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UVカット化粧品の内臓-前編

今期からは化粧品の構成内容について斬ってみましょう。
つまり、化粧水やシャンプーなどはいったいどんな思惑で造られているのか?という、処方担当者ならではの正に裏話です。
では、今回は、季節柄、UVカット化粧品について述べてみましょう。

UVカット化粧品で有名なのは、資生堂のアネッサですね。あれは非常によく出来ています・・・と、いうか、最先端の技術があそこには詰まっていますからね。誰も真似できません。
では、その内臓をえぐってみましょう(笑)

UVカット化粧品はまず、
1:紫外線拡散剤
2:紫外線吸収剤
3:乳化剤
4:基剤
5:添加剤
の5つの構造からなります。

紫外線拡散剤とは、酸化チタンや酸化亜鉛を指します。酸化チタンは主に紫外線A波を抑制して、肌が黒くなるのを防ぎます。次に酸化亜鉛は紫外線B波を防ぎ、赤くなる炎症を抑えます。この2つは鏡の様な存在で、太陽光線(紫外線)を反射させることで紫外線を肌まで到着させることを抑制するのです。つまり、肌の上に乗っている限り、半永久的に働きます。

次に紫外線吸収剤です。「オキズベンゾン-数」、「○○PABA」、「サリチル酸○○」、「○○ケイ皮酸○○」、「t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン」などと表示されているものです。これtらは、紫外線を自らが吸収することで肌の炎症を抑制します。しかし、十分に紫外線を吸収すると自らは崩壊しますので、一定時間を越えると働きを失ってしまいます。また、分解して出来たモノが肌に害を生じさせる可能性もあります。

次に、乳化剤です。これは、紫外線を吸収させる為の紫外線拡散剤や紫外線吸収剤を肌に馴染ませる為、また、化粧品内で紫外線拡散剤や紫外線吸収剤を均一に分散させる為に加えられます。

次に、基剤です。基剤とは、主にその化粧品の形状を造っているものです。UVカット化粧品の場合、水若しくはシリコンです。水が多い処方系の方が肌への馴染みもいいです。一方、シリコンの多い処方系は長時間崩れない(落ちない)という特徴があります。

最後に、添加剤です。これは植物エキスが多く使われます。その働きとして、炎症を抑制する、活性酸素を抑制する、紫外線を吸収するなどの働きが期待されるエキスが入れられます。

こういった、5つの成分構成でUVカット化粧品は出来ています。


UVカット化粧品の内臓-後編

紫外線吸収剤として世界的にも有名なのがPABA(バラアミノ安息香酸)系の紫外線吸収剤です。しかしながら、皮膚刺激や発ガン性のあるニトロソアミインの発生が危惧されて脱PABAの流れが生まれ、いまでは殆ど使用されていません(実は、一部のオーガニック系の化粧品屋はジメチルPABAオクチルなどをいまだに使っているようです)。

それに替わって使用されてきたのが、オクチルケイ皮酸系の紫外線吸収剤です。国内では多くのUVカット化粧料に使われています。代表的な名前はメトキシケイヒ酸オクチルとかジメトキシケイヒ酸○○などがそうです。
高SPFになるように処方を組む場合、単一の紫外線吸収剤だけでなく、複数種を少量ずつ使う傾向がありますので、他にもベンゾフェノン系やサリチル酸系の紫外線吸収剤が併用さてます。
しかしながら、Maxに働いた後に分解し、その副産物が気になる紫外線吸収剤を嫌い、使用しない流れもでています。

そういった派は、紫外線撹乱剤を使用します。例えば、酸化チタンとか酸化亜鉛がそれにあたります。
昔は、酸化チタンや酸化亜鉛そのものに肌が反応したり、紫外線を浴びたときにラジカルが発生して肌を傷めるなどの事例もありました。しかし、今は、酸化チタン、酸化亜鉛ともに、シリコンラウリン酸アルミニウムなどで皮膜され、直接肌に付かないようになっています。また、その形状もフットボール型や花びら型など新たな工夫がされ、ここ数年での発展は目覚しいものです。

特に、最近は、汗や水に流れないウォータープルーフタイプも登場し、長時間の紫外線カットが可能になってきました。
しかしながら、逆に肌に吸着して落ちないという現象が生じています。そこで、メーカーは専用の洗浄剤を出しています。その成分は主にシリコンを添加したモノです。シリコンは水にも油にも溶けません。従って石けんでは洗い流せないのです。シリコンで皮膜された酸化チタンなどを落とすには、その洗浄剤の中にシリコンを分散させ、そこに溶かして浮かし、洗浄するという仕事をさせるのです。

よく質問で、「石けんでUVカット化粧料が落ちた」などとカキコがありますが、洗浄して落ちたわけではありません。洗っている間に、指やタオルで物理的に剥ぎ取った状態なのです。こういった洗浄方法は肌を傷めますのでお奨めではありません。専用の洗浄剤若しくは、シリコン系のクレンジング剤での洗浄がいいでしょう。


化粧水の内臓-水編

今回は化粧水の構成内容について斬ってみましょう。
化粧水といっても類似商品と勘違いしないように定義をつけます。
化粧水は、あくまで水溶液です。水&水に溶けるモノで出来ているモノを化粧水とします。ですから、巷でいう「美容液」や「エッセンス」も化粧水に分類されます。

この化粧水に対なるモノとして乳液があります。乳液はその成分にを含みます。そこが化粧水と乳液の大きな差です。
ですから、美容液やエッセンスと名付けられているモノの中にも乳液があるかもしれません。

基本的には、商品の裏表示に「化粧水」若しくは「乳液」と書かれている場合が殆どですので、それで区別するもの1つの手段でしょう。

では、化粧水の内臓を斬ってみましょう。

1:
2:保湿剤
3:pH調節剤
4:エキス
5:防腐剤

の、5つから構成されます。
今回は、このについて、述べます。
水と単純に言っても、様々なレベルがあるのです。

まずは、「水道水」です。
水道水には、防腐、殺菌の為に特定濃度の塩素が含まれています。アトピーや敏感肌の方は特にこの塩素を気になさりますね。
塩素は基本的に煮沸したり、一晩放置すると水から出ていってしまいます。一晩置いたり、煮沸後の水がタダの水道水とかなり感じが違うことを、珈琲やダシに拘っている方なら経験的にお分かりでしょう。
化粧品ではこの水道水を使っても構わないことにはなっていますが、まず使っているメーカーはないでしょう。

次のグレードはイオン交換水とも言われる「精製水」です。
市販されている「アルカリ水を造る器械」では造れません。水中の全てのイオンを除去した水のことです。従って、塩素もイオン性の物質がないので、体に害はありません。しかし、防腐力もない水です。
状態的には上記に述べた「煮沸後の水」や「一晩置いた水」に近いイメージもありますが全くの別物です。「煮沸後の水」や「一晩置いた水」は、水道管を通って来る間に多くのイオン(鉄イオンやアルミのイオンなど)を含んでいます。それは、煮沸などでは除去できないのです。
ですから、この精製水(イオン交換水)は簡単に家庭で造ることの出来ない水なのです。

更にグレードの高い水は、「超純水」とばれるモノです。
この超純水は、細胞培養やIC機器の洗浄などに使われる特殊な水です。

一般的な化粧品企業が化粧水に使っている水は「精製水」が殆どです。
アレルギーの原因になるかもしれない、不純なモノを出来るだけ除去しておく為にも精製水を用います。しかしながら、精製水は、あまりにも不純物が少ないので、菌が入った場合に防腐能力がありません。そこで、工場の衛生管理が問われます。従って、どこでも化粧品を造れる訳ではなく、かなりの衛生管理が出来ていることが化粧水を造る条件になるのです。

最後に、・・・。
最近では、「海洋深層水」とか「富士の○○水」とかを用いた化粧水も見受けられます。こういった「水」はその溶け込んでいるモノが大事な訳です。ですから、煮沸やイオン除去などの精製は出来ません。しかしながら、天然の水で菌のいない水はありません。
そこで、こういった水は「フィルター」を通してろ過します。そのフィルターの目の細かさは2μmといった非常に細かいもので、菌も除去出来るのです。

化粧水の命とも言える水の話。如何でしたでしょうか?
次回は「保湿剤」についてお話します。


化粧水の内臓-保湿剤編

化粧水の保湿剤として有名なのがグリセリン(以下、GC)と1,3−ブチレングリコール(以下、BG)でしょう。今回は、保湿剤の中でもGCとBGについて斬ってみます。手作り化粧品をお作りの方には参考になるかと思いますよ♪

では、早速・・・。
実際にGCやBGを手にすると、どろっとした透明の液体で、それ程差があるとは思えません。
匂いを嗅ぐと、GCが無臭であるのに対して、BGは少しフローラル?若しくは薬っぽいイメージの香りがするでしょう。またなめると、GCが甘いのに対してBGは苦い又は苦甘いと感じると思います。

どちらも安全性の高い原料ですので、安心して使って下さい。
特に、BGの場合は、適度な濃度を添加すると防腐能力もあります。

原料の由来は、GCの場合、ウシ若しくはヤシ油などの天然モノから作られます。今は、化粧品原料のGCはヤシ由来が殆どです。ウシ由来のGCはまず出回っていませんので、狂牛病が気になる方もご安心下さい。

一方、BGは天然界に存在しません(一部、ワインの中の菌が作るって話もありますが・・・)。まず、石油由来の合成です。
しかしながら、石油由来だからといって危険なモノでもトラブルの原因になるモノでもありません。先に述べたようにきわめて安全性の高い原料です。ただ、アトピー体質の方の中には、BGが合わない方もおられるかもしれません。

GC,BGの安全性の試験として、1999年に技術情報誌にパッチテストの結果が報告されています。それによれば、以下の通りでし。

20%GC水溶液でパッチテストした結果、トラブル性の低いことが分かった。
一方、20%BG水溶液でパッチテストした結果、72時間後にアトピー性の皮膚患者の方には、高い反応が確認されました。しかしながら、季節変動があるらしく、暖かい季節では、トラブル反応は0%でした


このデータの場合、20%濃度とは非常に高い濃度である事、季節変動があるという事は、物質そのものがアレルゲンでがなくて、その濃度に問題がある可能性がある事をお分かり下さい。また、一般の方が、BGを過剰に拒絶する必要は全くありません。

では、続いて、保湿成分としての働きを示しましょう。
一般的にGCよりもBGの方が、使用感が軽い、または、べたつきが少ないという使用感を感じるでしょう。そこで、その保湿力について示してみます。

-----fig1-----
....... ←20%GC水溶液と20%BG水溶液を肌に塗布した場合の保湿力の差をグラフ化しました。(fig1)
縦軸は保湿力を示し、横軸は時間を示します。
青はGC水溶液、ピンクはBG水溶液を示しています。
GC水溶液は塗布直後から高い保湿力を示し、且つ、1時間経っても高い保湿を維持しています。
一方、BG水溶液は塗布直後では保湿を示しますが、30分もすると保湿力を失います。

-----fig2-----
....... ←20%GC水溶液に水素添加大豆レシチン(HPC)を添加した場合の差をグラフ化しました。(fig2)
縦軸は保湿力を示し、横軸は時間を示します。
青はGC水溶液のみ、赤はGC水溶液に3%HPCを添加した場合です。
GC水溶液だけでも高い保湿力を維持しますが、HPCを添加することで更に高い保湿能力になります。また、塗布して1時間たってもGC水溶液を塗布した場合よりも高い保湿性をしましました。

-----fig1-----
....... ←20%BG水溶液に水素添加大豆レシチン(HPC)を添加した場合の差をグラフ化しました。(fig3)
縦軸は保湿力を示し、横軸は時間を示します。
太線はBG水溶液のみ、細線はBG水溶液に3%HPCを添加した場合です。
BG水溶液に3%のHPCを加えても、その保湿能力は変わりませんでした。



保湿剤として優秀なのはGCの方のようですね。しかし、べた付きを感じる方にはBGも有効でしょう。上手くこの2つの保湿剤を使いこなせると、いい感じの仕上がりになるでしょう。(勿論、混ぜてもOKです)

今回の話の中に出てきました水素添加大豆レシチンは、いま、医学界、化粧品業界でも注目の1品です。使いこなすには少々コツが必要ですが、石鹸に入れても保湿感を感じるなど優秀な原料です。

次回は、pH調節剤について斬ってみますね。


化粧水の内臓-pH調節編

化粧水で重要なポイントの1つにpHの調節があります。
一般的なイメージからすると、化粧水のpHはどうなのでしょうか?
弱酸性?中性?そんな感じでしょうか?

化粧水の基本的なpH調節としては、クエン酸とクエン酸Naで行います。主に弱酸性で仕上げているモノが多いのではないかと思っています。
クエン酸は0.25%以上添加すると、肌の弱い部分(鼻の下や目尻など)にピリピリ感を感じる方がいます。こういった方の肌を「センシティブスキン」と呼びます。俗にいう敏感肌の一種です。

最近は、ご自宅で化粧水を作られている方も多く聞きます。そういった方の中には、酢酸でpHの調製をされている方がいると聞きました。その場合、問題は臭いです。結果から言いますと、酢酸でのpH調節はお奨めできません。あの臭いは消えませんし、長く残りますからね。やはり、一番はクエン酸でしょう。

クエン酸以外でpHを調節するモノとしてPCAとPCA−Naがあります。このPCAとは、グルタミン酸というアミノ酸を環状にしたモノです。特に、PCA-Naは、本来肌が持つ保湿成分の1つです。
この原料はアミノ酸由来であるので安全であると謳っているところも多いのですが、実際には高濃度で塗布すると肌が赤くなります。この現象はトラブルではなく、急激な血行促進によるものである、との報告もあります。
確かに、痒みを感じない方も多いらしいです。

他にも、乳酸と乳酸NaでpHを調節している化粧水もあります。乳酸は、ピーリング剤として有名ですが、抗菌性があることでも有名です。また、乳酸Naは使用感のよい保湿成分で、グリセリンの代替にもされるほどです。

最後に・・・。
化粧水のpHは、弱酸性ばかりではありません。医薬部外品として有名なビタミンC配合の化粧水の内、ナトリウム塩タイプやリン酸マグネシウム塩タイプのビタミンC(アスコルビン酸Naやリン酸アスコルビルMg)を配合している化粧水は、弱アルカリに処方されています。

これは、化粧水を酸性にもっていくと、折角の有効成分である、アスコルビン酸Naやリン酸アスコルビルMgが分解してしまうからです。

つまり、美白を謳っている化粧水の半分ほどは弱アルカリ化粧水ということなのです。
肌に塗布するものなら、出来るだけ肌に負担のかからないものにしたいですね。


化粧水の内臓-エキス編

化粧水にはよくエキスが配合されています。
エキスには、大きく分けて4種類あります。

1:エタノール抽出エキス
2:ブチレングリコール抽出エキス
3:油溶性エキス
4:

です。

以前も載せた文面ですが、1のエタノール抽出の方法を再び表記してみます。


生薬の抽出方の例
<<<<<<<エタノール抽出の例>>>>>>
○○植物の根30kgを細切りし、粉砕器で細砕する。これに50%エタノール200Lを加え,一昼夜撹拌抽出した後、ろ過する。ろ紙に残ったものには、50%エタノール90Lを加え同様に抽出を行い、全抽出液を合わせ減圧濃縮を行い、抽出液のエタノール含量が30%になるように精製水及びエタノールを加えて調製する。更に10〜14日間冷所に放置して成熟させ、この工程で生じたオリや沈殿をろ過して除去し、30%エタノールを加え,製品200Lを得る。



このように、プロの業者が行うエタノール抽出溶液とは、一般素人の方が行う方法と大きく異なります。また、抽出とは、やたらと濃く抽出したがる方がいますが、それも問題です。そうですね、イメージ的には、鰹出汁がいいでしょうか・・・。あんまりひつこく出すと苦味や不味さが出ますよね。生薬の抽出も同じなのです。適度な抽出というのが最適なのです。そこを踏まえて、安全性の面まで考慮した抽出方がプロの業者の抽出条件になります。

2のブチレングリコールの抽出も上記と同じ話になります。ただ、同じ生薬をエタノールで抽出するか、ブチレングリコールで抽出するのかで「何が抽出されるか」が事なります。どちらがいいという問題ではなく、「何を抽出したいのか?」で区別されます。
例えば、ブチレングリコールでの抽出の場合、エタノール抽出よりも水に溶けやすいモノが抽出されます。アトピーの方用に、ノンアルコールで化粧水を作りたい!とか考えた場合、エタノール抽出のエキスでは「オリ」が生じることがしばしばあるのです。未開封で3年の保証期間が化粧品の基本ですから・・・。そこんところが大事になります。

3の油溶性エキスとは、字の如く油に溶ける(水に溶けない)エキスです。主に、スクワランエキスだったり、ビタミン系の物質(ビタミンEなど)だったりします。主に、ファンデーションや口紅、クリームに配合されるので、化粧水には配合はないでしょう。

4の粉ですが・・・。エキスと言えば液体というイメージですが、実際は、抽出物をエキスと表現しますので、粉であることもあります。甘草(カンゾウ)に含まれる生薬成分であるグリチルリチン酸ジカリウムなどは粉だったりします。ビタミンCも粉ですね(ビタミンCの場合はエキスとは・・・言わないでしょうが・・・)。

最後に・・・。
化粧水に配合されているエキスですが、謳いや飾りなら0.02%程度の時もあります。本気で効果を狙う場合は、粉なら0.1%、液体のエキスなら1〜2%以上は配合されているでしょう。しかし、あまり高濃度では、逆にかぶれが生じたり、トラブルの原因になりかねないので注意が必要となります。

次回は、防腐剤について斬ってみましょう。

化粧水の内臓-防腐剤編

防腐剤として有名なものに、パラベンがあります。パラベンには種類があり、全盛分表示で見た場合、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンが有名でしょう。
これらのパラベンは水への溶け易さが異なります。種類的にはメチルパラベン、エチルパラベンが水に好く溶けます。続いてプロピルパラベンが水に溶け、ブチルパラベンはどちらかといえば油溶性になります。
従って、化粧水に配合されるパラベンはメチル、エチル、プロピルパラベンが主になります。

ことメチルパラベンについて斬りますと、通常0.25%濃度で肌にピリピリ感を感じる人が生じると言われています。そうです、センシティブスキンの方は感じてしまうのです。
パラベンはその総量(合算)として、1.0%が上限ですが、実際に配合されている濃度は0.01〜0.87%で、特にメチルパラベンは0.3%を越える濃度を添加していることは稀であるといわれています。

続いて、天然の防腐剤として有名なGSE(GrapefruitSeed Extract)について斬ってみましょう。
このGSE、日本名ではグレープフルーツ種子抽出物という名になります。アロマ系や手作り化粧品をやっておられる方々の間ではかなり有名な天然の防腐剤です。しかし、化粧品業界では、タブー原料の1つとなっており、日本国内でGSEを使っている化粧品メーカーはまずないでしょう。
それは、6年ほど前の話になります。さる大手化粧品メーカーがこのGSEを採用しようという話になりました。当時も自然派、パラベンの代替は叫ばれていましたので、GSEは着目を浴びていたのです。
しかし、採用寸前で大きな問題が生じたのです。

それは、衛生試験所をはじめとする数社の企業が
「GSEには、メチルパラベン並びにトリクロサン(2,2,4'-トリクロロ-2'-ヒドロキシジフェニルエーテル)が含まれている
と、報告したのです。
自然な原料を売りにして、パラベンや防腐剤フリーの化粧品を作るためのGSEにパラベンやトリクロサンが含まれているとは・・・!
当時はそれはそれは大問題になりました。
因みに、トリクロサンとは、加工布に使われていた抗菌防臭剤ですが、脱塩処理して燃やすとダイオキシンを発生させるために繊維素材に対して使われなくなった物質です。

GSEにパラベンやトリクロサンが混入していたのか、密かに添加されていたのかは不明です。しかし、それ以来信用を失い、GSEが化粧品の原料として検討されることすらなくなりました。

続いて、ロースマリーエキスです。
本来は抗酸化作用をもつエキスとして着目されていましたが、ここ数年、防腐剤として使用される傾向があります。ただ、抽出方法が色々あり、エタノール抽出なのか水抽出なのかとかで防腐効果が異なるとの話を聞いています。また、パラベンが0.0x%で効果を持つのに対して、数%入れない防腐効果がないとされています。

最後に、ブチレングリコールとエタノールの防腐について斬っておきます。
基本的に、ブチレングリコールの防腐は30%がベストといわれます。実際には、処方上の工夫で8〜20%配合の場合が多いらしいです。
また、エタノールは20%以下では健常の方はピリピリ感を感じないと言われます。エタノールだけで防腐をとる場合は、最低でも10%はく欲しいものです。しかし、実際にはパラベンとの併用などでかなり低い濃度のエタノール(ブチレングリコール)で防腐をとっている場合が一般でしょう。

防腐を如何にとるかは、各企業の最高機密の1つです。単純に濃度だけの一長一短の話にはならないのです。組み合わせや製造設備の充実なども大きな要因の1つです。単純に言って、企業が大きいと流石に設備もいいのですが、*印さんみたいな例も大手にはありますからねぇ・・・。

洗顔料とメイク落としの内臓-働き編

洗顔料(つまり洗顔フォーム)とメイク落とし、を斬ってみましょう。
洗顔料と類似の商品にメイク落としがあります。洗顔料とメイク落としの一番の違いは、油(若しくはシリコン)を含有するか否かです。
では、洗顔料の内臓を見てみましょう。

1:界面活性剤
2:エキス(保湿剤)
3:

です。至って簡単ですね。石鹸はこれの水の極端に少ないスタイルです。
一方、メイク落としは、

1:界面活性剤
2:エキス(保湿剤)
3:
4:油(またはシリコン)

です。
今回は、特に働きについて斬ってみます。

洗顔は、界面活性剤で垢や汚れを水中に浮かせます。そして、すすぎの時の大量の水に界面活性剤と水と垢の混合物として流されていくのです。
一方、メイク落としは、垢は洗顔料と同じく界面活性剤が抱き込んで流します。しかし、口紅やUVカット剤は、油やシリコンで浮かせます。その油+口紅、若しくはシリコン+UVカット剤の混合物を界面活性剤が抱き込んで水と一緒に流してしますのです。

これは「同じ性質のモノは同じ性質の液体に溶けやすい」という物理の法則を利用しています。

つまり、油で出来ている口紅などは、同じ油に溶けやすいので、一旦、処方中の油で浮かしておくのです。しかし、油は水に溶けませんので、浮いた状態の所に多量の水を与えると、口紅の成分は再び肌に吸着してしまいます。それを界面活性剤が阻害しているのです。(つまり、オリーブオイルオンリーでは落ちないのですよね)
また、最近のファンデーションやUVカット剤は、皮脂(つまり油)や汗(つまり水)で流れないように、粉の1粒ずつをシリコンでコートされています。ですから、油の入ったメイク落としでは、(シリコンは油に溶けないので、)洗い流せない訳です
そういった場合は、界面活性剤+エキス+水+シリコンで処方されるメイク落としが良いわけです。

つまり、界面活性剤+エキス+水で出来ている洗顔フォームや石鹸では口紅やファンデーション、UVカット剤は落とせないのですね。

ところが、実際には落とせている様に見える場合があります。それは、タオルやスポンジなどの物理的な道具を使った場合です。
しかし、この場合、肌に負担をかける(だって、削ってとってるわけですからね)だけではなく、毛穴の奥にファンデーションや口紅の油が残り、吹き出物やニキビの原因になります。
美しいお肌は、まず、洗顔(メイク落とし)からです。


洗顔料とメイク落としの内臓-界面活性剤編

洗顔料に使われる界面活性座には大きく分けて2種類あります。それは、アルカリタイプのモノと弱酸性タイプのモノです。
まぁ、「中性タイプもあるじゃないか!」と、おっしゃる方もいるでしょうが、大方はその2種類に分類されるのです。

アルカリタイプの洗顔料に使われる界面活性剤は、「石鹸」と「アミノ酸系界面活性剤」の2種類です。それに対して、弱酸性タイプの洗顔料に使われるのは「アミノ酸系界面活性剤」になります。

ここで、「おや?アミノ酸系界面活性剤には色々あるんかな?」と、思った方は半分正解です。

このサイトで何度か紹介していますが、アミノ界面酸系活性剤には、グルタミン酸タイプ、アラニンタイプ、タウリンタイプ、サルコシンタイプなど様々あります。共通して言えることは、「弱酸性〜アルカリ性まで、広い範囲で働く」と、いう点です。

では、弱酸性とアルカリ性ではどう違うのでしょうか?
大きな違いは、同じ界面活性剤でも、その脱脂力が違ってきます。
以下に以前にもご紹介しました、酸性〜アルカリにかけての脱脂力の違いをグラフにしたものを紹介致します。
このグラフは、アルキルグルコシドというノニオン界面活性剤での実験結果ですが、同じ界面活性剤でも、アルカリ(pH12以上)では脱脂力が強くなっている事を証明しています。

「NMFの溶出(肌からアミノ酸成分を溶かしだす力)」


このグラフは、軸が長い程、肌からのアミノ酸の溶かしだしが強いことを示します。
つまり、その洗顔料が弱酸性(pH6)である方がマイルドという事になります。

また、同じように、石鹸系はマイルドなのか?と問われると・・・、必ずしもそうではありません。
以下は、(以前にも紹介しましたが)石鹸とアミノ酸系界面活性剤の肌からのアミノ酸の溶かしだしの差です。

「NMFの溶出(肌からアミノ酸成分を溶かしだす力)」


このグラフも、軸が長い程、肌からのアミノ酸の溶かしだしが強いことを示します。
ココイルグルタミン酸Na(AGS)とは、アミノ酸系界面活性剤の1種で、如何に低刺激であるかお分かり頂けるでしょう。

しかしながら、ココイルグルタミン酸Na(AGS)を使っていても、アルカリ性の洗顔料として使われていると、折角の効果も半減です。(AGSは弱酸性〜アルカリ性まで広く使えますからね)

アミノ酸系界面活性剤がいいとか石鹸がいいとか・・・、色々論議はありますが、本当にマイルドなのは、やはり「弱酸性タイプ」の界面活性剤です。

逆に、さっぱりしたいなら「アルカリタイプ」のモノがいいですね。

洗顔料を選ぶ時には、そこがポイントですよ。


洗顔料とメイク落としの内臓-エキス&水編

今回は、「エキス(保湿剤)」と「水」の話です。
洗顔フォームによくエキスが配合されているモノがあります。如何にもその成分が効くかのような表現をしている場合は、「本当かぁ?」と、突っ込みたくなります。基本的には、洗い流しタイプに配合されるエキスはその効能を持たないと思うのですが・・・。なぜなら、ほとんどのエキスは、洗浄時に肌に残ることなく流れていくからです。

洗顔フォームのしっとり感は、主にその界面活性剤の性質とpHによるものです。エキスは使用感や仕上がりに影響はないでしょう。
他に、しっとり感に作用するモノとしては、グリセリンや、ソルビトールなどの糖類があります。これらは単純にしっとり感を与えるためだけに配合されている訳ではありません。保湿以外の働きとして、「生地の固さを調節する」、「透明感を出す」、「防腐」などの働きがあります。

生地の固さ調節は想像がつくでしょう。透明感は、「透明の固形石けん」と同じ原理です。透明の石けんは通常の石けん以上に多くのグリセリンや糖を含ませていて、あの透き通ったスタイルになっているのです。

意外かもしれませんが、グリセリンやソルビトールを用いて防腐を図ることができるのです。
原理は、こうです。
菌が増殖するには、一定量のが必要です。それも自由水といわれるシャバシャバ流動性のある状態の水でなくてはいけません。同じ水でも何かが飽和状態に溶けている水を菌は利用できないのです。
つまり、洗顔フォーム中の水をグリセリンやソルビトール(糖)で飽和にしてやれば、菌は増殖できないわけです。
簡単な例でいいますと、水あめとかハチミツにも水は含まれていますが、その水は糖で飽和状態なので、菌が増殖できないのと同じです。
この原理を利用して、パラベンなどの防腐剤を使わずに抗菌性を持たせるように処方された洗顔フォームも多く見受けられます。

化粧水でも同じ方法で防腐は可能ですが、今度はオリが生じる可能性があります。先のような防腐の取り方は、(流動性があるとはいえ)固形である洗顔フォームならではの防腐の取り方です。


洗顔料とメイク落としの内臓-オイル編

最近の洗顔料にはクレンジング機能を持ったモノもあります。
洗顔とクレンジング、どちらも同じようなイメージありますが、どう違うのでしょうか?

大きく違う点は、「汚れ」として扱う成分の差です。

洗顔料は皮脂や汗や肌に付着したゴミを落とすことが目的です。皮脂と言っても複雑な成分が含まれています。ここに例を上げましょう。

人工皮脂の組成例
スクワレン
イソステアリン酸パルミテート
コレステリルオレエート
マカデミアナッツ油
コレステロール
グリセリルモノミリステート
ミチスチン酸
ステアリン酸
オレイン酸

です。
主に、(スクワラン等)と脂肪酸(ミリスチン酸等)、コレステロール類(コレステロール等)からなります。

モノが溶けるという原理は、「同じ形のモノには同じ形のモノが溶けやすい」と、いう法則があります。石鹸は、高級脂肪酸の塩ですから、油や脂肪酸を溶かしやすいのです。
従って、石鹸などの洗顔料では、皮脂の汚れを落とすことができます。

しかしながら、最近のメイクにはシリコンが多用されています。このシリコンは、皮脂ともなじみにくいので、流れたりしないわけです。また、皮膚トラブル性が低いので、UVカット剤の酸化チタンや亜鉛、口紅の顔料などをこのシリコンで覆うことで、皮膚トラブルを低減させているのです。

つまり、最近の化粧品はここ数年でかなり変化しているのです。今までの石鹸では落ちない化粧品に変わってきています。

そこで、メイク落としとしてシリコンやミネラルオイル系が配合されるのです。
シリコンで被膜された酸化チタンでも、同じシリコン系には溶けやすいですから、その点を利用しているのですね。

「石鹸でもメイクが落ちる!」などといって、過信してしまうと、毛穴の奥に汚れをため込んでしまうかもしれません。スクワランのみでクレンジングすると、確かに口紅やファンデーションは浮かすことが出来ますが、ふき取りタイプになってしまいます。この「ふき取る」という物理的な刺激が案外トラブルに繋がるのです。

高価な商品である必要はないですが、メイク落としと洗顔は別にされるのがお薦めですね。

次回は、リンス、トリートメント編です。

TEA(トリエタノールアミン)をわたしが推薦しない理由>

今回は掲示板にて質問がありましたので、予定を変更してTEA(トリエタノールアミン)をわたしが推薦しない理由を書きましょう。

TEAの問題は、1967年にあった「ラット(ねずみ)にニトロソジエタノールアミンを飲料水に入れて飲ませ続けると、肝ガンが発生する可能性がある」という報告を踏まえて、そのニトロソジエタノールアミンは、TEA(トリエタノールアミン)と亜硝酸などが反応して生じる事。また、過去に実際に化粧品の商品からニトロソジエタノールアミンが検出された事から問題になっています。

以下、その当時の様子を紹介する文面をご紹介します。

1976年10月18日発行のケミカル・アンド・エンジニアリング・ニュース誌に、ニトロソジエタノールアミンが切削油の中に発見されたという記事が載った。(抜粋)切削油は通常三級アミンであるTEA(トリエタノールアミン)から出来ており、・・・」(文献1)
などの文献がある。
また、文献2にて田ノ岡宏氏もその経緯を述べています。

まぁ、過去の難しい経緯を簡単に述べますと、
1:TEAはそのままでは、発がん性のあるニトロソアミンは生じません。(文献1)
2:しかしながら、条件がそろうと発がん性のあるニトロソアミンに変化します。
その条件は、化粧品中にTEAがあり、亜硝酸塩があるといった条件です。亜硝酸塩は流通で使用されるドラムからコンタミ(入ってしまう)ことが想像出来ます。(文献1)
3:他にも、(亜硝酸塩がなくても)一部の防腐剤(BNPD)が配合された場合でもニトロソジエタノールアミンが生じる可能性があります。(文献3)
4:また、アメリカや日本のトイレタリー商品でも実際にニトロソジエタノールアミンが検出された報告がります。(文献4)
5:また、マウスの実験ですが、TEAを傾向摂取し続けると発がんがおこります。(文献2)

以上の事柄をもって、わたしはシャンプーの界面活性剤のTEAタイプを避けたいと思っています。

しかしながら、1983年にTEAに関して洗い流す製品については安全であり、皮膚に残る製品の場合は5%までは安全であるとう報告もあえいます。(文献5)

現在、旧化粧品の原料規格では、TEAタイプの界面活性剤の規制はありません。また、現在使ってはいけないという規制もありません
わたし的に言わせて頂けば、パラベンと同じ存在です。
多量に飲食しない限り大きなトラブルはないでしょう。しかしながら、少しでもやばげなモノは使いたくない、避けられるのなら避けたいといった考えを持った場合、配合されていない商品を奨めたいと思っています。
実際、TEA以外でも良質な界面活性剤は多存しますからね。

現在も多くのメーカーがTEAタイプの界面活性剤をシャンプーに使っています。それは、TEAタイプは確かに使用感が抜群にいいからです。
しかしながら、化粧品の研究と原料メーカーの間で、

化粧品メーカー:「TEAにかわるタイプの界面活性剤はないですか?」
原料メーカー:「御社もですかぁ」

などといった会話がよくされているのも事実です。

全成分表示は中身をさらす事で使用の判断を買い手に委ねる形をとってはいるのですが、個々の成分に関する情報提供はかなり少なく、また、過激な表現も多いです。
我々は我々の置かれた環境を正当に評価し、それを恐れ過ぎても、恐れなさ過ぎてもいけないと思うのです。


文献1:フレグランスジャーナル1979年No.34 G.A.アンダーソン 「化粧品中のニトロソアミン」
文献2:フレグランスジャーナル1979年No.37 田ノ岡宏 「トリエタノールアミンの突然変異原性と発がん性」
文献3:フレグランスジャーナル1996年12月号 吉岡、松田 「最近開発された高機能化粧品素材」
文献4:フレグランスジャーナル1979年No.37 井上邦夫 「トイレタリーにおけるニトロソアミンと突然変異原性について」
文献5:技術情報 No.200 1995年 日本化粧品工業連合会 「NTPトリアタノールアミン発癌性実験で雌マウスに発癌性の疑い」
その他、参考文献
文献6:技術情報 No.226 1997年 日本化粧品工業連合会 「NTP発癌性試験でジエタノールアミンの発癌性が雄マウスに認められた」
文献7:技術情報 No.229 1998年 日本化粧品工業連合会 「FDA、ジエタノールアミン類の発癌性に懸念示す」
文献8:技術情報 No.272 2002年 日本化粧品工業連合会 「ジエタノールアミンはマウスにおける感コリン欠乏を誘導する」
文献9:技術情報 No.272 2002年 日本化粧品工業連合会 「NTPによるジエタノールアミンの発癌性に関する報告」
文献10:技術情報 No.276 2002年 日本化粧品工業連合会 「DEAはNTP科学諮問委員会によりRoC第11版の発癌物質リストから除外される」


リンス、トリートメント-分類・使い方編

今回は、リンスとトリートメントの内臓を斬ってみましょう。
まず、リンスのお仲間には、「リンス」、「コンディショナー」、「トリートメント」、「ヘアパック」などの洗い流しタイプの他に「ヘアミルク」、「ヘアウォーター」などの塗りきりタイプがあります。今回は、セット剤(寝癖直しを含む)や「ヘアミルク」などの塗りきり剤は避け、洗い流しタイプを中心に斬ってみましょう。

まずは、分類です。
化粧品的に分類するなら「リンス」と「トリートメント」という2つの表現しかありません。コンディショナーはリンスに分類され、ヘアパックはトリートメントに分類されます。

では、どの様に異るのか?

と、問われますと、一般の方は、しっとり感の違いで「リンス」<「コンディショナー」<「トリートメント」<「ヘアパック」と、分類されるとお思いでしょう
まぁ・・・正解です(笑) しっとり感の差で大きくその様に分けられます。しかし、数値的分類もありませんし、先の述べた様に「コンディショナー」とか「ヘアパック」という名は元々なかったものですから、商品名としてごちゃごちゃに位置づけされているのも事実です。

もう少し詳しく分類するなら、リンスは「髪の表面を主に改善」し、トリートメントは「髪の内部に働き掛ける」点です。

つまり、キューティクルを初め、髪の表面に膜を張ってツヤや髪質を改善するのが、リンス。髪の内部に浸透し、髪の柔らかさやぱさつきを改善するのがトリートメントです。

と、言っても、きっちり働きを分けている訳ではなく、「髪の表面を中心に内部にも働き掛ける」というのがコンディショナー。「髪の内部中心に浸透し、改善するが、ツヤもに働き掛ける」というのがトリートメントとか・・・。仕事は二重になっているのが殆どです

次に、使い方です。
昔、「リンスを洗面器の湯に溶かして薄めて使う」などと言った時代がありましたが、今のリンスはそんなことをやってはいけません
容器から出されたばかりのリンスには、水に溶けにくい成分が多く含まれています。それを髪に塗布し、次に多量の水をかけた際に、その水に溶けにくい成分(例えばシリコン)が髪に吸着する仕組みになっているのです。
ですから、先に水に溶いてしまうと、そこで分離して、シリコンなどの髪への吸着率が極端に落ちてしまうのです。
これは、トリートメントも同じです。

また、使用時間ですが、リンスの場合、髪に塗布して直ぐに洗い流しても効果は同じです。しかし、トリートメントの場合、髪に塗布して3分ほど放っておいた方が、髪に浸透します。髪の表面で働くリンスと髪に浸透させなくてはいけないトリートメントとの違いですね。

なお、この話は、通常のリンス剤の話で、石鹸シャンプー用のリンス(クエン酸リンス)などは話が違います。

次回は、リンス、トリートメントの成分的な話を致しましょう。


リンス、トリートメント-成分編 & 質問回答

今回は、リンスとトリートメントの成分と、幾つか質問が来ましたのでご回答致します。

リンスは

乳化剤(界面活性剤)
高級脂肪酸
シリコン
(油)
エキス

トリートメントは

乳化剤(界面活性剤)
高級脂肪酸
(シリコン)

エキス
からなります。

殆ど同じですが、シリコン重視か油重視かという差ですね。「差」とは単純に「量」の問題ではなくて「働き」の違いです。
リンスのシリコンは髪への吸着し指通りを改善する以外にも、すすぎの時の指通りの改善もあります。
一方、トリートメントの場合、シリコンを配合していない場合もあります。
逆に、リンスは油を添加していない場合もあり、トリートメントの場合、髪に浸透する油が選択的添加されています。
乳化剤や高級脂肪酸については次回お話しましょう。
今回は以下の質問がありましたので、ご回答致します。

質問1:リンスとトリートメントの使う順番は?
一般的には
シャンプー→リンス→トリートメント
若しくは
シャンプー→トリートメント→リンス
です。
「リンスは髪をコートするから髪に成分を浸透させるトリートメントの方を先にすべきではないか?」と、思う方もおられるでしょう。しかし、リンスの髪をコートする成分はシリコンで、シリコンはべた〜っと膜状に髪の表面に張り付くのではなく、網目状に(ネットを掛けたように)髪に吸着します。ですから、先にリンスを行っても全く問題ありません。

質問2:なぜ、傷んだ部分に選択的に修復するのか?
髪の表面が健康な状態の場合、髪の周りはキューティクルで覆われています。キューティクルは疎水性で水をはじきます。しかし、傷ついて現れた髪の内部は親水性で水になじみます。髪への修復成分は「髪の内部に浸透するモノ」の他に、「傷ついた部部をコートするモノ」もあります。親水性と相性のいい成分を配合してやると、健康な髪の表面(疎水性)には吸着せず。傷んだ部分(親水性の部分)にのみ引っ付くのです。これが、「傷んだ部分に選択的に吸着する」の原理です。

質問3:キューティクルは再生するのか?
修復しません。よく、「傷んだ髪でもさらさらに修復する」と、いう話を聞きますが、あれはキューティクルを再生している訳ではありません。髪は死んでします。勝手にキューティクルを再生できないのです。
では、どうやっているのか?
主にオレイン酸などの液状脂肪酸を髪に浸透させて、髪の疎水性を復活させることで「キューティクルが治った」ような感じにしているだけです。

また、素朴な疑問を待ってますね。


リンス、トリートメント-カチオン編

リンスに使われる乳化剤の多くは「四級カチオン」と、呼ばれるカチオン界面活性剤です。具体的には、塩化アルキルトリメチルアンモニウムというモノです。
これと合わせる成分として高級脂肪酸があります。特にリンスの場合は、ステアリルアルコールといものが使われます。

リンスやトリートメントの全成分表示を見ると
塩化アルキルトリメチルアンモニウムステアリルアルコール
の2種類が必ずといっていいほど使われいます。
少し凝った処方になると、ステアリルアルコールのかわりにベヘニルアルコールセテアリルアルコール(セタノール)などが使われます。

単純に言えば、この四級カチオンと高級アルコールを1:3〜10の割合で混ぜて、そこにシリコンを多く添加したモノがリンス、油分を多く添加したモノにしたものがトリートメントです。

この表現はプロの処方氏が見ると起こられるような荒い表現ですが、大方そういうことです。この組みあわせと、比率で使用感や塗布感、仕上がりが決まります。

リンス剤がよく悪者にされるのは、この塩化アルキルトリメチルアンモニウムとステアリルアルコールが旧表示指定成分であった為です。得に、塩化アルキルトリメチルアンモニウムに関しては、「嘔吐」とか非常に怖い表現を多く使っているサイトを見かけます。過剰表現ですね。そりゃ、リンスをガブガブ飲んだら別ですが、塗布してちゃんと流していれば何の問題もありません。トラブり率からしますと、よっぽど塗りきりの化粧水の方が多いです。

だだ、リンスはどこまですすいでいいのか判断出来ない方が多く、洗い残しがトラブルに繋がることが多いのも事実です。特に、耳の後ろと毛の生え際は注意して大目にすすぎましょう。それだけでトラブルは1/2以下に減りますよ。

暑い季節になります。こういった時こそすすぎに気を配りましょう!


石けんの話

今回はちょっと指向を変えて石けんの話を致しましょう。
石けんというと「ミリスチン酸カリウム」とか「ステアリン酸ナトリウム」とかを主成分としているのが当り前でした。
基本的な形は「脂肪酸」+「アルカリ塩」といったスタイルです。

泡立ちとしては、炭素数が12のラウリン酸タイプとか炭素数が14のミリスチン酸タイプ良好な泡立ちを示します。
しかし、脱脂力では炭素数16のパルミチン酸や炭素数18のステアリン酸タイプ強い脱脂力を持ちます。
つまり、泡立ちと脱脂力は必ずしも一致していないのです
しかしながら、「泡が立たないと洗った気がしない!」と、言うのが市場の声でしょうね。

一方、「アルカリ塩」の方は、水酸化ナトリウムとか水酸化カリウムとかがよく使われますので「○○○ナトリウム」とか「○○○カリウム」などの表現になっています。ナトリウムやカリウムの塩の他にも「トリエタノールアミン(TEA)」タイプのものあります。

さっぱり感の強い順に表現しますと、
「カリウム塩タイプ」>「ナトリウム塩タイプ」>「TEA塩タイプ」
となります。使用するパターンでは、カリウム塩タイプはボディーソープに、ナトリウム塩タイプは洗顔に、TEA塩タイプはシャンプーに使用するのに向いています。

また、最近では、「アルギニン塩タイプ」の石けんも出回っています。俗に言う「アミノ酸塩タイプの石けん」です。これとよく間違えられるモノに「アミノ酸系界面活性剤」があります。
アミノ酸塩タイプの石けんは
「脂肪酸」+「アルカリ塩」
アルカリ塩の部分がアミノ酸(アルギニン)になっています。

一方、アミノ酸系界面活性剤は
「脂肪酸」+「アルカリ塩」
脂肪酸の部分にアミノ酸(グルタミン酸やタウリンなど)が構造上入っています。つまり、「アルカリ塩」の部分はナトリウムやカリウムなどが付くわけです。

話を戻しまして、アミノ酸塩タイプの石けんは配合することで、カリウム塩タイプの石けんの刺激を緩和します。アミノ酸塩タイプの石けんはアルカリですが、pHもマイルドですし、通常の脂肪酸中和で石けんを作る方法で出来ますので、もしご興味のある方は作ってみては如何でしょうか?

美白に対する情報

今回は、週間粧業という化粧品関連の新聞の2003年7月14日の記事を中心に、美白について書いてみましょう。
今回の記事の中に、美白に対してのアンケート結果がありました。
まずは、「美白化粧品の使用開始時期は?」という質問に以下のようなグラフ結果が 出いました。

「美白化粧品の使用開始時期は?」


このように、美白化粧品の使用開始は20代が圧倒的に多いのが解ります。また、「いつ使うのか?」と、いう質問には、「夜のスキンケア」との回答が70%を越え、「朝のスキンケア」との回答は60%を越えていました(複数回答可)。案外低かったのは「メーク時(ファンデーションなど)」という回答で30%を切っています。
やはり、夜にじっくり肌を休めたいという気持ちが大きいのでしょうね。
因に、21時から23時の間に寝ると、肌の修復効果がいっそう良好になるそうです。これは、「修復しよう」と働く体内の酵素やホルモンと、それらが働くのに最適な「体温」との関係です。起きている時の体温では修復には不十分なのです。TVも気になるでしょうが、美白には早寝が効果的なのです。

続いて、「美白の期待成分は?」との質疑では、

「美白の期待成分は?」


と、いう回答になっています。やはり、ビタミンC系統が一番認識されているのですね。また、商品やサプリの中にも入っているので安心感もあるのかもしれません。
ただ、ビタミンC誘導体といっても、以前にここで斬ったように、全て安心なのかは疑問視ですし、ビタミンCとソウハクヒエキスの組みあわせで効果がダウン?という話もありますからね。

最後に、驚きだったのは、「「コウジ酸」の問題や「BSE」の問題をご損じですか?」との質問に、共に9割以上の方が「知らない」と回答
美白成分として名高かった「コウジ酸」の使用中止や狂牛病でのプラセンタエキスやコラーゲン問題などは・・・業界だけが踊っていたのかなぁ(汗)


訪販化粧品情報

今回も変わったところを斬ってみましょうか。
平成15年6月に「訪販化粧品工業界」というところが「訪販化粧品業界の現状と今後の展望」というモノを冊子にまとめました。その一部をご紹介しましょうか。

訪問販売というと直ぐにネズミ講と思ってしまう方が多いかもしれませんが、そんなことはありません。きちんと法律にのっとって販売されていますので、毛嫌いしないで下さい。また、本当に消費者の為の商品を販売されている訪問販売業者も多いですよ。
ではでは、平成14年の訪販化粧品の現状をみてみましょうか。



左のグラフは、訪販化粧品業界が今後どのような方法で販売展開をしようとしているのかを、10年前と比較しています。
10年前にはなかったサロン販売やエステティック販売、ネット販売への展開を考えていることが解ります。ネットは安価に宣伝出来る媒体です。広く攻めたいと思うのでしょうね。逆に、エステやサロンは専門的ですから深く特徴有る商品を売っている業者が狙っているのかもしれません。


次に、相談窓口の担当人数です。訪問販売の多くは中小企業で100人以下のメーカーが多いのです。従って、相談窓口は1〜3人が最も多いですね。
考え方によっては、何かあった時にたらい回しにされないといった利点があるかもしれません。


では、その相談窓口の告知方法を見てみましょう。
やはりパンフレットに告知している場合が80%以上ですね。次に商品、ホームページと続きます。ホームページの場合でも、メールではなく、電話でのみといった所も多いようです。やはり、直接肉声で対応が基本なのですね。


最後に、気になるクーリング・オフの期間です。
見るかぎり1週間以内のクリーング・オフが基本のようです。20日や30日ってのもあるのですね。法的対応にこだわらず、お客様のことを考えているってことなのでしょうか?クーリング・オフの延長は、「連鎖販売」を狙っている場合もあるので気を付けましょうね。
クーリング・オフはトラブルも多いらしいですが、思ったモノじゃなかった場合、消費者には必要な制度ですよね。
改めて現状を見られて如何でしたでしょうか?思っていた通りでしたでしょうか?
これは訪問販売の化粧品業者の話です。店頭販売やネットやカタログ販売の現状とは少し異るかもしれませんのであしからず。


石けんで落ちるシリコンの秘密

日焼け止めのローションやファンデーションには「シリコン」表示がされているものが多くなってきました。基本的に、専用のクレンジング剤やシリコン入りのクレンジング剤で落として頂くことを推薦します。

しかし、ここ最近、「石けんでも落ちます!」と、表示された商品が増えています。
それには・・・こんな仕掛けがあるのです。

UVカット剤に限らず、ファンデーションなどにも「シリコン」の表示がありますよね。シリコンの表示には実は2種類あるのです。
1つは、基剤としてシリコンが使われている場合
2つ目は、粉体のコーティング剤としてシリコンが使われている場合
です。・・・よく解らないですよね。順をおって説明しますね。

まず、全成分表示は、配合されている成分を(基本的に)全て表示しなくてはいけません。ですから、どんな形で配合しようと表示します。

配合の方法の1つである「基剤として」とは、
水やエタノールなどと同じように、配合成分を溶かしたり、分散させたりする為にシリコンを使った場合です。この場合、液状のシリコンに色んな成分を溶かして配合します。このタイプは、基本的に、シリコン入りのクレンジングが必要になります。

続いて、配合方法が「粉体のコーティング剤」としてとは、
紫外線を防いだりする粉体は酸化チタンや酸化亜鉛の粉です。他にも、ファンデーションに使われる顔料(色粉)なども粉です。こういった粉でかぶれる方が多かった時代がありました。そこで開発されたのが、こういった「粉」をシリコンで被膜(覆ってしまう)する技術です。シリコンで包まれていますので、酸化チタンや酸化亜鉛、顔料が直接肌に触れませんのでトラブルが激減しました。

こういった「粉をコートするシリコン」も全成分表示では「シリコン」と表示されてしまうのです。こういった「粉をコートするシリコン」だけの場合は、(最近流行りの)石けんでも落ちます!表示のタイプになります。

じゃぁ、どこで区別出来るのか?
全成分表示は基本的に配合の多い順に表示されています。ですから、上位4位までに「シリコン」、「ジメチコン」の場合は専用のクレンジングを使われる事を推薦します。