程を踏んだ精油は、殆どないようです。しかし、少ないとは言え、フロクマリンフリーではないので、塗り切りの化粧品ではチェックが必要と思います。ただし、洗い流し商品なら、問題ないでしょうね。

キレート剤(TETA、他)
EDTAタイプが有名で、そのEDTAが旧表示指定成分であった為、「キレート剤=刺激がある」と勘違いされがちです。しかし、植物由来のキレート剤やアミノ酸系キレート剤、キトサンのような高分子タイプ、生分解性性の高いタイプなど、様々なタイプが世に出回っています。
配合目的としては、洗顔やシャンプーの泡質向上の他、抗菌補助の目的にあります。キレート剤の抗菌性は、菌が増える為に必要な二価のイオンをキレート剤が奪うコトによって、菌の増殖を抑制するといった方法です。ですから、キレート剤がヒトの細胞膜に刺激を与えるコトはありません。ただ、EDTAなどのように、キレート作用そのものよりも、そのモノが持つ構造自体が刺激になったり、分解物が刺激を生んだりする場合もありますから、天然由来ではないキレート剤は、塗り切り商品ではチェックが必要ですね。

パラベン
メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンなどいくつかの種類があります。
旧表示指定成分ですが、濃度依存性があり、低濃度では刺激を感じない場合が多いです。特に、日本の化粧品は海外の化粧品に比べて、パラベン配合の濃度がかなり低く処方されています。
環境ホルモンの問題の上がりましたが、メチルパラベンをはじめ殆どのパラベンは、環境ホルモンとして「シロ」であるコトが分かりました。しかし、ブチルパラベンだけは「環境ホルモンでないといいきれない」という微妙な位置づけになっています。
全成分表示を見たトキに、3〜5種のパラベンが表記されている場合があります。イメージからすると「沢山のパラベンが入っているなぁ」と思われがちですが、そうではないのです。パラベンは、単品で使用するよりも、複数種配合する方が、パラベンの配合総量を減らすコトができるのです。ただし、海外の製品は基本的に日本製品よりもパラベン総量が多いのでご注意下さい。


2007年日焼け止めと紫外線吸収剤

まだ、ツーカーという携帯電話があった時代には、日本の日焼け止め化粧品の多くは、紫外線吸収剤フリーでした。主に、酸化チタンや酸化亜鉛で高SPF値を獲得していました。
しかし、ここ2年の内に、紫外線吸収剤フリーで、高SPFの日焼け止めを見つけるコトは困難になってきています。例えば、

アネッサ パーフェクトUVサンスクリーンEXN(資生堂)(SPF50+,PA+++)」、「アネッサ パーフェクトスムースサンスクリーンEXN(資生堂)(SPF50+,PA+++)」、「アネッサ タウンユースサンスクリーンNa(資生堂)(SPF30,PA++)」には紫外線吸収剤メトキシケイヒ酸エチルヘキシルが入っています。しかし、同じ資生堂でも「アネッサ ベビーケア サンスクリーンN(SPF34,PA+++)」、「d プログラム デーケアプロテクター(SPF18.PA+)」は紫外線吸収剤フリーになっています。

ビオレ 弱酸UVカット(花王)(SPF50+,PA+++)」や「ビオレ さらさらUV パーフェクトフェイスミルク(花王)(SPF20,PA++)」には紫外線吸収剤メトキシケイヒ酸オクチル(メトキシケイヒ酸エチルヘキシルと同じです)が入っています。しかし、同じ花王でも「ニベアサン プロテクトマイルドミルクSPF50+ (SPF50+,PA+++)」、「キュレル 薬用UVクリーム(SPE25,PA++)」は紫外線吸収剤フリーになっています。

DHCサンカットQ10 50プラス(DHC)(SPF50+,PA+++)」にも紫外線吸収剤のメトキシケイヒ酸オクチル(メトキシケイヒ酸エチルヘキシルと同じです)が入っています。しかし、同じDHCでも「DHCホワイトサンスクリーン(SPF30,PA++)」は紫外線吸収剤フリーになっています。

「サンスクリーン(R)スプレー(オルビス)(SPF20,PA+)」や「サンスクリーン(R)スーパー(オルビス)(SPF50+,PA+++)」にも紫外線吸収剤のメトキシケイヒ酸オクチル(メトキシケイヒ酸エチルヘキシルと同じです)が入っています。しかし、同じオルビスでも「サンスクリーン(R)オンフェイス(SPF34,PA++)」、「サンスクリーン(R)ルーセント(SPF30,PA++)」は、紫外線吸収剤フリーです。

「ちふれ UV サン ベール ミルク(ちふれ化粧品)(SPF50+,PA+++)」にも紫外線吸収剤のメトキシケイヒ酸エチルヘキシルが入っています。しかし、同じDHCでも「ちふれ UV サン ベール クリーム(WP)(SPF25,PA++)」は紫外線吸収剤フリーになっています。

「デイプロテクターUV (アベンヌ)(SPF25,PA++)」にも紫外線吸収剤のメトキシケイヒ酸オクチル(メトキシケイヒ酸エチルヘキシルと同じです)が入っています。しかし、同じアベンヌでも「サンブロックEX50N(SPF50,PA++)」は、紫外線吸収剤フリーです。しかし、紫外線吸収剤の有無に関わらず、共に「敏感肌用」と謳っています。

この用に、同じメーカーでも、紫外線吸収剤配合商品と非配合商品を共に持っている場合が多いようです。

その他にも「アリィー ダイヤモンドバリア サンスクリーン(ウォータータッチ)(カネボウ)(SPF50,PA+++)」、「ファシオ スーパーUVスクリーン (ウォータープルーフ) EX(コーセー)(SPF50+,PA+++)」、「コスメデコルテ ザ・ホワイトサイエンス ホワイト プロテクション(コーセー)(SPF27,PA++)」、「エクサージュホワイト ウォータリィタッチプライマー(アルビオン)(SPF20,PA++)」、「マッティファイング モイスチャーローション SW(シーウィード) (ザ・ボディーショップ)(SPF15)」、「オレゾ(Orezo) パーフェトディフェンスUV(ロート製薬)(SPF50+)」、「メンソレータムスキンケアUVモイスチャージェル(ロート製薬)(SPF25,PA++)」、「コパトーン パーフェクトUVカットミルク(エスエスエル ヘルスケア ジャパン)(SPF50)」、「SK-II アドバンスト プロテクト エッセンス UV(マックスファクター)(SPF20,PA++)」、「SK-II サインズ コントロール ベース(マックスファクター)(マックスファクター)(SPF20,PA++)」なども、紫外線吸収剤(メトキシケイヒ酸ヘチルヘキシル)を配合しています。

しかし、同じ紫外線吸収剤でも「◯◯PABA◯◯」や「オキシベンゾンー◯」は、日焼け止めへの配合例は極端に減っています(日本の場合)。オキシベンゾンに至っては、主に、製剤の退色防止目的に配合されている場合が多くなっています(つまり、メイクなどへの配合があります。)

一方、同じ紫外線吸収剤でも「t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン」は未だに健在で、
メンソレータムスキンケアUVモイスチャージェル(ロート製薬)(SPF25,PA++)」、「ビオレ 弱酸UVカット(花王)(SPF50+,PA+++)」、「アネッサ タウンユースサンスクリーンNa(資生堂)(SPF30,PA++)」、「ファシオ スーパーUVスクリーン (ウォータープルーフ) EX(コーセー)(SPF50+,PA+++)」、「コスメデコルテ ザ・ホワイトサイエンス ホワイト プロテクション(コーセー)(SPF27,PA++)」、「マッティファイング モイスチャーローション SW(シーウィード) (ザ・ボディーショップ)(SPF15)」に入っていています。
また、これらの商品は、何れもメトキシケイヒ酸ヘチルヘキシルも配合しています

因に、ベニー用を謳う「ピジョン UVベビーミルク(ピジョン)(SPF22,PA++)or(SPF37,PA+++)」、「ユースキンS UVローション(ユースキン製薬)(SPF20,PA++)」、「UVカットミルク(ハーバー研究所)(SPF25,PA++)」、「サンガード(ファンケル)(SPF30,PA+++)」などは、紫外線吸収剤フリーを謳っていますね。


BHTとBHAのお話

BHTと見て、これが旧表示指定成分であると直ぐに検索できる方は少ないかもしれません。
BHTは、旧名称を「ジブチルヒドロキシトルエン」と言って、これでネット検索を掛けると多くデータがでるでしょう。このBHTには仲間があって、BHAと言います。BHAの旧名称は、「ブチルヒドロキシアニソール」と言って、発がん性はBHTよりも高いようです。
BHT、BHA共に、化粧品以外に食品(油脂の製造以外は禁止)やドックフードにも使用されています。医薬品ではビタミン剤などへの添加もあるようです。

発がん性に関する報告では、国際ガン研究機関では、発がん性の高さを5段階に分けていますが、BHAは、その内、3段階で、発がん性が危惧される位置にあります。
この3段階目と同じランクに「ニトロソジエタノールアミン」があります。ニトロソジエタノールアミンは、TEA(トリエタノールアミン)から反応して生成される可能性がある発がん危惧物質で、わたしがTEA配合の化粧品を推薦しない理由になっている成分です。ですから、ニトロソジエタノールアミンと同じランクに位置されるBHAも当然配合を避けたい物質です。しかし、BHAは、欧州連合、アメリカ環境保護庁、米国毒性プログラム、国産業衛生専門家会議、日本産業衛生学会共に発がん性に関して未記載です。一方、ニトロソジエタノールアミンは、アメリカ環境保護庁でも発がん性が危惧されており、総合的に見て、BHAはトリニトロソアミン程は発がん物質としての着目は低いようです。

余談ですが、BHAは、「正露丸」に含有されていると謳っているサイトもありますが、実際に正露丸に含まれている「グアヤコール」は別名「ハイドロオキシアニソール」であり、BHAは「ハイドロオキシアニソール」にブチル基が付いたモノなので別物です。

話を戻しましょう。食品分野では未だに使用されるBHA。なぜ、天然ビタミンEなどに代用しないのでしょうか?その理由は、BHAと同等効果を期待して天然ビタミンEを食品原料や動物フードに配合した場合、ビタミンE濃度が高くなって、それによる副作用が危惧されるからだそうです。ビタミンEの摂り過ぎは健康を害しますからね。

化粧品分野の話を戻しましょうか。
BHT、BHA共に安定性の良い抗酸化剤として、油剤系に配合されてきました。
しかし、発がん性の危惧がされ始め、消費者からの敬遠の流れが生じ、今では、処方に「後添加」される例は殆どないと思われます。
また、化粧品分野のオイルの抗酸化剤ですが、最近のオイルは、天然ビタミンEなどで抗酸化する場合が多く、BHTやBHAの配合オイルも減っています(と、言うか、最近は見たコトがないです)。(化粧品原料は、食べませんからすんなり移行したようです。)

しかし、この数年、使用が多くなってきている紫外線吸収剤に併用して配合されている場合が多くなってきており、化粧品の表示でも再び多く目に止まるようになりました。その他、美肌を期待して配合されるビタミンA誘導体のパルミチン酸レチノールなど酸化の激しい原料にも、未だに添加剤的に配合されています。しかし、ビタミンA誘導体の場合、商品化する際に、「キャリーオーバー」の法律に則り、表記されない場合も多いようです。

紫外線吸収剤配合の日焼け止めなどでは、ロート、花王、コーセー、ジョンソン・エンド・ジョンソン、エスエスエル ヘルスケア ジャパン(コパトーン)、ちふれ化粧品、資生堂など幅広い企業でBHTの配合がありますね。それは、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルなどの紫外線吸収剤にはBHTなどの抗酸化剤の併用がないと分解しやすいからです。
花王さんに至っては、花王製界面活性剤原料の中に、抗酸化剤として未だにBHTを配合していますから、BHTに関してはあまり気にしていないのかなぁ?まぁ、花王さんは、元々、表示指定成分をそんなに気にしていない傾向があるからなぁ(セタノール件などいい例だぁ)。


化粧品の怖い話は本当?

化粧品のコトで疑問を持っていても、今更聞きにくい話など、ありませんか?
そこで、今回は、その辺の話をしてみましょうか。

Q1:鉱物油が入っている化粧品は肌に悪い?
A1:クレンジング剤やファンデーション、口紅に鉱物油が入っていても、日本製なら問題ありません。

この手の神話をまだ信じている方は多いですね。ネットで検索すると、如何にも怖そうな話が多く引っ掛かります。実際は、どうでしょうか?
この手の話の鉱物油とは具体的には「ミネラルオイル」を指すようですね。その他にも、「マイクロクリスタリンワックス」「セレシン」も鉱物油としている場合もあります。ただ、わたしとしてはセレシンは鉱物油に分類するのには少々抵抗を感じますが・・・。
話を戻しましょう。
具体的にミネラルオイルの話をしますね。
その昔は、ミネラルイオルは工場用の原料であり、不純物を含んでいました。しかし、今は、化粧品用に別途製造・精製された化粧品グレードモノが化粧品や医薬部外品に使用されます。
ミネラルオイルは、構造的に、ワセリンの仲間になります。まぁ、液体のワセリンと思って間違いないでしょうね。
鉱物油は、元々、酸化に強く、天然油のように酸化されて変臭したり変質したりしないタイプが殆どです。ですから、化粧品グレードの純度の高いモノを使用すると非常に安全性の高い原料となります。しかも、べたつきは少ないタイプが多いです。
各家庭にPCの普及もなかった時代、まだ、原付バイクの運転でヘルメットをかぶらなくても法的に問題なかった時代ならまだしも、今の時代、鉱物油は最も安全なオイルの1つです。
ここで、オイルと言ってしまいましたが、鉱物油の殆どは、分類的には炭化水素に属し、ワックスに近い存在になりますね。
ですから結論としては、クレンジング剤やファンデーション、口紅に鉱物油が入っていても、日本製なら問題ありません。

Q2:発がん性物質が化粧品に使われているって本当?
A2:発がん性が危惧される成分があるコトは本当ですが、誤解のない解釈をして頂きたいです。

高濃度で使用したり、長期間食べ続けたりした場合、発がん性が危惧される物質が、化粧品へ配合されているコトは事実です。しかし、そういった原料は配合量の上限や使用していい部位(塗り切りはダメ、洗い流しはOKとか、唇はダメとか・・・)の指定(限定)があります。また、食べるのと塗りのでは現象が異なります。
しかし、そういった発がん性の可能性が本当にある場合、厚生労働省がしっかり動きます。ここ数年の例では、コウジ酸に発がん性の可能性が生じた為に、コウジ酸の使用を一時的に中止する指示がでました。その後、調査が行われ、安全域の配合上限が設けられました。
その他でも、紫外線吸収剤や防腐剤でも毒性の安全濃度がチェックされ配合可能濃度が設けられています。勿論、配合禁止の成分もあります。
生物には元々毒に対しての処理能力があります。勿論、少量でも致死になる成分もあります。
生物として処理できる濃度を考え、それを長期使用するコトを前提に確認した結果、安全域が設けられます。それは、ぎりぎりの濃度ではなく、1/10や1/100、1/1000濃度で設けられます。実際に、平成の時代になり、化粧品を使用するコトによる発がんの報告はありません。
余程、健康食品での被害の方が大きいですね。

Q3:ラウリル硫酸Na配合の合成シャンプーは体に悪いのは本当?
A3:今やラウリル硫酸Na配合のシャンプーなどまず見かけませんね。

ラウリル硫酸Naを最強に悪役にしたモノは、このラウリル硫酸Naの高濃度液をネズミの肌に付けて、長時間放置した場合、脱毛し皮膚剥離が観察されるといったモノです。まぁ、これは極端な例、且つシャンプー材料の評価として間違った試験法であるのはおいといて、ラウリル硫酸Na主剤のシャンプーは、脱脂力が強すぎて、体に悪いのは事実です
しかぁ〜し!安全性の低い商品は売れないだけでなく、会社のイメージダウンになる昨今、未だにラウリル硫酸Naをシャンプーに配合しているトコってまずありません
ラウリル硫酸Naとラウレス硫酸Naは、名前も似ていますが、毒性は全く別ものです。皮脂の多い頭髪の方は、ラウレス硫酸Naを使っても問題ないでしょう
ただ、基礎化粧品がそうであるように、自分の皮脂量の変化(減り具合)によって、より脱脂力の調節されたシャンプーを選ぶコトがいいでしょう。
シャンプーを匂いや泡量で選ぶのではなく、脱脂の具合で選びましょう。と、言っても、頭皮の皮脂の具合は分かりにくいですね。フェイス用の洗顔フォームをマイルドに変えた時期が、シャンプーのタイプも変え時なのです。

Q4:ポジティブリストで、配合条件3%の成分は、3%以上では危険なの?
A4:実はそうでもないのです。お金の関係だったりします(笑)

紫外線吸収剤って結構高額な原料だったりするのです。具体的には、10万円/kgだったりします。この原料は、3%配合するだけで、3000円/kgの値段になります、商品原価を圧迫します。そう、この金額って実際に商品を作るには結構高額なんです。
実際に、売ったとしても、この原料の場合、3%も配合して貰えないでしょう。実際には、0.3〜1%配合ってのが現実でしょうね。
ポジティブリストに載せて、化粧品に採用できるようにするには、安全性試験をいくつもクリアする必要があります。当然、配合%が高いとリスクも上がります。
ポジティブリストに載っている原料は何れも「売り物」です。ですから、実際に売れない%まで安全性試験をして安全性がとれなかったら、大損です!何度も言いますが、ポジティブリストに載っている原料は何れも「売り物」です。ですから、科学的にその原料の安全域を見ている訳ではなくて、「実際に買ってくれる濃度での安全性を見ている」のです
ですから、上限3%でポジティブリストに載ってる原料は、実際には、80%でも安全かもしれませんが、「そんな高い濃度で配合されるコトはない!」ってコトで確認は取られていないの事実です。
しかし、「3%で安全ですが、4%で危険というモノがあるのではないか?」と思われる方も多いでしょうね。そこんトコは科学的です。4%でヤバいモノは、3%でも既にヤバい気配が科学的に分かります。そういった原料が「上限3%で登録」されるコトはありません。


化粧品原料を検証する-4

化粧品原料の危惧に関する説明の多くは「でも、あんまり表示されたのって見たコトないよね」というのが多いコトにお気づきでしょうか?
ここでは、より具体的に、商品を手に取ったら裏面の全成分表示でよく見かける原料をチェックしてみましょう。

では、最近のシャンプーに採用されている界面活性剤を具体的にみていきましょう。

ラウレス硫酸Na
ラウレス硫酸TEA
ラウレスサルコシンTEA
ラウレス-3硫酸アンモニウム

未だに、このタイプのアニオン界面活性剤は日本でも常用されています。
どんな水質でもしっかり泡立ちますし、すすぎも「泡切れ感」を出せますから、日本人の好みに合っているのでしょう。しかし、それは、「使用感」であって脱脂力ではどうでしょうかね?欧米人並の食生活に変わったと言えど、皮脂分泌量はそんなに多くはないですし、自称敏感肌の方が50%以上存在する日本で、この手の脱脂力は強う過ぎるのではないか?と思ってしまいます。

さて、「ラウレス」とはラウリン酸にポリオキシエチレンが付いたた形です。ラウリル硫酸タイプよりも遥かにマイルドになっていますが、しっかりした脱脂力あり、旧表示指定成分に属するモノが多いです。
次に、お尻の塩のタイプですが、Na塩かTEA塩かで、髪に対してはすすぎ感や仕上がり感が違ってきます。サロン用ではその仕上がり感からTEAタイプが多用されます。しかし、TEAは、反応して発がん性物質のニトロソジエタノールアミンが発生する可能性があり、一時、化粧品業界から「脱TEA」が検討されましたが、その仕上がり具合を「脱TEA」で再現できず、再びTEA塩が使用されています。TEAはそのままでは、発がん性はないのですが、亜硝酸塩や一部の防腐剤(BNPD)が配合された場合でもニトロソジエタノールアミンが生じる可能性があるそうです。また、マウスの実験ですが、TEAを経口摂取し続けると発がんがおこるようです。
因に、ラウレスサルコシンTEAの場合、分類的には「アミノ酸系界面活性剤」になるのですが、その脱脂力の強うさからして、マイルドとは言い難く、この分類に分けるコトが現実的と思われました。
TEA塩を避けるスタイルとして現れたのが、ラウレス-3硫酸アンモニウムをはじめとするアンモニウム塩タイプです。P&Gさんがパンテーンのシリーズで採用されていますね。

ラウリル硫酸アンモニウム
脱脂力が強く、今では日本のシャンプーでは配合されるコトが殆どなくなったラウリル硫酸Naのアンモニウム塩タイプです。P&Gさんがパンテーンシリーズで採用しているのが有名でしょうかね。
塩のタイプで髪の仕上がり感が違ってきましから、ラウリル硫酸Naよりもしっとりするのでしょうが・・・、その使用感とは裏腹に結構脱脂すると思われるアニオン界面活性剤です。

スルホコハク酸ラウレス2Na
ロートさんやユニリーバさん、牛乳石鹸さんで採用が有名ですが、資生堂さんや花王さん、カネボウさんなど大手ではそんなに使われていないようです。
ラウレス硫酸塩タイプの刺激の強うさ、脱脂力の強うさを抑える為に、「硫酸」の部分を「スルホコハク酸」に変えたタイプなのですが、浸透力などはしっかりあってマイルドと言っても「ラウレス硫酸Naに比べてマイルド」であって、浸透性、脱脂力共にありますし、選択洗浄性などがある訳ではありません。それでも、ラウレス硫酸Naタイプに比べると、生分解性などもあって、環境へはマイルドと言えるのでしょう。

アルキル(C11,13,15)リン酸K
花王さんが、ビオレシリーズで使用されているのが有名です。しかし、わたしも古い人間なのか「リン酸系」と言えば水質汚染のイメージが強くその当たりのデータはどうなんているのか知りたい感じがしますね。
リン酸などの構造部分がありますが、基本的概念は石鹸と同じです。

ココイルメチルタウリンNa
ラウロイルメチルタウリンNa
ココイルメチルタウリンタウリンNa

アミノ酸系界面活性剤の中でも「タウリン系」に属します。
泡立ちはきめ細かく、脱脂力も適度にあるので、シャンプーへの配合よりも洗顔フォームへの配合が有名ですね。シャンプーに配合した場合、泡のキメが細かくなって泡質改善に繋がります。
資生堂さんでは新たに「ココイルメチルタウリンタウリンNa」と言った、一見「誤字?」と思われる原料が採用されています。定義としては、「ヤシ油脂肪酸メチルタウリンのタウリンナトリウム塩」だそうで、Na塩ならぬタウリン塩なのですね。
泡切れも良くて、ココイルグルタミン酸タイプに比べてすすぎ時にぬめり感がないです。しかし、突っ張り感や髪のきしみ感もない。ここまで言うといいコトずくめですが、泡のキメは細かいですがボリュームがでないので、「主剤」としてはキツイかもしれません。

ココアンホ酢酸Na
ラウロアンホ酢酸Na

ヘアシャンプー〜ボディーシャンプーまで幅広く使用されます。ラウレス硫酸塩タイプやスルホコハク酸◯◯塩に対抗して、もっとマイルドなモノ作りをしたい際に採用されます。
ココアンホ酢酸Naは、旧名称を「2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン」と言われました。「ココアンホ酢酸Na」と書くと「アニオン界面活性剤」のイメージになりますが、実際のトコは、「両性界面活性剤」ですので、コンディショニング効果を持っています。
ラウロアンホ酢酸Naに至っても両性界面活性剤でコンディショニング効果を有するのですが、旧名称を「N−ラウロイル−N’−カルボキシメチル−N’−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム」以外に「ウンデシルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム」と言われる場合もあります。医薬部外品では、この「ウンデシレ・・・」の名で呼ばれます。
適度に生分解性もあり、ラウレス硫酸塩タイプやスルホコハク酸タイプに比べて刺激が少なく脱脂力も低いので、「マイルドタイプ」と言われます。それは、この原料が両性界面活性剤であるからであり、根本的にラウレス硫酸塩タイプやスルホコハク酸タイプとは別物だからです。そうですね、ベビー用シャンプーとかで有名な「コカミドプロピルベタイン」のお仲間のイメージでOKだと思います。

パーム核脂肪酸アミドプロピルベタイン
コカミドプロピルベタイン

代表的な両性界面活性剤ですね。俗に言う「ベタインタイプ」です。
ベビー用シャンプーの主剤に起用されるのは、眼刺激が少ないからです。
また、リンスインシャンプーの主剤に採用されるのは、コンディショニング効果が高いからです。
通常のラウレス硫酸塩タイプのシャンプーやアミノ酸系シャンプーへの配合は、泡質にコク感を出してくれるからですが、その他にも、「アニオン界面活性剤の刺激を緩和する」作用を期待しての配合がされます。
基本的に植物由来の原料から出来ていて、生分解性も高い為にマイルドと言われますが、すすぎ時に結構残りますので、すすぎ不足の場合、痒みを難じるコトがあります。特に、ラウレス硫酸塩タイプのシャンプーのすすぎの早さに慣れてしまっている方に「すすぎ不足」による痒み症状が出やすいので、意識的にしっかりすすぐのがいいでしょう。

コカミドMEA
コカミドDEA
ラウリルグルコシド
デシルグルコシド

代表的なノニオン界面活性剤です。上記3つ(コカミドMEA、コカミドDEA、ラウリルグルコシド)はあまり泡立ちませんが、デシルグルコシドは泡も立ちますから、デシルグルコシドを主剤にした変わり種のシャンプーに世にはあります。
この手のノニオン界面活性剤は、アニオン界面活性剤や両性界面活性剤よりも刺激が少ないのですが、脱脂力、泡立ち共に低く、シャンプーの主剤には向きません。基本的には、アニオン界面活性剤の泡立ちにコクを出したり、シャンプーそのものの粘度を出したりしますが、最も特徴的なコトは、アニオン界面活性剤の刺激緩和でしょう。特に、デシルグルコシドやラウリルグルコシドはアニオン界面活性剤の刺激緩和として直ぐており、頭皮に刺激を感じる方や、サロンで毎日シャンプーするコトを仕事にされている方は選んでみてもいいでしょう。

カプリン酸グリセリル
これもノニオン界面活性剤です。ノニオン界面活性剤は、イオン化しないので刺激が少ないと言われますが、必ずしもそうとは思いません。このカプリン酸グリセリルは、防腐効果もありますが、刺激を感じる方もいます。刺激を感じる理由は、カプリン酸グリセリルそのものではなく、そこに不純物として含まれるであろうウンデシレン酸に影響かもしれません。
シャンプーや洗顔フォームでノンパラベンの対策として起用される場合があり、逆に言えば、そういった意識のある処方でのみ採用されますから、「カプリン酸グリセリル」が配合されている商品は処方担当者の拘りがある商品と言えるでしょう。(ちょっと偏見かも 汗)


化粧品原料を検証する-5
タール色素について
<

今回はタール色素について紹介しましょうか。
タール色素はポジティブリストへ記載されており、配合条件や配合濃度の指定もあります。旧表示指定成分であるコトも有名でしょうか。
粘膜に使用できるタール色素とできないタール色素があります。この粘膜とは具体的には口紅への配合が可能か否かというコトになります。例えば、赤219黄204は、爪や髪にしか使用できません。

<赤204、205,206あまり使用されない・・しかし・・>
赤204は、タール色素に分類されるモノアゾ系の顔料です。日本に於いて化粧品への配合は認められていますが食品への添加は禁じられています。しかし、アメリカでは化粧品への配合が禁止されています
「じゃぁ、赤204はチェックが必要だね!」
と、思うのは消費者の皆さんだけでなく化粧品の処方担当者も同じなのです。現在、赤204を配合した化粧品は殆どありません。まず、誰でも知ってる日本のメーカーでは配合していないでしょう。つまり、簡単に手に出来る化粧品への配合はまずありません。しかし、それでも、マイナーメーカーはその知識の低さからか未だに口紅へ配合しているトコもありますから、有名でないメーカーの口紅の場合、チェックが必要かもしれませんね。

逆に、赤3は、食品添加物としても許可されていますが、化粧品への配合例は殆ど見かけません。
この赤3は、タール色素に分類されるキサンチン系の酸性染料です。直接しようしたコトはないのですが、おそらく退色が激しく化粧品向けでないのかもしれませんね。
因に、HC赤3とは別物になります。HC赤3は、頭髪専用に使用されるタイプです。

では、具体的に化粧品への配合例の多いタール色素を例にあげていきましょうか。
特に赤を中心にあげていきますが、深い意味はないです。タール色素はあまりに多いので、「例」として「」と「最近のヘアケアで使用されたタール色素」をあげてみますね。

赤104(1) 口紅系への配合が殆ど
カネボウさんの口紅(テスティモ)や資生堂のマジョリカマジョリマなどに採用されていますね。
タール色素に分類されるキサンチン系の酸性染料です。食品添加物としても許可されています。
実際に、商品への配合も可で、化粧品へ多用される「赤」はこの赤104だけかもしれません。

以下は、食品への配合ができないタイプです。

赤201、202 口紅系への配合が殆ど(一部、チークやネイルカラーでも使用されています)
この2種が化粧品の「赤」を代表するくらい多くの商品、多くのメーカーで採用があります。
タール色素に分類されるモノアゾ系の酸性染料です。化粧品への配合は認められていますが食品への添加は禁じられています。特に赤202配合の口紅でのトラブルが多いとされる報告がありますが、赤202は口紅系では最も多く使用されているタール系色素なので、本当にトラブルの原因が赤202なのかは慎重な検討が必要かと思います。ただ、食品への添加が許可されていない原料を、必ず食べてしまう口紅へ配合するのは、どうかなぁ?と思います。

赤218 口紅系への配合が殆ど
資生堂さんのマキアージュやコーセーさんなどでの採用があります。
タール色素に分類されるフルオラン系の油溶性染料です。化粧品への配合は認められていますが食品への添加は禁じられています。

赤220 ネイルカラー口紅系への配合が殆ど
コーセーさんのコスメデコルテやルミナス、資生堂さんではマジョリカマジョリカなどで採用があります。
タール色素に分類されるモノアゾ系の顔料です。化粧品への配合は認められていますが食品への添加は禁じられています。

赤223 口紅系への配合が殆ど
カネボウさんのテスティモ、資生堂さんのピエヌやマキアージュ、その他コーセーさんでも採用があります。
タール色素に分類されるフルオラン系の油溶性染料です。化粧品への配合は認められていますが食品への添加は禁じられています。

赤225 ネイルカラー中心ですが、一部リップグロスやマッサージオイル(ランコム)への配合例もあります。あまりメジャーではないですね。
タール色素に分類されるジアゾ系の油溶性染料です。化粧品への配合は認められていますが食品への添加は禁じられています。一部のサイトでは、この赤225を配合した化粧品で理美容関係でのトラブルが多いとされていますが、実際に、シャンプーやリンスへの配合例は確認できていません。主にネイル系中心です。ただ、他の赤201や202、218が口紅以外で使用例が殆どないコトや、赤220がネイルカラー以外での使用例が殆どないコトに比べると、マッサイージオイルなどへの配合例もあるので、理美容用品への配合が全くないとも言えませんが・・・。見たコトないです。
まぁ、確かにネットでは、「洗い流さないトリートメント」や「ピーリング石ケン」、「クレンジングオイル」への採用は掛かりますが、何れもメジャーではなく、理美容が使用しているとは思われません。

赤226 チーク、アイシャドウ系、化粧下地、リップグロス、ネイルカラー、口紅など他種にわたって使用されています。
資生堂さんやオリビスさん、花王さん、カネボウさんでアイシャドウへの採用や、コーセーさんのコスメデコルテの他、アユーラさんやマックスファクタさんでも採用がります。
タール色素に分類されるインジゴイド系の建染染料です。化粧品への配合は認められていますが食品への添加は禁じられています。

赤227 ヘアケア、ボディケア、美容液、フレグランス、石ケン、アイブロウなど他種にわたって使用されています。
資生堂のTUBAKIやアルビオンのイグニスの他、マンダムさんやコーセーさんなど多くのメーカーでの他種にわたる採用があります。
タール色素に分類されるモノアゾ系の酸性染料です。化粧品への配合は認められていますが食品への添加は禁じられています。

赤228 口紅系への配合が殆ど
ジバンシーさんでの採用が有名かな。意外に、資生堂さんや日本のメジャーなメーカーさんは採用がないですね。
タール色素に分類されるモノアゾ系の顔料です。化粧品への配合は認められていますが食品への添加は禁じられています。

赤230(1) 口紅系への配合が殆ど
ジバンシーさんでの採用が有名かな。意外に、資生堂さんや日本のメジャーなメーカーさんは採用がないですね。
タール色素に分類されるキサンチン系の酸性染料です。化粧品への配合は認められていますが食品への添加は禁じられています。

赤504 化粧水、フレグランス、石ケン、ボディーケアなど他種にわたって使用されています。
資生堂さんのアスプリール、花王さんのビオレ、シャネルのクリームへの採用が有名でしょうかね。 有名どころではビオレなどへの配合もありますね。シャネルのクリームにも採用があります。
タール色素に分類されるアゾ系の酸性染料です。化粧品への配合は認められていますが食品への添加は禁じられています。

ココからは、最近のヘアケアへの配合例のある色素です。
ヘアケアに使用される色素はなぜだか食品への配合も可能なタイプが多いですね。

黄4 ヘアケア (実際は、主に口紅、ネイル系への採用が多いです)
資生堂さんのTUBAKI、P&Gさんのハーバルエッセンシャル、アユーラのネイルやアイシャドウ、コーセーさんのコスメデコルテ、カネボウさんのテスティモなどの採用があります。
タール色素に分類されるビラゾール系の酸性染料です。食品添加物としても許可されています。 黄色の色素の中では一番よく使用されていると思います。
因にHC黄4は、染毛料専用ですので、黄4とは別物です。

黄5 ヘアケア (実際は、主に口紅への採用が多いです)
資生堂さんのTUBAKIやマシェリ、花王さんのエッセンシャル、カネボウさんやマックスファクターさんでは口紅への採用が有名です。
タール色素に分類されるモノアゾ系の酸性染料です。食品添加物としても許可されています。 因にHC黄5は、染毛料専用ですので、黄5とは別物です。

赤106 ヘアケア系が多いですね。変わり種では入浴料への配合もあります。
花王さんのセグレタ、資生堂さんのマシェリなどが有名でしょうか。
タール色素に分類されるキサンチン系の酸性染料です。食品添加物としても許可されています。


ジェノミ型界面活性剤

ここ数年でジェノミ型界面活性剤の紹介を受けるようになりました。
ジェノミ型界面活性剤とは、聞き慣れない形ですね。
簡単に言いますと、「 H 」見たいな形をしていて、腕を2本持っている界面活性剤です。乳化力や可溶化力が強いコトが特徴です。
具体的には、旭化成さんのペリセア(商品名)などが有名で、ヘアケアのみならず、スキンケアの部門でも「ペリセア」の名で謳われているコトがあります。ペリセアは、化粧品の全成分表示では「ジラウロイルグルタミン酸リシンNa」となっていて、アミノ酸系界面活性剤に属します。
ペリセアは髪への浸透が強く、髪の強化に繋がるとしています。
また、乳化に用いると今までよりも細かい粒子径を作るコトが可能なので、少量の添加で、使用感を改善するコトもできます。

二本鎖を活用した乳化は、レシチンなどが有名ですが、レシチンはそれほど強い界面活性剤の力はなく、処方組も技術とテクニックと機器が必要です。
しかし、この二本鎖が界面活性剤型になっているジェノミ型界面活性剤は非常に魅力的です。

しかし、やはりスキンケアなどへの塗り切りは如何なモノかと思います。
「乳化力が強い=肌バリアを壊す」と言う式には「分子力が大きければ大丈夫」「分子量が小さいと危険」という条件が付きます。ジラウロイルグルタミン酸リシンNaなどは髪にも浸透するくらい分子量が小さい訳ですから、肌バリアのバランスを崩す可能性は危惧せざるえません。
同じ様に強い乳化力を有するPEG-◯◯水添ヒマシ油(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10-30))コポリマーなどは、分子量が大きく肌に浸透できませんから、塗り切りのクリームなどへの配合があっても安心度が高いです。ただ、(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10-30))コポリマーなどは使用時に中和を必要とするなど、面倒なのですが・・・。

やはり、処方担当者としては、商品の使用感に加えて使用される方の安全性も勉強して、原料屋さんのコメントだけでなく、自分の知識も必要になってきますね。


赤くなるのは刺激か血行促進か?

昔から、PCAというアミノ酸原料があります。PCAと称しますと、石油合成のモノのようにもとられてしまいますが、実は、グルタミン酸というアミノ酸を環状・・・つまり丸くリング状にした形のモノで、肌バリア成分である天然保湿成分(NMF)の12%をこのPCAが占めます(因に、PCA以外のアミノ酸は42%あります。)。

このPCAは、酸性です。しかし、PCAは肌の上ではNa塩タイプなどになっていて、実際にはpH5〜6程度になっています。このPCA-Naはに高い保湿を有し、その効果はグリセリンやソルビトールよりも高いと言われ、肌の柔軟性の回復にも効果があります。

一見良好なPCAですが、昔からちょっと危惧される問題点がありました。それは、PCAを塗布すると、やがてその部分が赤くなると言うのです。ただし、2時間以内に元に戻ります

一般的に「赤くなる=炎症」ととらわれがちです。しかし、「赤くなる=血行促進」という場合もあります。では、「炎症」と「血行促進」では何が違うのでしょうか?

そこんトコを味の素さんがいい報文を出しています。「日本化粧品技術者会誌 2003.Vol.37 No.4」に「天然保湿成分であるL-ピロリドンカルボン酸(L-PCA)のNO産生調節による血行促進効果」という報文になります。

これによりますと、血行促進た炎症など皮膚の血流の調節や血管の拡張には「一酸化窒素(NO)」が関与しているそうです。このNOは、生体内では、「cNOS」と言う酵素と「iNOS」という酵素から作られます。通常の「血行促進」では、この「cNOS」という酵素だけが働きます。ですから、肌が赤くなっても直ぐに治まります。しかし、「炎症」の場合、長期間血流を促進する必要がありますので、「iNOS」の酵素が関わってきます。
つまり、「cNOSだけ働く=血行促進」、「iNOSが働く=炎症」と判断できます。
PCAを塗って肌が赤くなる現象は2時間続きますが、cNOSしか働いていませんでしたので、PCAの効果は「血行促進」という結果になりました。

また、アミノ酸の多くは、L体D体という構造があります。L体とは天然界に通常に存在するタイプです。D体とは、天然界にまずないタイプで、合成した場合に生まれます。
今回のPCAによる肌の血行促進効果は、L体のPCAでのみ発揮され、D体のPCAでは血行促進はなかったそうです。
やはり、「天然由来」というモノは「安全」だけではく、「効果」も期待出来るのかもしれませんね。


活性剤フリーの乳液を作ってみよう!-1

このサイトでは「角谷式乳液」というモノが何度も話題になっています。
「角谷式乳液」とは、「パラベンフリー、フェノキシエタノールフリー」で、特に「活性剤フリー」を特徴とした乳液です。作り方は、
化粧品屋の独り言 → vol.6 → 手作りコスメで、乳液を作ってみましょう♪
に載っています。

今回は、そのニューバージョンで、「エタノールフリー」バージョンをご紹介しましょう。

そもそも、手作りコスメとは、自分で楽しく化粧品を理解するにはいいモノです。しかし、防腐の面などが問題になりますので、本来はお薦めできません。ですから「まぁ、参考に!」ってぐらいに思って下さいね。

ではでは、・・・

折角、手作りで乳液を作るなら、肌に悪いモノは使いたくないですよね。ですから、まず始めに「乳化剤」を使わないでやりましょう!
よく、手作りコスメのクリームや乳液にはミツロウが採用されますが、ミツロウは、精製度によっては肌トラブルを生じますので、今回は、ミツロウも使いません。

防腐の面を考慮して、「パラベンタイプ」と「パラベンフリーの」のタイプを作ってみました。今回は「パラベンタイプ」の紹介です。

<1>パラベン配合乳液(エタノールフリー)

本質:
敏感肌の方の多くは、実際にはエタノールフェノキシエタノールに刺激を感じる方が多いです。そこで、今回は、あえてメチルパラベンを使用しました。メチルパラベンは、0.25%以上配合すると敏感肌の方に刺激を感じさせますので、濃度を最低限にしています。作った乳液の保存は、冷蔵庫なら2ヶ月。室温なら1ヶ月で使用していまうのが前提です。ただし、それは防腐の面であり、オイルの酸化は別です。また、「冷蔵庫なら2ヶ月。室温なら1ヶ月」とカキコしましたが、最終的には「自己判断」です。使用条件などで、防腐や酸化などは変わりますで、「保証」を記すモノではありません(念のために・・・汗)(最近はネットもややこしいですからね 苦笑)

処方:
1%ヒアルロン酸Na水溶液 30g
キサンタンガム 0.5〜1.0g
グリセリン 3〜10g
BG 5g
メチルパラベン 0.1g
オリーブ油 3~10g
水 トータルで100gになるようにする

製造方法:
メチルパラベンBGの中に入れて撹拌し溶解します。溶けにくい場合は、軽く電子レンジで暖めてみて下さい(注意:15秒以上暖めないコト!BGは暖め過ぎると白煙を生じます)。
次に、(BG+メチルパラベン)にを加えます。
一方、キサンタンガムグリセリンで練っておいて、(BG+メチルパラベン+水)の相に放り込み、素早く撹拌します。そして、電子レンジで50℃くらいに加温し、十分に撹拌します(50℃とは、コップなら手で持てない程度の温度を指します)。
次に、ヒアルロン酸Na水溶液を添加し、撹拌しながら冷却します。
室温まで下がったら、オリーブ油を添加して、撹拌すると乳液の出来上がりです。

注意事項:
原料は、何れもネットなどで購入可能ですね。ただし、グレードは「化粧品グレード」のモノをご使用下さい。
また、1%ヒアルロン酸Na水溶液とは、「ヒアルロン酸原液」と謳っている液体の商品を使ってOKです。本来、ヒアルロン酸100%なら、白色の粉です。出来たいモノは、1%分ヒアルロン酸Naを溶かした水溶液です)。

コツ:
キサンタンガムは入手したモノによって粘度が違いますから、配合量はご検討下さい。
この処方の乳化は、このキサンタンガムの量をケチるとオイルの分離が生じます。しかし、沢山入れ過ぎると、塗った後、肌に「垢状」のモノが生じます。その「垢状のモノ」は多すぎたキサンタンガムです。
べたつきは、グリセリンで調節するのがいいでしょう。
どうしてもオイルの分離がある場合は、やはりオイルの量を減らすしかありません。また、今回はオリーブ油を紹介しましたが、クパス(テオブロマグランディフリラム種子脂)でも、他のオイルでもOKです。ただし、臭いのあるオイルや酸化の激しいオイルは、ニキビの元になりますので、ご注意下さい。
また、水溶性の添加物や液状の原料を添加したい場合、オリーブ油と一緒に添加してみて下さいね。

駆け出し処方担当さんへの参考:
メチルパラベンは、本来、0.3%まで水に溶けます。しかし、実際には、70℃程度まで加温した水でないと溶かし込みが困難です。しかし、BGにはメチルパラベンは室温で溶解しますので、先にBGにメチルパラベンを溶解してから水に放り込むと分散性があがります。
また、本来、オイルは水と接すると酸化が促進されます。それは、水と一緒の状態の方が酸化が促進されるからです。ですから、乳液やクリームなどオイルを水系に配合する場合、オイルに「天然ビタミンE」を加えるコトがコツです。ここで、あえてトコフェロールと表記しなかったのは、単一種のトコフェロールよりも複数種のトコフェロール混合体の方が抗酸化力に優れるからであり、その1例が「天然ビタミンE」です。
更に、キサンタンガムは粉体ですが、よくエタノールに分散させてから配合しますよね。それは、水へ投入時にママコ(ダマ)になるコトを避けるだけでなく、殺菌を目的ともします。キサンタンガムに限らず、粉体原料は「カビの胞子」などの混入があります。また、キサンタンガムの場合、5%以上配合する場合、必ず殺菌行程を加えるコトをお薦めします。ですから、今回もキサンタンガム投入時に50℃での加温をカキコしているのは、キサンタンガムの溶解促進だけでなく、殺菌も目的としています。
それから、ヒアルロン酸投入に関しては、今回は「粗く」しています。と、言うのは、本来、ヒアルロン酸Naは熱に弱く、現物保存もキューピーさんなどは「-20℃」を推薦しています。しかし、現実問題として、一般の方や工場で製造する場合、加温によるヒアルロン酸Naの幾分かの分解よりも、落下菌などのコンタミ(混入)の方が危惧されますので、あえて、50℃での投入にしています。

まぁ、通常の処方担当者なら知ってるコトをちょっと偉そうにカキコしてみました(汗)しかし、上記のような簡単な処方でも実が結構ノウハウが詰まっているモノなのです。

活性剤フリーの乳液を作ってみよう!-2

前回に引き続き、手作りコスメ処方をやってみましょう。今回はパラベンフリーの処方です。

<2>パラベン配合乳液(パラベンフリー)
処方:
1%ヒアルロン酸Na水溶液 30g
キサンタンガム 0.5〜1.0g
グリセリン 3〜10g
BG 5g
エタノール 11g
オリーブ油 3~10g
水 トータルで100gになるようにする

<3>パラベン配合乳液(パラベンフリー)
処方:
1%ヒアルロン酸Na水溶液 30g
キサンタンガム 0.5〜1.0g
グリセリン 3〜10g
BG 15g
オリーブ油 3~10g
水 トータルで100gになるようにする

<4>パラベン配合乳液(パラベンフリー)
処方:
1%ヒアルロン酸Na水溶液 30g
キサンタンガム 0.5〜1.0g
グリセリン 3〜10g
BG 5g
SYMDIOL68 0.5〜2%(1,2ヘキサンジオール+カプリリルグリコール
オリーブ油 3~10g
水 トータルで100gになるようにする

<5>パラベン配合乳液(パラベンフリー)
処方:
1%ヒアルロン酸Na水溶液 30g
キサンタンガム 0.5〜1.0g
グリセリン 3〜10g
BG 5g
グレープフルーツ種子エキス 0.1〜1.0%
オリーブ油 3~10g
水 トータルで100gになるようにする

2番は、エタノールでの防腐パターンです。
3番は、BGでの防腐パターン。
4番は、今流行のジオール系防腐パターンです。
5番は、手作りコスメでは定番のグレープフルーツ種子エキスの防腐パターンですかね。

防腐にエタノールを使うのは昔からの定石です。しかし、敏感肌の方などはエタノールが5%でも入っていたら刺激を感じますから、この方法はお薦めできません。しかし、通常の処方で、化粧水などに5%前後のエタノールを配合する場合があります。それは、エタノールを少量配合するコトで、水の表面張力を避けられるのです。この「水の表面張力を下げる」と言うのは、体感からすると、肌の上で化粧水がはじくのを防ぐとか、肌への化粧水の馴染みを上げると、言った作用があります。ですから、殆どの化粧水で数%のエタノールが配合されています。
エタノール以外で、水の表面張力を下げる成分があるのか?と、なると、あります、あります!界面活性剤がソレに当たります。ですから、「水系」だけの化粧水と違って、「油系」も含まれる美容液の場合、エタノールフリーのタイプも多いのです。

次に、3番のBGですが、実際には20%近くまで配合しても、保湿の持続感はそんなにありません。ただ、塗布した瞬間のベタベタ感は、10%を超えるとキツイと思われる方も多いでしょう。
また、グリセリンと違い、BGは肌の表面に留まるにすぎず、根本的な保湿をしませんから、乾燥肌の方が使っても、「むむ?あんまり保湿されてない?」と、思うかもしれません。

4番目のジオール系の防腐ですが、最近は手作りコスメでも流行でしょうかね。ネットでも、1,2ヘキサンジオールとカプリリルグリコールの混合原料であるSYMDIOL68などが一般の方でも入手できるようです。ジオール系は、パラベンやフェノキシエタノールよりも刺激を感じる方は少ないですが、万人にOKという訳ではありません。また、独特の臭いもありますから、好き嫌いが生じます。
また、プロの世界の話になりますが、ジオール系はマンダムさんの持つ配合特許が多く、実際には1,2ヘキサンジオールとカプリリルグリコールの混合原料は商品としての配合は難しいのです。手作りコスメなど非販売だから出来る配合でしょうね。

5番目は、グレープフルーツ種子エキスでの防腐です。手作りコスメでは昔からの定番ですが、実際にはヒアルロン酸Naとの相性が悪く、この紹介した処方系では低濃度配合の場合、きちんと防腐できているか不明です。ただ、ジオール系に比べて(化粧品グレードを使用した場合)臭いも色もないので、使用はしやすいです。ただ、化粧品原料としては、タブー原料の1つです。その理由は、 「化粧品屋の独り言 → vol.3 → 化粧水の内臓-防腐剤編」、「化粧品屋の独り言 → vol.16 → 化粧品タブー原料−2」、「グレープフルーツ種子エキスと規格」などを参考にしてみて下さい。

何れの防腐も一長一短あります。最終的には、臭いや刺激など自分の肌に合うか?がポイントです。2番のエタノールの防腐など、見るからに刺激がありそうで懸念される方も多いでしょうが、実際はクール感ととれる方も多いです。

そうそう作り方ですが、先の話の<1>と基本は同じです。
「エタノール」や「BG」、「グレープフルーツ種子エキス」ははじめに水に溶かし込んでおくと楽です。若しくは、キサンタンガム+水でできたゲルに少量ずつじっくり加えるもの1つの方法でしょう。SYMDIOL68は、50℃に加温した状態の時に放り込むのが一番いいでしょうね。


ラノリンについて

ラノリンという原料を皆さんご存知でしょう。羊の毛油由来の成分です。
本当に昔は、今のワセリンのような使われ方をしてきました。
しかし、「ラノリンはアレルゲンである」という話が上がり、今では見事に旧表示指定成分になっています。具体的には、「ラノリン」、「液状ラノリン」、「還元ラノリン」、「硬質ラノリン」、「ラノリンアルコール」、「水素添加ラノリンアルコール」、「ラノリン脂肪酸イソプロピル」、「ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール」などが表示指定成分として上がりますが、今の表記では、「ラノリン→ラノリン」、「液状ラノリン→液状ラノリン」、「還元ラノリン→水添ラノリン」、「硬質ラノリン→ラノリンロウ」、「ラノリンアルコール→ラノリンアルコール」、「水素添加ラノリンアルコール→水添ラノリンアルコール」、「ラノリン脂肪酸イソプロピル→ラノリン脂肪酸イソプロピル」、「ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール数→ラノリン脂肪酸PEG-数」などになっています。

でも、ラノリンって本当にアレルゲンなのでしょうか?

まず、ラノリン=羊というコトで、狂牛病ならぬスクレイピーを危惧される方もいます。スクレイピーとは風土病の一種で、狂牛病の羊版です。羊の餌に羊の肉片を加えると発育がよくなるコトから、飼料に加えられていたのですが、その飼料に羊の神経や脳みそも混じっていて、それが原因とされています。スクレイピーは、狂牛病よりも歴史は古く、古い記録からは1730年頃にはイギリスのイングランド東部にすでに発生していたようです。また、羊の毛油由来のラノリンを媒介にヒトに伝播するコトはないのが分かっています。まぁ、ラノリンを作る(精製する)際に、酸処理やアルカリ処理、熱処理をします。例えば、その行程の酸処理によって、スクレイピーの感染性は10の8乗分の1にまで下がるコトが分かっています。
日本の場合、吸着精製ラノリンといって、更にカラム処理をされた高品質なラノリンもあります。

そもそも、何で、ラノリンがアレルゲンと言われるようになったのでしょうか?

元々は、1976年にEECの化粧品に関する方針によって、アレルゲン扱いになりました。しかし、その後、様々なデータを元にラノリンをアレルゲンとするコトはおかしい!と主張があり、6年後の1982年にラノリンをアレルゲンとする法律は撤回されています。

1976年のEECが下したラノリンのアレルゲン説の根拠は、1936年に2358人の患者を被験者とした試験で、1名だけアレルギー反応があったコトに基づきます。また、1953年には、1048名の接触アレルギーの疑いのある被験者の12名(1%)の発症率でラノリンに感作が確認されたという報告も起因します。
しかし、これらのアレルギー反応の原因は、ラノリンに含まれる遊離ウールアルコールウールワックスアルコールが原因であったコトが後に分かります。実際に、ラノリン中のウールワックスアルコールの濃度を下げると、アレルギー反応はでなくなります。

こういった、精製の悪さが原因でトラブルが生じ、その結果、アレルゲン扱いされてしまう化粧品原料は多くありました。ミネラルオイルなどもその口です。まぁ、ラノリンの場合、何を精製すればアレルギー性が下がるか分かったって感じでしょうか。ラノリンもそうですが、天然物の殆どは混合物であり、何を精製するかで、アレルギーも変わりますが、効果や使用感も変わりますからね。

旧表示指定成分は、案外、根拠を探ると、「それ程、危惧すべきではない」モノも多くあるようです。逆に、表示指定成分でない!という理由だけで、安全とは言えないってコトでもありますね。


万能ではないイオン導入器

イオン導入器というモノ自体は既に周知になっているのでしょう。また、実際に、その機器によって効果が異なるコトも体験的、想像的に感じられると思います。

例えば、資生堂マテリアルサイエンス研究センターの調べによりますと、市販されている6種類のイオン導入器を調べたところ、皮膚に流れる電流は1.3mA〜0.03mAまでの差があったそうです。その6個の機器での話になりますが、やはり、電池式よりもACアダプターを使うタイプの方が通電は高いようです。

では、実際に、どんなモノがどのくらい肌に入るのでしょうか?
以前に、「化粧品屋の独り言 → vol.2 → イオン導入によるビタミンCの浸透性評価」でも株式会社日本天然物研究所発表のビタミンCの肌へイオン導入を紹介していますが、今回は、資生堂マテリアルサイエンス研究センターさんのをご紹介します。

使った成分は、非イオン性のアルブチン、アニオン性のアスコルビルリン酸Na、アミノ酸の一種で両性イオンのトラネキサム酸の3つです。

今回の試験は、ヘアレスマウスなどから採取したラボスキンを用いて、0.28mA/cm2の電気を流すといった、実験でのデータです。

例えば、アニオン性のアスコルビルリン酸Naの場合、マイナスの電極側からの皮膚浸透が高いコトを示しています。しかし、プラス極側からは浸透はありません。



一方、イオン化しないアルブチンは、ビタミンC誘導体に比べて殆ど入りません。



トラネキサム酸の場合は、pHによって、プラスにもマイナスにも電荷が変わります。そこで、30分後の累積透過量をpH別で見ています。累積透過量のグラフをビタミンC誘導体に合せると、アルブチンよりはましですが、浸透は低いコトが分かります。



この縮尺では分かりにくいので、縦軸を低くしてみますと、トラネキサム酸は、弱酸瀬(pH5)に処方された場合は、プラス極からの浸透が高く、一番入りやすい条件になります。しかし、水に近い中性に処方すると最もイオン導入では入りにくくなり、アルカリ側では、マイナス極側から入りますが、弱酸瀬処方時よりは入りません。



このように、イオン導入は万能ではなく、また、その商品の処方の組み方1つで、イオン導入向けの処方になるか、イオン導入には向かない処方になるかなど変わってしまうのです。


ペプチド原料の名称変更

ここ最近、EGFやFGFなどのペプチド原料が流行っています。他にも、パルミトイルペンタペプチド−◯とかパルミトイルテトラペプチド−◯とかもあります。しかし、この手のペプチドは、実はよく定義できていないらしく、その名前が、INCI名の命名元のCTFAの指示で変更されています。
変更理由は「技術的な正確性を期すため」とし、日本化粧品工業会にも連絡が入っています。ただ、早急な変更の指示ではないようで、「製品の表示切り替え」に伴って改訂していくようです。

簡単に「変更」といいますが、実際には混乱があるのではないか?とも思います。

例えば、2005年末になってから、パルミトイルペンタペプチド−は、パルミトイルペンタペプチド−に変更になりました。
定義をみてみると、

パルミトイルペンタペプチド−は、
「パルミチン酸とリシン、トレオニン及びセリン残基からなる合成ペプチドとの反応生成物である」
となっているのに対して、パルミトイルペンタペプチド−は、
「パルミチン酸とリシン、セリン及びトレオニン残基からなる合成ペンタペプチドとの反応生成物である」
となっています。
この場合、アミノ酸の紹介の順番が違うコトと「合成ペプチド」をより正確な「合成ペンタペプチド」にしているに過ぎません。まぁ、いいでしょう。

しかぁ〜し、同年に、パルミトイルテトラペプチド−は、パルミトイルテトラペプチド−に変更になりました。その、定義をみてみると、

パルミトイルテトラペプチド−は、
「パルミチン酸とリシン、トレオニン及びセリン残基を含む合成ペプチドとの反応生成物である」
となっているのに対して、
パルミトイルテトラペプチド−は、
「パルミチン酸とアルギニン、グルタミン酸、グリシン及びプロリン残基からなる合成テトラペプチドとの反応生成物である」
となっています(西日本化粧品工業会のHP参照)。

この場合、アミノ酸組成そのモノが違っています。実は、このパルミトイルテトラペプチド−定義が間違っていて、正しい定義に変えたのがパルミトイルテトラペプチド−だそうです。アミノ酸組成も間違うなんて・・・(汗)例えば、庭に木があったとします。その木は柿の木だと聞いていたのに、実際はビワの木だった・・・くらいに違います(汗)

なお、西日本化粧品工業会のHPでは、パルミトイルテトラペプチド−3は未だに検索可能ですが、既に、INCIは消滅しているそうです。更に、言うなら、パルミトイルテトラペプチド−の定義で、西日本化粧品工業会のHPでは「グルタミン酸」となっていますが、本当は「グルタミン」の間違いだそうで、現在(2007年10月)、訂正を求めている最中だそうです。

もしかしたら、パルミトイルテトラペプチド−7は、また、No.が変わるかもしれません(汗)


手作りで気にして欲しいコト

サプリやヨーグルトなどの食品を、手作りコスメにご使用になる方がいますね。
食べて安全なモノは、化粧品にしても安全!と、思っていませんか?
今回、ちょっと気にして頂きたいコトがあります。

例えば、アミノ酸やビタミンのサプリを、手作り化粧品に使うとします。
実際には、粒や粉を水に溶かして使用されると思いのですが、こういったサプリは、食べて直ぐに溶けるように「他の成分」に含有させています。イメージで言うなら「つなぎ」になる成分です。
サプリ中のアミノ酸やビタミンはともかく、この「つなぎ」の成分が、肌に塗った場合、光毒性酸化して悪影響を及ぼす場合があるのです。

通常、胃に入ってしまうモノは、太陽光による光毒性や、空気酸化によって変異するコトなど想定されていません。肌に塗るというコトは、肌の上で長時間太陽光や空気(酸素)に曝されるコトを意味するのです。

その昔、キューリパックやレモンパックなどが流行った時代にもこういったコトが指摘されました。植物のエキスだって、光毒性や刺激成分があるので、化粧品原料では「精製行程」が入ります。

最近では、こういった化粧品グレードの原料もネットで手に入るようになりました。便利な時代になりましたね。






最新情報へジャンプ