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アトピーとわたし

ここらで少し、わたし自身について語ってみましょう。
わたしが、化粧品の業界に足を踏み入れるまでは、生物学を専攻していました。俗にいうバイオですね。特にホルモン分泌器官を専門にしていました。

就職の選択肢としては、医薬品もあったのですが、化粧品を選択。
医薬品はもうしんどくてヒーヒー言っている細胞を無理やり動かすのが仕事です。一方、化粧品は、身体の新陳代謝だけでなく、精神的なケアの影響も大きく作用するので、面白いと思ったのです。

数年前に結婚していますが、嫁は重度のアトピーです。はっきり言って、市販の化粧品は使うことができません。結婚前などは、うろこ状に皮膚がぽろぽろ剥がれて大変でした。指や首筋も亀裂が走り、痛々しい限りです。

そこで、職権乱用で、嫁専用の化粧水を作ることにしたのです。シャンプーも専用を作りました。

プライベートでわたしと会った方やネットでメール交換した方にはよくいうのですが、化粧品を使うに当って最も大切なのは精神面です。アトピーは皮膚の病気であるだけでなく、精神的なことも大きな要因になっていることが分かっています。ます、自分を嫌いにならないこと。それが大切です。

「あれも、これも、わたしには使える化粧水がない(>_<)」

と、いって自分を嫌にならないで下さい。少し、知恵を付けて、自分にも使える化粧品があることを知って下さい。
クソ高いだけのややこしい化粧品ばかりがいいものではありません。自分を好きにあるために、化粧品を使いましょう。
と、いうことで、今月はアトピーや動物実験について少し語っていきたいと思います。


敏感肌とは

敏感肌の判断基準にスティンギィング反応というものがあります。定義としては、
「炎症を伴わないが、化粧品と富士に感じるヒリヒリ感・ぴりぴり感・チクチク感のこと」
と、なっています。アトピーの方の場合、その多くは、傷口に化粧水中のアルコールが沁みることが原因ですので、アトピーの方が、一般化粧水を痛くて使えないこととは別になります。見た目が正常な方が前提となります。
皮膚医学的な敏感肌の分類としては、

1:乾燥肌(乾燥症)
2:慢性の繰り返し接触性皮膚炎羅患肌
3:紫外線ダメージ肌
4:ニキビ肌

となり、やはりアトピー肌とはこなる定義をもっています。ただ、1:乾燥肌の中に、「アトピー的乾燥症」を含む場合があります。
一般的な乾燥肌とアトピー性の肌はどちらも保湿を補えば同じように思われますがそうではありません。
その違いを説明する前に、肌の構造を分かりやすくイメージ的に知って頂きましょう。

まず、肌は、「」、「」、「スポンジ」の3成分が中心になってその働きを有します。
」すなわち水分ですね。これを補給するには、水そのものの補給以外にグリセリンやブチレングリコール、ベタインなどが有効です。

次に「」ですが、これは高齢化や健康状態によって皮脂の代謝不全が起こった場合に問題が生じます。対策としては、「油」を補給するのですが、一般的には乳液やクリームが使われます。最近では乳液やクリーム剤に含まれる「乳化剤(界面活性剤)」を嫌ってか「スクワラン100%」などといった商品もあります。特に油分が不足すると、乾燥を導くだけでなく、肌のバリア機能も低下すると言われています。特に、アトピーの方は、リノール酸からリノレン酸への代謝不全の報告があります。このリノレン酸はプロスタグランジンという抗炎症に働く物質の原料です。従って、アトピーの方には、リノレン酸の塗布や摂取が有効ともほうこくがあります。

最後に「スポンジ」です。これはセラミドなどを意味します。つまり、水や脂を補給しても、それを抱え込んでくれるスポンジがなくては、「留まること」ができないのです。ですから、セラミド配合のクリームが有効です。他にも尿素
PCA-Naも同様に「スポンジ」の効果を肌に持たせます。セラミドは水にもアルコールもに溶けないので、クリームや乳液に配合される場合が多いです。また、尿素やPCA-Naは水溶性ですので、化粧水などにも配合されます。

上記で肌についてお分かりになったでしょうか?
特にアトピーの方は、リノレン酸の欠乏と「スポンジ」の欠乏の報告が一般乾燥肌とことなる点です。
どんな脂を補給したらいいのか?どんな「モノ」を補給したらいいのか?を知ると、これからの化粧品の選び方が変わるのではないでしょうか?折角の全成分表示ですから、活用しましょう。


低刺激性界面活性剤

界面活性剤の「低刺激」と一言で表現しても「脱脂力」、「肌への残存性」など様々なポイントがあります。
まず、「肌への残存性(洗浄後、角質層深くへの活性剤の残りやすさ)」や「NMFの溶出(肌からアミノ酸等の成分を溶かしだす力)」をみたとき、アニオン界面活性剤で低刺激(肌に残りにくい、NMFをやたらと奪わない)ものとして、

ラウリルリン酸Na(MAP)
ココイルイセチオン酸Na(SCI)
ココイルグルタミン酸Na(AGS)
ココイルメチルタウリンNa(AMT)
ラウロイルメチルアラニンNa(LBA)

が上げられます。皮膚浸透残留性を、石けん(脂肪酸Na)や脱脂力が強いラウリル硫酸Na(SDS)と比較する例をfig.1及びfig.2のグラフに示してみました。

fig.1  「肌への残存性(洗浄後、角質層深くへの活性剤の残りやすさ)」
・・・・・ 高いグラフ程、肌残りが多いことを示します。
以外にも、石けんは洗浄しても肌へかなり残ることがお分かりと思います。これはつっぱり感などといった形で実感されていると思います。洗浄するときには、やはりココイルメチルタウリンNa(AMT)やラウロイルメチルアラニンNa(LBA)などのアミノ酸系界面活性剤が低刺激であることがよく分かると思います。

fig.2  「NMFの溶出(肌からアミノ酸成分を溶かしだす力)」
・・・・・ 高いグラフ程、NMFを多く奪うことを示します。
水だけで洗浄した場合、肌からアミノ酸の溶出は殆どないことが分かります。一方、脱脂力的に問題視されていない石けんに比べてもアミノ酸系界面活性剤であるココイルグルタミン酸Na(AGS)が如何に低刺激であるかお分かり頂けるでしょう。

また、pHによっても肌への刺激性は変化します。ある1種類のノニオン界面活性剤を用いて、洗浄時のpHを変化させて「NMFの溶出(肌からアミノ酸成分を溶かしだす力)」を比較すると、弱酸性での洗浄が如何に低刺激であるか分かる(fig.3)。また、同じ実験でセラミドの残量をfig.4に示しました。セラミドが多く残っている方が低刺激と言えるでしょう。

fig.3  「NMFの溶出(肌からアミノ酸成分を溶かしだす力)」
・・・・・ 横軸に洗浄時のpHを示しました。高いグラフ程、NMFを多く奪うことを示します。
pH4〜6が一般にいう弱酸性にあたります。同じ界面活性剤を用いても、弱酸性では低刺激であることがお分かりになると思います。また、アルカリ側(pH10以上)で洗うと、肌の必要な成分まで多く奪われるのです。

fig.4  「洗浄後、肌にセラミドが残っている量」
・・・・・ 横軸に洗浄時のpHを示しました。高いグラフ程、多くのセラミドが溶け出さずにすんだことを示します。
pH2などで洗った場合、肌に残っているセラミド量は多いです。しかし、pH2は弱酸性ではないので、違った面で肌に刺激を与える可能性があります。やはり、弱酸性であるpH4〜6での洗浄が、低刺激と言えるでしょう。

こういったデータは資生堂や花王、ライオン、コウセイなど様々な大手化粧品メーカーが発表しています。これらのデータは、自社の原料や製品をより売り出したくて発表されたものではなくより安全に使って頂くために、日ごろの噂に流されて欲しくないために発表されたものです。

注意として、決して石けんを否定しているわけではありません。健康な肌の方には化粧品で使われる洗浄剤は問題ないです。
ここの表記は、アトピーや敏感肌の方が、噂に惑わされないための1つの知識として読んで頂けますと幸いです。


動物実験について

<<<はじめに>>>
少々長いですが、最後まで読んで頂きたいです。

<<<本文>>>
西ヨーロッパを中心に化粧品の開発に関して、動物実験の中止 が叫ばれています。数年後にはヨーロッパでは前面中止になる予定です。

「ああ、よかった!」

そう、思われた方は多いのではないでしょうか?本当に、これは良かったことな のでしょうか?

動物実験は、化粧品や化粧品に使われる原料の刺激性や効果をみるために行われてき ました。眼刺激を確認するために、ウサギの目に成分を入れてその充血具合や角膜の損傷具合で安全性を確認したり、マウスの毛を剃って露 出した肌に成分を塗り、ガン化しないか被れないかを確 認したりすることは有名でネットの中でもその映像をみたご経験のある方もおられる でしょう。他にも、成分を食べさせて、どのくらい食べても死 なないかを確認する毒性試験などもあります。

そこまでハードなものでなくても、マウスの毛を剃って育毛剤成分を塗って毛が生え るか確認したり、UVカット剤を塗って紫外線ランプでわざと日焼けをさせて、UVカッ ト剤の効果を確認する試験もあります。

こういった動物実験を中止しようという動きは世界的に広まっていますが、その一方で反対する意見もあるのです
それは、今まで動物実験で行われてきた安全性確認や効果性の確認に替わる実験 が確立させていないからです。

では、どういった試験に替わるのでしょうか?

眼刺激試験
ウサギの目に滴下し、その充血や角膜の損傷で確認

有精卵の黄みに滴下して、その血管の変化と膜の損傷で確認

皮膚刺激試験
マウスやウサギの肌に塗布して確認

培養細胞や赤血球の入った溶液に成分を添加して損傷を確認

UV防御試験
マウスの肌にUVカット剤を塗り、そこに紫外線をあてて確認

人工膜にUVカット剤を塗って、そこに紫外線をあててどれだけ膜を透過したかで確認

育毛効果試験
マウスやウサギの毛を剃って、育毛成分を塗って確認

培養細胞(培養器官)の入った溶液に育毛成分を添加して確認

例えば、美白や発毛の試験は培養細胞で一応確認できま す。しかし、培養細胞は角質層や血管を持たないので「実際の皮 膚に塗布した場合と同じではない」というのが研究関係では常識です。動物 実験の即時中止に反対する人達はこのように、「化粧品の安全 性が確認できなくなる」として訴えています。

「化粧品なら人が使うのだから、ヒトで確認したらいいじゃない!」
と、思った方はおられるでしょうね。

では?どんなヒトがその実験に参加するのでしょうか?

コンタクトレンズ1つ作るにしても眼が必要です。誰の眼を使うのですか?あなたで すか?
こういった実験に進んで自らをささげるヒトはいないでしょう。実際には貧しかったり、十分な教育や説明を受け ていなくて騙されて「試験承諾」させられたヒトなどがこういった試験の対 象になるのでしょう。

実際に、UVカット剤の効果試験も最終的に商品化され市 販される前にヒトで試験をします。その試験は、背中にUVカット商品を塗って、紫外 線ランプで人工的に日焼けさせて確認するのですが、当然日焼けするまで焼くわけで す。幾つかの商品を同時にしますから、試験後の背中はタイル状に日焼けの後が残 り、ヒトによっては2年も消えません
こういったUVカット化粧品の効果性の試験は、試験機関に依頼して行います。依頼を 受けた試験試験は、特に日本人でやって欲しいとの指示がない場合、アメリカの 囚人を使ってこの試験を行います。それが現実。

「囚人なら・・・」

と、うかつに思わないで下さい。囚人を使うのは、人件費削減のため。他に、人件費 を削減できる「ヒト」がいれば・・・。

動物実験が数年後に中止されます。それは、諸手を上げて喜ばれること・・・でしょ うか?


アトピーと油について (ちょっと持論付き 苦笑)

ネット上でも口コミでも玉石混合のアトピー情報。医療の面と民間療法の面で意見が異なります。
まず、わたしもわたしの嫁(重度のアトピー)もステロイドをずっと使用することを推薦は致しません。しかしながら、全く使わず民間療法に頼りきるのも賛成できません。

結論からいいますと、上手にステロイド剤を使いたい!そう思っています。

アトピーは心理面の影響が大きいながらも一種の皮膚病です。乾燥肌や敏感肌とは全く異なります。
化粧品屋をやるにあたって、
「少しでも薬剤を使わないでいられるように!」
と、いうのがわたしの願いです。
嫁のアトピーは一生治らないでしょう。なら、付き合っていくしかない訳です。ですから、わたしはそういった方にも使って頂ける化粧水を作りたいのです。

気温が安定したら、アトピーの方も化粧水とオイルで十分です。特にひどくない場合は、やたらと薬に頼りません。しかし、季節の変わり目や体調やホルモンバランスを崩したときは、大きく肌が悪化します。そういった時には、3日を基準にステロイド剤を使います。どんな濃度の薬をどこ(身体なのか顔なのか)に塗るかは医者と相談します。3日しても改善の見込みがない場合、それでも3日したら一旦ステロイド剤の塗布はやめます

他にも、プロトピック剤を使っている方もおられるでしょう。そういった方も、同じです。

脱ステロイド、わたしの嫁もやりました。医学的には「リバウンド」を認めていない意見もあります。ステロイドによる色素沈着も認めていない意見もあります。わたしも科学を扱う研究員として、そういった意見は分かります。科学も法と同じで、「黒と言えない灰色は白とする」のです。
しかし、・・・そんな奇弁に納得出来る訳もありません。現実問題として、リバウンドも色素沈着も存在します。それを無視する意見には賛同出来ません。
ああ、こんなことを書き始めると止まらないので、今回の話題に行きましょう(汗)

今回は「油」のお話です。

アトピーや敏感肌の方の痒みの原因として、いままでは「乾燥が原因だから保湿剤を塗ればいい!」と、思われてきました。
しかし、ここ数年で、それだけでは不十分であることが分かり、リノレン酸肌常在菌のバランスが着目されています。

特に、アトピー体質の方は、リノール酸からγ-リノレン酸への代謝が不全であると言われています。
このリノール酸は取り込まれるとリノレン酸になり、更に代謝されてリノール酸→γ-リノレン酸→・・・→プロスタグランジンとなります。このプロスタグランジンが肌質の改善に繋がるのです。
現在、この代謝が不全な方として、アトピーの方やアルコールを過剰に摂った場合、老化、肥満、高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病がある場合が上げられています。

このリノール酸もリノレン酸も自分の身体で作り出すことの出来ない「必須脂肪酸」になります。
一時、健康ブームでリノール酸の摂取が推薦されましたが、事実上、アトピーの方の肌質改善効果は低かったようです。
それは、いくらリノール酸を摂取してもγ-リノレン酸に代謝できないから、先にあるプロスタグランジン・・・肌改善と繋がらないのです。

そこで、最近はγ-リノレン酸を直接摂取することを薦めています。このγーリノレン酸は、食べても肌に塗っても吸収されます。
ただ、かなり酸化され易いので扱いが困難です。食べるときなど、加熱すると「魚腐敗臭」を感じる方もいます。

このγーリノレン酸を多く含む天然油として「ローズヒップ」、「月見草油」、「ボラージ油」、「モルティエレラ油」などがあります。

ローズヒップや月見草は有名ですね。ボラージとは和名で「るりちしゃ」と呼ばれ、蒼い星型の花をつけます。モルティエレラ油とは、ブドウ糖から菌発酵で作り出した油です。

γ-リノレン酸の含有量は、月見草油で約8.8%程度で、ボラージ油(るりちしゃ油)で22.8%、モルティエレラ油では約8.3%という報告があります。こうみるとボラージ油(るりちしゃ油)が最も多くのγーリノレン酸を持っていることが分かります。
しかしながら、先に述べましたようにγーリノレン酸は酸化されやすいのです。そういった面では、モルティエレラ油は製品として0.03%ビタミンEを加えることでオリーブ油なみの酸化性能に向上できる(酸化しにくくなる)ので扱い易いです。

モルティエレラ油を実際に手に塗布すると、初めは重い感じで伸びますが、やがて肌に吸い込まれるように吸収されます。匂いも殆どありません。

わたしとしては、このボラージ油(るりちしゃ油)やモルティエレラ油はこれからの着目の原料だと思っています。


イオン導入によるビタミンCの浸透性評価

ビタミンCを配合した化粧品が多く出回っています。美白ではコウジ酸が発ガン性の疑いありとの厚生労働省の指導のもと、使えない状態になったのでいっそう化粧品業界はビタミンCに走りました。

また、エステや美容器具の業界でも「イオン導入器」なるものがもてはやされています。ネットや雑誌では数々の器械が紹介、販売され、実際に使っておられる方もおられるでしょう。
使ってみでどうでしょうか?

「ピリピリくるから電気が流れていることは確認できる」
と、言った状態でしょうか?

「実際に、肌のキメが綺麗になった」
「ニキビが改善できた」
などといった回答もあるでしょう。

でも・・・
本当にビタミンCが肌に入っていくの?

と、思った方も多いでしょう。

この度、株式会社日本天然物研究所が発表した「ビタミンCのイオン導入の報文」を入手しましたので、ここでご報告致します。
このサイトを閲覧されている方の多くは、専門的な方ではないと勝手に判断して、非常に簡単にまとめてみました。では、ご覧下さい。

<<<試験方法>>>
使用動物:マウス
ビタミンC濃度:0.1%
条件1:単純に塗布するだけ(10分間)
条件2:イオン導入器を用いた場合(20秒間)

<<<結果>>>
条件1−1
単純に塗布した場合の表皮へのVCの取り込み

←→ 条件1−2
単純に塗布した場合の真皮へのVCの取り込み

条件2−1
イオン導入器使用での表皮へのVCの取り込み

←→ 条件2−2
イオン導入器使用での真皮へのVCの取り込み

分析としては、単純塗布した場合の、表皮へのビタミンCの取り込み(条件1−1)と真皮へのビタミンCの取り込み(条件1−2)と、イオン導入器を用いた場合の、表皮へのビタミンCの取り込み(条件2−1)と真皮へのビタミンCの取り込み(条件2−2)に分けてグラフ化しました。

グラフの縦軸をまず見て頂きたいです。条件1(単純に塗布)した場合に比べて、条件2(イオン導入器を使った場合)は10倍となっています。単純にみて、やはりイオン導入器を使った方が多く浸透することが分かります。

では、細かく見て見ましょう。

表皮の場合、器具を使わないと3時間後に浸透のピークがあり、器具を使った場合は30分後にピークがきました。
真皮の場合、器具を使わないと6時間後に浸透のピークがあり、器具を使った場合は1時間後にピークがきました。

これは、単純に塗布した場合、時間をおう毎に表皮から真皮にビタミンCが浸透していること、イオン導入器を使った場合、30分後には浸透が開始され、1時間後に更に顕著に浸透したことを示します。
浸透量の差は、大雑把でも30倍はあります。

<<<個人的感想>>>
わたしは、化粧品屋ですが、器具屋ではありません。実際にどういう風に化粧品が使われるのかは購入者次第です。また、このデータは単純にビタミンCだけを希釈して使っています。化粧水の場合、多くのイオン性の物質も混在しますので、単純に同じ結果にならないことと思って下さい。
しかしながら、思った以上に肌に入っているのだと思いました!


エキスの抽出と温度

最近では、個人で生薬を購入してエキスを作っておられる方が多くなっていますね。
そんな皆さんはどの様な条件で生薬の抽出を行っておられるのでしょうか?
一般的には、エタノール水溶液での抽出か、BG(1,3-ブチレングリコール)水溶液での抽出が主でしょう。その濃度や温度などはどのような条件がいいのでしょうか?
そこで、今回は、当たり前の実験を目に見える形で体験的に行ってみました。

使用生薬:珈琲
抽出溶媒:水


です(笑)。いや、単にわたしがすご〜い珈琲好きなものなので、ちょっと実験です。
今回の実験の目的は「抽出温度の違いでどんなことが起こるのか?」です。

つまり、
条件1:高い温度で抽出する
条件2:中ぐらい温度で抽出する
条件3:低い温度で抽出する

の3条件をやってみました。
ただの珈琲好きの実験だとバカに思わすに最後までご覧下さいね。
先ほど言いました通り、わたしは珈琲好きです。色々な珈琲メーカーを持っています。今回使用したのが、

条件1:高い温度で抽出する  

条件2:中温度で抽出する  

条件3:低い温度で抽出する

条件1として、サイフォンタイプ。
よく珈琲専門店などでお店の方がポコポコやっておられるアレです。沸騰した状態で抽出出来ます。今回の抽出時間は、沸騰後1分間抽出しました。
条件2として、金属フィルターを使ったドロップろ過タイプ。
一般の家庭では、紙を使って上からお湯を注ぎますよね。それの紙→金属フィルタータイプです。上からお湯を注ぐ分サイフォンよりは低い70℃くらいの抽出になります。
条件3として、水出し抽出タイプ。
室温の水で3秒に1滴程度で一晩かかりで抽出します。


以上の条件で珈琲を抽出して、そのまま室温で2時間以上放置します。当然、珈琲エキスは空気に曝される訳です。そこには酸化現象が想像出来ますね。では、結果です。

下の図が2時間放置した後に、透明のガラスカップに珈琲エキスを入れてみました。濁りの具合が分かる様に、白い紙にマジックで3本の線を引いて。その上に置いてます。


一番が条件1、真ん中が条件2、一番が条件3です。
見て直ぐにお分かりでしょう。高温で抽出するに従って濁りがひどいですね。

これは、同じ抽出溶媒(今回は水100%)でも何℃で抽出するかで何が出てくるかが変わるのです。水だし珈琲(条件3)の場合、このまま3日置いても濁りは生じません

珈琲は冷ましても直ぐには濁りません。つまり、濁りの原因は、高温で溶けていたモノが低い温度になって溶けきれずに出てきた訳ではないのです空気酸化の影響を受けて濁っているのです

生薬の抽出も同じです。同じ溶媒で抽出しても、どのくらいの温度で抽出したかで、出てくるモノが異るのです。高温で抽出した方が、色々な成分が抽出されます。特に生薬の場合「煎る」という工程で抽出される場合がありますから、高温でも大丈夫かな?と、思われるかもしれませんが、注意が必要ですね。


冬虫夏草エキスについて

冬虫夏草という漢方薬
冬虫夏草、その名を目にしたことはおありだと思います。さて、何と読まれましたか?
「トウチュウカソウ」
これが正解です。「なぁ〜んだ、ひねりもないなぁ」と、思われたでしょうか?

この冬虫夏草、モノは何だと思われますか?そう、きのこの一種なのです。中国では、霊芝(レイシ)、麦角(バッカク)などに並ぶ有名なきのこです。さて、ではこのきのこの名はなんでしょうか?そう「冬虫夏草茸」です。
では、再度質問です。何と読みますか?
正解は「フユムシナツクサタケ」です。

余談はこんなとこにしまして、本題に入りたいと思います。
冬虫夏草には滋養強壮などの体調を復活させる働きがあることは、栄養ドリンクなどに添加されている例からも想像できるでしょう。しかし、この冬虫夏草、ここ数年かなり医学的に注目されているのです。

まずは、糖尿病患者に使用した場合、血糖値の正常化がみられました。この「正常化」というのがミソです。
糖尿病患者によく使われるのはインシュリンですね。インシュリンは高くなった血糖値を下げてくれます。しかし、低い血糖値状態で更に加えると、もっと血糖値を下げ、大変なコトになります。
しかし、この冬虫夏草、高い血糖値を正常値に下げ、低い血糖値は正常値よりも下げないらしいのです。

また、臓器移植の時に使われる免疫抑制剤として有名なシクロスポリンA(CsA)やKF506と同様に免疫抑制効果がきたいされる物質を含むとの報告もあります(冬虫夏草内にCsAやKF506があるのではなく、同じようにT細胞に働きかけ免疫抑制をする物質ISP-IやFTY720があります。作用点は異なります。)。
この医学で使われる免疫抑制剤で上記にも記しました通り、FK506というものがあります。一瞬聞きなれない成分名ですが、別名タクロリムスといい、プロトピック軟膏の有効成分です。

プロトピック軟膏は、1999年に承認された新しいアトピーの薬です。ステロイド剤とは違った働きでアトピーを緩和します。プロトピック軟膏は、その主成分タクロリムスの働きによって、過剰な免疫反応を抑制することでアトピーを抑えます
このタクロリムスの働きと冬虫夏草の免疫抑制の働きはよく比較されます。冬虫夏草を使用した化粧水は、また、新たな形で敏感肌用として期待されるのではないかと思っています(臨床データはないです。)。

敏感肌の原因の1つは免疫の過剰反応です。古来から使われている漢方薬は経験上色々な有効成分が入っていることが分かっているのでしょう。

嘗ては「イメージ」や「トレンド」であった生薬化粧水も、科学のメスが入り、徐々にですが、「働き」のある化粧水へとなっていくのでしょう。


UVカット化粧料について

SPFという言葉を耳にしだして久しいと思います。夏場や冬場でもスキーをやる際に、UVカット化粧料をお使いと思います。このSPFという数値、見てお分かりの通り、数値が高い程紫外線から肌を守ってくれるのです。

しかし、3年ほど前に、国際協定的な形で、SPFの上限が定められました。上限は50です。
それ以前は100とか160なんてバカみたいな数値も表記されていました。

SPF100とは、日に当って普通の人が日焼けで赤くなるまでの時間の100倍の時間赤くならないですよぉ〜、と言う意味です。海やスポーツ時を除けば、この普通の人が日焼けで赤くなる時間は20〜30分といわれています。つまり、SFP100とは、50時間日焼けません!と、いうことなのです。丸2日ですよ。

でも、実使用では、試験で確認しるよりも塗る料が薄く(少なく)なります。また、汗をかいてUVカット剤が流れ落ちたりします。ですから、事実上SPF100などは不可能なのです。
試験でいくら結果が出ても、意味のないところで、誇張して宣伝して売りさばくのは問題がある!として、上限が50と表記になりました(正確には50+となっていると思います)。

UVカット剤には大きく2つに分かれます。SPF30以下の日常紫外線防御剤と、SPF30以上のスポーティータイプです。しかし、一般の方がそんな区別をして使っているとは思えないのですが・・・。

ついでに、紫外線防御の方法を述べましょう。方法は2つあります。
1つは、紫外線反射剤の起用。これは文字通り当った紫外線を反射若しくは拡散させて皮膚への進入を防ぎます。
具体的には、酸化チタンや酸化亜鉛がそれに当ります。

ここで注意なのですが、名のある化粧品会社の使っている酸化チタンや酸化亜鉛には細工があります。それは、シリカなどの無機物でコートした酸化亜鉛とかを使っているのです。

チタンは指輪の原料以外に、車の排気ガス中の一酸化炭素の除去など酸素に関わる触媒作用を持ちます。もし、直接酸化チタンが肌に塗りこまれたら、紫外線を受けることで、逆に肌を酸化する可能性もあるのです。そこで、シリカなどでコートすることで、そういった危険性をなくしています。
また、亜鉛はご存知の通り殺菌作用があります。まぁ、軽い毒性があるのですね。それも、肌には直接つけたくないですよね。そこで、シリカでコートしているのです。

ところが・・・、この酸化チタン!意外なところにも使われています。それは、錠剤の薬です。
詳しくはないのですが、そういった錠剤の酸化チタンは光にさらされることを前提としていないので、シリカのコートがされていない可能性があります。

なぜ、ここでこういったことを述べるかといいますと、最近、手作り化粧品にビタミンを添加したく思った人が、薬の錠剤を化粧水に溶かし込むと、いったことを耳にしたからです。まぁ、錠剤でなければ(液剤ならば)酸化チタンは含まれないでしょうし、たとえ溶かしても沈殿してしまうようにも思いますが・・・。

お勧めできません!!

話を戻しましょう。
もう1つの紫外線防御剤は、紫外線吸収剤といいます。
その名の通り、紫外線のエネルギーを自ら受けて、吸収します。ただ、吸収しきると、自分が崩壊します。
この崩壊して出来た副産物が肌にいいのか悪いのか?その判断に困ることと、紫外線反射剤と違って、自らが崩壊するのですから、持久力がありません。
そういった面から、自然派を謳う化粧品会社では、「紫外線吸収剤無添加」なとど表記しているのです。

最後に、
日に肌をさらすと、3分で光老化が始まるという報告もあります。お肌のキメの細かさは、如何に紫外線から肌を守るか!に、かかっています。きちんとしたケア、やっていきましょう!


化粧品広告について

様々なデマや間違った表現が横行している化粧品業界にメスが入りました。
平成15年4月14日付けで日本化粧品工業会から「化粧品・薬用化粧品等に関する広告表現ガイドラインにつて」の報告がありました。簡略して表現しますと、以下のようになります。
美白化粧品につて、「薬用化粧品(医薬部外品)における美白表現の範囲」及び「一般化粧品における美白表現の範囲」の広告表現ガイドラインが平成15年4月7日に開催された広告宣伝委員会で承認されました。

これによりますと、
「美白効果」、「ホワイトニング効果」等は、薬事法による承認を受けた効能効果ではないので、表現の制限をする。表現できるモノとして、

*「メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ」又は「日焼けによるしみ・そばかすを防ぐ
メーキャップ効果により肌を白くみせる効果である。
美白・ホワイトニング等の表現は「日焼けによるしみ・そばかすを防ぐ」場合にのみ使用できる。

逆に、使用できない表現としては、
$1肌本来の色そのものが変化するような表現。
$2できてしまったしみ、そばかすをなくすような表現。
$3「最も」とか「一番」などの最大級的な表現の使用。

表現できない」実例をあげてみましょう。

$1の例としては、
使えば使うほど肌が白くなるホワイトニング効果
「肌白くなった、白さ実感」
あれ、肌が白くなった?この時から
「白の加速、最短12時間で、今いちばん会いたい白に。その美しい白さが実感できます。」

$2の例としては、
できてしまったシミ、ソバカスの美白に
「20代でできた目の下のシミを、30代でなくすことができる」
10年もあったシミがこんなに薄くなるなんて
「シミ・ソバカス・クスミ・黒ずみにサヨウナラ」

$3の例として、
早い人なら2週間で白さ実感」
「シミ・クスミが目立たなくなり美白効果を実感」
美白成分が2倍浸透する美白美容液(当社比)
「美白の概念をくつがえす歴史的美白の誕生」
などです。

良い化粧品屋と悪い化粧品屋の差など使ってみないと分かりません!などという事はないのです
キチンと内容成分に自信のある化粧品屋はこういった法的にストップのかかった表現をしていません。

先日、ネットサーフィンで某化粧品屋のサイトをみていましたら、
「ビタミンC誘導体は、合成界面活性剤だ」
「商品の酸化を防ぐ為に、防腐剤を使っています」
などと、全くもって間違った表現を使っている化粧品屋サイトを見受けます。過去にも「パラベンを乳化剤」と表現して指摘されたサイトもあります。
キチンと知識ある化粧品屋の化粧品を使うのが、トラブルを避ける1つの方法ですね。


ビタミンCの裏話-前編

今回から美白化粧品について少しお話致しましょう。
まず、「美白」という言葉を使える化粧水は全て医薬部外品(以下、部外品)になります。この部外品は化粧品よりも効果が高いモノです。しかしながら、日本の法律上、化粧品は全成分表示になっているのに、部外品は表示義務がないのです。ですから、「何が入っているのか?」については、実際、購入する側では分からないのが現実です。

美白化粧水の有効成分の主なモノはビタミンCアルブチンなどです。嘗ては、プラセンタエキスコウジ酸も美白の有効成分でしたが、安全性の問題から今は使われていないのが現状です。

今回は、このビタミンCについて少しお話致しましょう。

ビタミンCは確かに美白化粧水の有効成分です。しかし、実際にビタミンCを入れている化粧水はまずないでしょう。では、何を入れているのか?正確に言えば、ビタミンCの塩または一部修飾を受けたビタミンCなのです。

「なぜ、直接ビタミンCを入れないのか?」

そういった、疑問は多いに生じるでしょう。それは、ビタミンC自体に問題があるからです。

ビタミンCの働きを非常に簡単に言えば、「自らが酸化されることで、メラニンを造らせない」と、いうことです。つまり、作用すべき所(細胞やメラニン付近)にまでビタミンCが行ってから、そこで酸化される必要があるのです。

ところが、ビタミンCは非常に酸化され易いので、極端な例では、化粧水の中で勝手に酸化されてしまって、折角塗っても肌では既に役立たずになっている場合があるのです。
そこで、ちょっと酸化され難い形で、ビタミンCの塩または一部修飾を受けたビタミンCが使われます。

では、実例を上げましょう。

部外品の有効成分として使われるビタミンCの塩または一部修飾を受けたビタミンCは、
アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸グルコシドの3つが主です。
では、この3つの特徴について、説明します。

アスコルビン酸ナトリウムは、ビタミンCのナトリウム塩タイプです。最もビタミンCに近い形といえます。ただ、化粧水の条件として弱酸性では安定しません。つまり、化粧水はアルカリ性である必要があるのです。

続いて、アスコルビン酸リン酸マグネシウムです。
これは、ビタミンCにリン酸を付けたタイプのマグネシウム塩タイプです。アスコルビン酸ナトリウムと比較して酸化されにくい形状をとっていますが、やはり安定するpHはアルカリ性となります。つまり、使われている化粧水はアルカリ化粧水ということになるのです。

最後に、アスコルビン酸グルコシドです。
ビタミンCに糖を付けたタイプです。ビタミンCに比べ、熱、光にも強く、酸化されにくい形です。最も特徴的なのは、弱酸性でも安定していることです。つまり、使われている化粧水は弱酸性なのです。

アルカリ性の化粧水?良いのですかね?わたしなら、やっぱり弱酸性の化粧水を選びたいものです。しかし、美白化粧水が部外品である以上、内容物の表示はないわけです。添加されているビタミンCが一体どんなタイプのモノなのか?化粧水がアルカリ性なのか?弱酸性なのか?企業の表示がないと、分からない訳ですよね。
美白、美白と喜んで購入しているあなた!落とし穴に注意ですよ。


ビタミンCの裏話-後編

アスコルビン酸グルコシドとは、ビタミンC(つまりアスコルビン酸)に糖(グルコシド)が付いた形です。
アスコルビン酸グルコシドとは、単純なビタミンC(アスコルビン酸)に比較して、熱、光にも強く、酸化されにくい形であることは前回に述べました。では、「酸化されにくいのに、ちゃんとビタミンCとしての働きをするのか?」と、なりますよね。
答えはNoです(苦笑) アスコルビン酸グルコシドは ビタミンCとしての働きを持っていません

では、どうしてアスコルビン酸グルコシドが美白化粧水の有効成分としてビタミンC扱いされるのでしょうか?
答えは、アスコルビン酸グルコシドの糖の部分(グルコシド)が切れて初めてビタミンCの形になり、そこからビタミンCとしての働きを有するのです。つまり、

アスコルビン酸グルコシド→アスコルビン酸(ビタミンC)+グルコシド

になる必要があるのです。

では、どうやって、アスコルビン酸グルコシドがアスコルビン酸(ビタミンC)+グルコシドになるのでしょうか?
それは「酵素」の働きです。グルコシドを切る酵素をグルコシダーゼといいます。肌にアスコルビン酸グルコシドを塗布した後、グルコシダーゼが働いてアスコルビン酸グルコシドがビタミンCとなるのです。

「なる程!化粧水の中ではアスコルビン酸グルコシドの形で酸化されない状態で添加しておいて、肌に塗布した時に、グルコシダーゼの働きでビタミンCの形になって、美白効果を有するんだぁ!」

はい、その通り。しかし、ココからが化粧品屋の独り言の本題!

「では、肌にグルコシダーゼがあるのですね!?」
と、問われると・・・。誰も回答できないのですよね。本当に塗布された肌の上にグルコシダーゼがあるのかどうかきちんとし回答はないようです。

「じゃぁ・・・え?」
そうです。「え?」なのうです(笑)

「じゃぁ、グルコシダーゼ入りの化粧水を後から塗ったらいいんじゃないの?」
と、頭のいい人は思うでしょうね。
ところが、それも上手くはいきません。
グルコシダーゼという酵素は、基質特異性が低い酵素なのです。まぁ、簡単に言えば、別にアスコルビン酸グルコシドじゃなくても、やたらめったら何でもグルコシドを切ってしまうのです。
当然、身体の中や細胞の中には糖(グルコシド)が引っ付いている方が都合のいい話もある訳でして、多量のグルコシダーゼを肌に塗布した場合、何が起こるか分からない・・・と、なります。
一長一短にいかないものですね。

次回は、ビタミンC以外の美白成分であるアルブチンについて斬ってみましょう。


アルブチンの裏話-前編

嘗て、美白やシミの改善として、ハイドロキノンという物質が使われた時代がありました。今でもハイドロキノンはアメリカでは使われていますが、日本では皮膚の一時刺激や感作性等の問題、更にモノが不安定であることから使用されなくなって久しいです。

特に化粧品原料としては使用の禁止となりましたが、全成分表示以後、「何を添加しているかを表示したら、何を入れてもいい。ただし、安全性については国の管理する点ではなく、会社として責任を持つように」と、薬事法が改正されたため、ネット上で一部の企業でアメリカ産の化粧品(ハイドロキノン配合)を販売しているようです。しかし、日本の化粧品メーカーが再びハイドロキノン配合の化粧品を作ったという話は聞いていなません。また、おそらくこれからも使わないでしょう。

美白成分である、アブルチンはコケモモ等の植物の葉などに含まれており、美白を謳う医薬部外品の化粧水の有効成分になっています。
アルブチンの安全性については、培養細胞(B16メラノーマ)等で十分に検討されています。
しかし、その構造は、上記に述べたハイドロキノンにグルコースを付けた形なのです

ここで少しハイドロキノンにつて、豆知識です。
ハイドロキノンと聞いて、知見の高い方の一部は「白斑を起こさせるモノ」との認識があるかもしれません。白斑とは、皮膚の一部が真っ白になって黒ぶちならぬ白ぶちになるのです。黄色人種である日本人の場合、白い斑点が顔にあったらおかしいでしょう。(白人は別なのかな?)

嘗て、皮膚の色素沈着を軽減する目的で昭和20年代にハイドロキノンは化粧品にも使われていました。しかし、その時にハイドロキノン類似物質であるハイドロキノンモノベンジルエーテルが半永久的に白斑を起こさせたこととが大きく報じられました。そこで、実際には強烈な白斑を生じさせる力がないにも関わらずハイドロキノンも使用が禁止されることになったのです。

話戻って、アルブチンです。アルブチンはハイドロキノンにグルコースがついた形です。その働きもハイドロキノンと異なります。アルブチンは、チロシナーゼ活性の低い状態(メラニンを作る能力が低い状態)にある正常な細胞では働かず、紫外線を受けてメラニンを作ろうとしている細胞に働きかけて、メラニン生成を抑制します。また、細胞毒性もハイドロキノンの1/300と非常に低いです。まぁ、ハイドロキノンとは似て非なる物質ですね。

皆さん、前回にお話しました、アスコルビン酸グルコシドの話を覚えていますでしょうか?アスコルビン酸グルコシドがビタミンCとして働く為には、肌に塗布された後に、糖を切る酵素(グルコシダーゼ)の働きが必要だという話です。そして、そのグルコシダーゼは基質特異性が低く、やたらめったら糖を切るって話です。

「え?」

そうですね。肌に塗ったアルブチン。ちゃんとアルブチンとして働いてくれているのですかね?個人的には、将来的にはどうなるかちょっと不安ですが・・・。


アルブチンの裏話-後編

アルブチンは、ベンゼン環に水酸基が付いたもの(フェノール)に糖(グルコシド)が付いたものです。と、一言で言っても2種類存在することをご存知でしょうか?
1つは「α−アルブチン」、もう1つは「βーアルブチン」です。このαとβの違いは糖(グルコシド)の結合の仕方の差なのです。

一般的にウワウルシなど自然界に存在するアルブチンは皆「βーアルブチン」になります。従って、殆どのアルブチンの紹介でわざわざ「β−」などとつけることはありません。しかしながら・・・最近、ネットや化粧品業界で「アルファアルブチン」という言葉をちらほら目にします。

アルブチンはご存知の通り美白化粧水(医薬部外品)の有効成分です。その特許は資生堂が持っています。もう少し正確にいうなら「βーアルブチン」の特許を持っているのです。勿論、医薬部外品しての有効成分も「βーアルブチン」になります。
そんな中、DHCが「アルファアルブチン」なるモノを出してきたのです。このことはちょっとしたスリルモノだと考えています。
なぜなら、「資生堂の特許」にかからないのか?ってことです。

資生堂は特許申請の時に「βーアルブチン」で提出して、美白効果も「βーアルブチン」で示していますので、医薬部外品の有効成分も「βーアルブチン」な訳です。そこに出されたDHCの「アルファアルブチン」!
勿論、厳密な意味で資生堂の特許には掛からないと思われます。また、正確な意味で「医薬部外品の有効成分でもない」訳です。

そこのところは、DHCさんも認識されていまして、「アルファアルブチン配合!」と謳っても「美白」の文字は表記していません。
しかし、一般市場のアルブチンに対しての認識はやはり「美白」な訳です。「α」だの「β」だのってのは記号ぐらいにしか認識していないでしょう。脱特許の手段として上手いと言えば上手い訳ですが・・・。き、きわどい!ってのが感想です。

因みに・・・。ここ数回で何度もお目見えしている糖を切る酵素である「グルコシダーゼ」。勿論、肌の上に存在しているのかは不明ですが、細胞の中には存在しています(生理的に必要ですからね)。とことが、そのグルコシダーゼにも2種類ありまして、「α-グルコシダーゼ」と「βーグルコシダーゼ」といいます。
そう、上の話と同じです。「α」の形で結合している糖を切るのがα-グルコシダーゼです。

ところが、上記ですこ〜しだけ触れたのですが、天然界に存在する有効な糖の結合の殆どはα結合です。従って、細胞内で分解する酵素として存在しているのはα−グルコシダーゼな訳ですよね(β−グルコシダーゼもあるかもしれませんが、殆どαタイプです)。

つまり・・・。βーアルブチンの糖(グルコース)はα−グルコシダーゼでは切れませんので、「βーアルブチン」はそのまま美白の成分として働くと思われます。しかし、α-アルブチンは・・・切れないのかぁ???

切れたら・・・(前回の話参照)

最後に、一言。細胞内にβーグルコシダーゼが全く存在しないとも思いがたいのです。また、pHや何らかの刺激でβ結合も切れる可能性もあるのですよ!


ソウハクヒエキスについて

植物由来で、美白効果が期待されるモノが多くあります。具体的にはウワウルシに含まれるアルブチン、マメ科のタラから精製されるエラグ酸、起源をモミの木とするルシノールなどが有名でしょう。
他にも多くの有効な植物エキスがありますが、今回はソウハクヒ(桑白皮)エキスについて少し斬ってみます。

ソウハクヒエキスとは、その名の通り、桑由来です。その名の通りに美白が期待される植物エキスでして、美白化粧水の添加剤として使用されている例も多いです。
ところが、ちょっとこのソウハクヒエキス、癖があるのですね。

ソウハクヒは単体では美白などに有効です。しかし、美白以外に複数の働きを有しています。その1つに「グルコシダーゼ阻害」があります。

グルコシダーゼとは、(何度も紹介していますが)ある成分から糖(グルコシド)を切り取る働きを持つ酵素です。その働きを抑制するとは、「グルコシドが切れはなされるコトを抑制する」ってことです。

以前に、美白化粧水(医薬部外品)の有効成分である「アスコルビン酸グルコシド」につてお話ししました。アスコルビン酸グルコシドは、ビタミンC(アスコルビン酸)と比較してかなり安定です。しかし、美白効果を出すには、グルコシドが切り離される必要があると説明したと思います。

そうです!アスコルビン酸グルコシドとソウハクヒエキスを一緒に入れるコトはタブーなことではないのでしょうか?

医薬部外品は化粧品のように全成分表示はされていませんので、その内容成分について詳細は不明です。しかしながら、添加剤としての植物エキスの紹介があったりましす。ぜひ、注意しておいて下さいね。

因に、美白の有効成分がアスコルビン酸リン酸マグネシウムアスコルビン酸ナトリウム、若しくはアルブチンならソウハクヒエキスと一緒でもなんら問題はないでしょう。グルコシドが関与しませんからね。逆に、アルブチンの場合、グルコシドが切れる方がハイドロキノン化して怖いので、ソウハクヒエキスが配合されている方が魅力的かもしれませんね。

最後に、ソウハクヒエキスは、美白以外にも発毛の分野でかなり有名な成分でもあります。ソハクウヒエキスを初め発毛に慣用する多くの植物エキスにはある特定の成分が入っていそうなのです(秘密ですがね)。それは化粧品業界でも・・・気付いているのかなぁ?わたしは、大学院の時にテーマで持っていたのでちょっと着目しているのですが・・・。ソウハクヒ、発毛にも有効ですよ♪


ビタミンCと敏感肌

敏感肌の方は、ある濃度以上のクエン酸乳酸が入っているとピリピリ感を感じることがあります。
ピリピリしたからといって赤くなる訳ではなく、こういった肌をセンシティブスキンといいます。
日本人の半分が自称敏感肌ですが、実際にセンシティブスキンとして反応する方は、ほんの数割です。
しかし、国際的にみて、日本人は欧米人に比べトラブルの発生が多いらしいです。その理由は、過剰なまでの洗顔です。

世界的にも、日本は水が豊富な国です。入浴や洗顔の習慣も古くからあります。毎朝、石けん(洗剤)を使って顔を洗うのも日本の特長です。そういった状態から、皮脂のバリア機能が薄くなって、センシティブスキンなどの反応が生じていると推測されています。
一方、現在の日本は、美白ブームで特にドクターズコスメや実際に医者が処方する美白の化粧水も好んで使われます。医者が出す=効果がある or  安全 と、思うのでしょうか?

美白の有効成分は主にコウジ酸軟膏とビタミンC配合の化粧水でした。しかし、コウジ酸は先の事情で使用が出来なくなり、いまは医者も使っていません。そこで、ビタミンCが更に用いられることになるのです。

医者の立場からすると、「安全性より効果」です。患者を逃がしたくありません。高濃度(5%以上)のビタミンCを配合した化粧水はピリピリ感を感じたりピーリング(皮剥け)が生じたりします。しかし、医者的には「痛かったら○○軟膏を使って下さい」と、新たに抗炎症剤をだすだけです。

はっきり言って、医者は化粧品については無知です。ビタミンCのピーリング現象や安定した配合などは我々化粧品業界の方が数段詳しいのです(一部の医者は除きますが)。医者が出してるかたといって、安心して使っていると、怖い結果も生じます。

医者は、医学を学び、生態学、生体構造学には詳しいですが、薬品や長期使用の安全性、薬品の組み合わせによるトラブルについては、それ程知見はないのです。

法外な値段でビタミンC配合の化粧水を売っている医者がいますが、・・・。どれほどの知識をお持ちかは怪訝せざるえないですね。



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