厚生労働省ホームページ
最終更新日:平成16年2月27日

牛海綿状脳症(BSE)等に関するQ&A

 今般、牛海綿状脳症(BSE)等に対する正しい知識と現状の牛肉への安全確保対 策等について理解を深めていただきたく、厚生労働省において、次のとおり牛海綿状 脳症(BSE)等に関するQ&A(平成13年3月19日)を作成しました。
 今後、牛海綿状脳症(BSE)等に関する知見の進展、規制の変更等に対応して、 逐次、本Q&Aを更新していくこととしています。

<目次>

1 どのような病気か
(1) 牛海綿状脳症(Bovine Spongiform Encephalopathy:BSE)について
 Q1 BSEとはどのような病気ですか?
 Q2 BSEの原因は何ですか?
 Q3 ヒトや他の動物に似た病気はありますか?
(2) BSEと新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(variant Creutz-feldt-Jakob disease:vCJD)との関係について
 Q1 BSEとvCJDは関連がありますか?
 Q2 1996年3月以降、BSE及びvCJDの関連に関する研究は進 んでいますか?
 Q3 英国など諸外国でのvCJD発生状況はどのようになっていま すか?
 Q4 日本でもvCJDは発生しているのですか?

2 BSEの発生状況
(1) 諸外国におけるBSE発生について
 Q1 諸外国でのBSE発生状況はどのようになっていますか?
 Q2: 諸外国でのBSE発生の原因は何ですか?
(2) 我が国におけるBSE発生について
 Q1 日本でのBSE全頭検査状況はどのようになっていますか?
 Q2: 日本でのBSE発生状況はどのようになっていますか?

3 我が国の安全確保対策について
(1) 国産牛に対するBSE対策について
 Q1 国産牛についてのBSE対策はどのようなものですか?
 Q2 特定部位の取扱いはどのようになっていますか?
 Q3 国内でBSEが発生した時の国内流通品に対する対応はどうで したか?
 Q4 国内においてBSEが発生するまでの対策はどのようなもので したか?
(2) 輸入牛肉に対するBSE対策について
 Q1 わが国における輸入食品に対するBSE対策はどのようなもの ですか?
 Q2 カナダでBSEが発生した時の対応はどのようなものでしたか ?
 Q3 米国でBSEの感染の疑いがある牛が発見された時の対応はど のようなものですか?
(3) 牛由来の食品の安全性について
 Q1 牛肉は安全ですか?
 Q2 乳製品は安全ですか?
 Q3 食用牛脂は安全ですか?

医薬品(医薬部外品を含む)・医療用具・化粧品に関する現行の規制等につい て
 Q1 現在使用している医薬品(医薬部外品を含む。)、医療用具、 化粧品から、BSEが人に感染する心配はないのですか?
 Q2 平成12年12月に通知したBSEに対する医薬品(医薬部外品を 含む。)、医療用具、化粧品の措置はどういうものですか?
 Q3 今後、BSEの発生国が増えた場合の対応はどうなるのですか ?
 Q4 血液を介してvCJDに感染することはあるのですか?
 Q5 化粧品についても、規制を行う必要があるのですか?
 Q6 ウシ等に由来する成分を含む医薬品等を個人で輸入する場合ど のような手続きが必要ですか?
医師や歯科医師が個人輸入する場合と何か違いはあるのですか?


<照会先>
  医薬食品局食品安全部監視安全課 食品、BSEについて全般
  医薬食品局審査管理課 医薬品(医薬部外品を含む。)、医療用具、化粧品
  医薬食品局血液対策課 血液(輸血)
  医薬食品局監視指導・麻薬対策課 医薬品等の個人輸入
  健康局疾病対策課 新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)



1 どのような病気か

(1)牛海綿状脳症(Bovine Spongiform Encephalopathy:BSE)について

Q1:BSEとはどのような病気ですか?

A1

 BSEは、TSE(伝達性海綿状脳症:Transmissible Spongiform Encephalopathy)という、未だ十分に解明されていない伝達因子(病気を伝えるも の)と関係する病気のひとつで、牛の脳の組織にスポンジ状の変化を起こし、起立不 能等の症状を示す遅発性かつ悪性の中枢神経系の疾病です。

注1)TSEの特徴

(1) 潜伏期間は数ヶ月から数年の長期間
(2) 進行性、致死性の神経性疾患
(3) 罹患した動物やヒトの脳の薬剤処理抽出材料を電子顕微鏡下で観察する と異常プリオンタンパク(細胞タンパクの異常化したもの)の凝集体を確認
(4) 病理学的所見は中枢神経系の神経細胞及び神経突起の空胞変性、星状膠 細胞 の増殖
(5) 伝達因子によるヒトや動物での特異的な免疫反応がない。

注2)BSEの臨床的特徴

(1) 潜伏期間は2〜8年程度、発症すると消耗して死亡、その経過は2週間 から 6ヶ月。
(2) 英国では3〜6歳牛が主に発症。
(3) 臨床症状は、神経過敏、攻撃的あるいは沈鬱状態となり、泌乳量の減 少、食 欲減退による体重減少、異常姿勢、協調運動失調、麻痺、起立不能などであ り、 死の転帰をとる。

Q2:BSEの原因は何ですか?

A2

 BSEの原因は、他のTSEと同様、十分に解明されていませんが、最近、最も受 け入れられつつあるのは、プリオンという通常の細胞タンパクが異常化したものを原 因とする考え方です。プリオンは、細菌やウイルスの感染に有効な薬剤であっても効 果がないとされています。
 また、異常化したプリオンは、通常の加熱調理等では不活化されません。

Q3:ヒトや他の動物に似た病気はありますか?

A3

 BSE同様の脳にスポンジ状の変化を起こす、十分に解明されていない伝達因子に よるTSEとして、めん羊や山羊のスクレイピー、伝達性ミンク脳症、ネコ海綿状脳 症、シカやエルク(ヘラジカ)の慢性消耗病(chronic wasting disease)があるほ か、ヒトについてもクールー、CJD(クロイツフェルト・ヤコブ病: Creutzfeldt-Jakob disease)、致死性家族性不眠症、vCJD(新変異型クロイツ フェルト・ヤコブ病:variant Creutzfeldt-Jakob disease)が報告されています。

(2)BSEと新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(variant Creutz-feldt-Jakob disease:vCJD)との関係について

Q1:BSEとvCJDは関連がありますか?

A1

 1996年3月20日、英国の海綿状脳症諮問委員会(Spongiform Encephalopathy Advisory Committee(SEAC))は、10名のvCJDを確認し、これらはすべて 1994年又は1995年に発症したもので、従来のCJDと比較して、

(1) 若年層で発生すること、
(2) 発症して死亡するまでの平均期間が6ヶ月から13ヶ月に延長しているこ と、
(3) 脳波が異なること、
(4) 脳の病変部に広範にプリオン・プラークが認められること
など従来のCJDとは異なる特徴を有するとしました。
 疫学的研究及び症例研究では、vCJDの症例間の共通な危険因子は確認されませ んでしたが、SEACによると、9名は過去10年間に牛肉を食べており、1名は91年 以降、菜食主義者でした。
 SEACは、BSEとvCJDの間に直接的な科学的証拠はないが、確度の高い選 択肢もなく、最も適当な説明としては、患者の発生は1989年の特定の内臓 (Specified Bovine Offal)の使用禁止前にこれらを食べたことに関連があるとしま した。

Q2:1996年3月以降、BSE及びvCJDの関連に関する研究は進んでいますか?

A2

 動物試験において、BSE及びvCJDの関連に関する研究が進められており、

(1) 近交系マウスの脳内接種による潜伏期及び脳病変の分布パターンを指標 とした株 のタイピング、
(2) 異常プリオンタンパクのPrPSc(プロテアーゼ耐性タンパク)の糖鎖パ ターン、
(3) 牛のプリオン遺伝子を導入したマウスでの脳内病変
の3つの試験結果からは、BSEとvCJDは同一の病原体ではないかとされていま す。


参考)BSEとvCJDの因果関係を支持する証拠となる研究

〈ネイチャー(Nature)による報告〉

 1997年10月2日の科学雑誌「ネイチャー(Nature)」に報告された2つの重要な論文 により、SEAC(海綿状脳症諮問委員会)はBSEの原因物質は、vCJDの原因 である可能性が高いとしました。

(1) 英国の家畜衛生研究所のDr. Moira Bruceらは、3群の近交系マウス及 び1 群の交雑系マウスにBSE、vCJD、及びCJDの材料を接種したところ、 BSE接種群はvCJD接種群と同様の潜伏期間、臨床症状、脳病変の分布を 示し たことから、BSEとvCJDは同じ特徴を持つ、又は同じものであると し、CJ D及びスクレイピーとは異なるものであるとしました。
(2) また、英国の王立医科大学のDr. John Collingeらは、ヒトのPrP遺伝子 を組 み込んだマウスへのBSEの伝達実験を報告しており、1996年の10月24日 にも 「ネイチャー」にvCJDとBSEの関連を示す関連を示すデータを報告 していま す。

〈その後の実験報告〉

 牛のPrP遺伝子を組み込んだマウスを用いた実験結果も、BSE感染牛がvCJD の原因であるという見方を支持しています。これらのマウスではBSE伝達因子が種 の壁を超えて増殖するだけでなく、vCJDかBSEのいずれかを接種したマウス間 での、病気の特徴の識別ができませんでした。

 このようにBSEがvCJDの原因であるか否かについては、直接的な確認はされ ていないものの、動物試験では原因であることを示唆する結果が示されています。

Q3:英国など諸外国でのvCJD発生状況はどのようになっていますか?

A3

 vCJDと確定されたものは、平成16年1月現在、英国で145名が報告され、その 他フランスで6名、アイルランド、イタリア、米国及びカナダで各1名が報告されま した。
 なお、アイルランド及びカナダの事例については英国での滞在歴があり、アメリカ の事例は在米の英国人です。

Q4:日本でもvCJDは発生しているのですか?

A4

 平成11年4月に施行された感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法 律に基づく感染症発生動向調査事業による届出や「特定疾患治療研究事業」による臨 床調査個人票を用いた解析では、日本国内においてvCJDは、1例も報告されてい ません。


2 BSEの発生状況

(1)諸外国におけるBSE発生について

Q1:諸外国でのBSE発生状況はどのようになっていますか?

A1

 BSEは、 OIE(国際獣疫事務局)の統計によると、本疾病が1986年に英国で 発見されて以来、英国のほか、ベルギー、デンマーク、フランス、ドイツ、アイルラ ンド、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、ギリシャ、スペイン、ポルトガル、 フィンランド、オーストリア、スイス、リヒテンシュタイン、チェコ、スロヴァキ ア、スロベニア、ポーランド、イスラエル及びカナダで国産牛の発生例が報告されて います。
 また、オマーン、フォークランド諸島、デンマーク、カナダ、イタリア、アゾレス では英国から輸入された牛でのBSE発生が報告されています。なお、2003年12月に 報告された米国での発生例はカナダから輸入された牛とされています。

Q2:英国など諸外国でのBSE発生の原因は何ですか?

A2

 BSEは、伝達因子に汚染された肉骨粉(食肉処理の過程で得られる肉、皮、骨等 の残磋から製造される飼料原料)を含む飼料の流通を通じて広がったと考えられ、そ の汚染原因はスクレイピーに感染した羊又は何らかのTSEに感染した牛のいずれか と考えられています。これは、1980年代の前半に製造方法が変更され、原因物質が残 存した肉骨粉が給与されるようになったことにあるのではないかと考えられていま す。


(2)我が国におけるBSE発生について

Q1:日本での全頭検査状況はどのようになっていますか?

A1

 国内において、食肉として処理されるすべての牛についてBSE検査を実施してお り、その状況は毎週ホームページ上に公開しております。
 
牛海綿状脳症(BSE)のスクリー ニング検査結果について(週報)


Q2:日本でのBSE発生状況はどのようになっていますか?

A2

 平成13年9月21日に日本国内において初めてBSEの発生が1頭確認されまし た(平成13年9月22日に農林水産省より公表)。これは、独立行政法人 動物衛 生研究所においてBSE疑似患畜と認められた検体が英国獣医研究所(国際リファレ ンス研究所)において、BSEと診断されたものです。この牛は、千葉県内で8月6 日にとさつされた乳牛(ホルスタイン種、雌、5歳)で、とちく検査の結果、全部廃 棄となり、食用には用いられていません。
 また、平成13年10月18日の全頭検査開始以降、BSEと診断された牛は下表 のとおりですが、これらの牛の食肉、内臓等、当該牛に由来するものはすべて焼却処 分されており、市場には流通していません。

BSE確認状況について
  確認年月日
(と畜年月日)
生年月日
(確認時の月齢)
品種
(性別)
生産地
(飼育地)
検査実施機関
(確認検査実施機関)
臨床症状等 検査結果
1 平成13年9月10日*
(平成13年8月6日)
平成8年3月26日
(64ヶ月齢)
ホルスタイン種
(雌)
北海道佐呂間町
(千葉県白井市)
千葉県
((独)動物衛生研究所)
起立不能
敗血症
WB法
免疫組織化学検査
病理組織検査
2 平成13年11月21日
(平成13年11月19日)
平成8年4月4日
(67ヶ月齢)
ホルスタイン種
(雌)
北海道
(北海道)
北海道
(帯広畜産大学)
無し WB法
免疫組織化学検査
病理組織検査
3 平成13年12月2日
(平成13年11月29日)
平成8年3月26日
(68ヶ月齢)
ホルスタイン種
(雌)
群馬県
(群馬県)
埼玉県
(横浜検疫所輸入食品・検疫検査センター、帯広畜産大 学)
無し WB法
免疫組織化学検査
病理組織検査
4 平成14年5月13日
(平成14年5月10日)
平成8年3月23日
(73ヶ月齢)
ホルスタイン種
(雌)
北海道
(北海道)
北海道
(帯広畜産大学)
左前肢神経麻痺
起立困難
WB法
免疫組織化学検査
病理組織検査
5 平成14年8月23日
(平成14年8月21日)
平成7年12月5日
(80ヶ月齢)
ホルスタイン種
(雌)
神奈川県
(神奈川県)
神奈川県
(国立感染症研究所)
起立不能
股関節脱臼
両側前肢関節炎
乳房炎
熱射病
WB法
免疫組織化学検査
病理組織検査
6 平成15年1月20日
(平成15年1月17日)
平成8年2月10日
(83ヶ月齢)
ホルスタイン種
(雌)
北海道
(和歌山県)
和歌山市
(国立感染症研究所)
起立障害 WB法
免疫組織化学検査
病理組織検査
7 平成15年1月23日
(平成15年1月21日)
平成8年3月28日
(81ヶ月齢)
ホルスタイン種
(雌)
北海道
(北海道)
北海道
(帯広畜産大学)
無し WB法
免疫組織化学検査
病理組織検査
8 平成15年10月6日
(平成15年9月29日)
平成13年10月13日
(23ヶ月齢)
ホルスタイン種
(去勢)
栃木県
(福島県)
茨城県
(国立感染症研究所)
無し WB法
(注4)
免疫組織化学検査
病理組織検査
9 平成15年11月4日
(平成15年10月29日)
平成14年1月13日
(21ヶ月齢)
ホルスタイン種
(去勢)
兵庫県
(広島県)
福山市
(国立感染症研究所)
無し WB法
免疫組織化学検査
病理組織検査
10 平成16年2月22日
(平成16年2月20日)
平成8年3月17日
(95ヶ月齢)
ホルスタイン種
(雌)
神奈川県秦野市
(神奈川県平塚市)
神奈川県食肉衛生検査所
(国立感染症研究所)
起立困難
股関節脱臼
WB法
免疫組織化学検査
病理組織検査
(注1) 病理組織検査は、脳組織に明らか な空胞が認められた場合、「+」としている。
(注2) いずれの場合もBSEを疑う臨 床症状は確認されなかった。
(注3) 平成15年2月に神奈川県でス クリーニング検査陽性となった牛1頭は、BSE確認検査の結果、陰性と判断するに は至らなかった。
(注4) 糖鎖パターン及びプロテアーゼ 耐性がこれまで確認されたBSEのものとは異なっていた。
  * : BSE検査陽性確認


3 我が国の安全確保対策について

(1) 国産牛に対するBSE対策について

Q1:国産牛についてのBSE対策はどのようなものですか?

A1

 平成13年9月、我が国において初めてBSEにり患した牛が発見されたことから、 同年10月18日より、食用として処理されるすべての牛を対象としたBSE検査を全国 一斉に開始するとともに、食肉処理時の特定部位(specified risk material:Q2 参照)の焼却処分を義務化し、BSEにり患した牛由来の食肉等が流通しないシステ ムを確立しています。


Q2 特定部位の取扱いはどのようになっているのですか?

A2

 国内において、と畜・解体時にすべての牛の頭部(舌、頬肉を除く。)、せき髄及 び回腸遠位部の焼却並びにこれらにより食用肉等が汚染されることのないよう衛生的 な処理を義務づけています。なお、回腸遠位部とは小腸の末端部分を指し、盲腸の接 続部分から2メートルまでの部位です。
 また、牛のせき柱については、せき柱に含まれる背根神経節のリスクがせき髄と同 程度とされたため、平成16年2月16日からBSE発生国の牛せき柱の食品使用等が禁 止されました。
 (
「牛せき柱を含む食品等の管理 方法」に関するQ&Aを参照)

Q3 国内でBSEが発生された時の国内流通品に対する対応はどうでしたか?

A3

 国内においてBSEが発生した際に、食品の製造・加工者に対し、牛由来の原材料 を使用する食品について点検を行い、特定部位を使用している又はその可能性がある 食品については、原材料の変更、販売の中止や回収を行うよう都道府県等を通じて指 導し、さらにこれらの取り組みが確実に行われるよう、必要に応じ、製造・加工者の 施設に立ち入るなど、指導の徹底を図りました。
 
特定部位を含むおそれのある牛由来 原材料を使用して製造又は加工された食品の安全性確保について

Q4:国内においてBSEが発生するまでの対策はどのようなものでしたか?

A4

 国内でBSEが発生し、BSE全頭検査が開始されるまでは、24ヶ月齢以上の牛 のうち神経症状が疑われる又は病畜等全身症状を示す牛を対象として、BSEサーベ イランスを行い、国内におけるBSE発生の有無についての調査を行ってきました が、平成13年9月21日に国内におけるBSEの発生が初めて確認されたことか ら、牛由来の食品に対する安全性確保の更なる充実策として、このサーベイランス体 制の強化を早急に行うこととしました。具体的には、国民の不安を解消するという観 点から、すべての牛についてサーベイランスの対象とすることとしました。
 また、これまで、サーベイランスの精密検査については特定の研究機関で行ってい ましたが、都道府県などの各自治体においてもスクリーニング検査を行うことができ るようにするために、平成13年10月上旬に研修等を行うことにより、早急に体制 を整備しました。このスクリーニング検査は、10月18日から全国一斉に開始しま した。


(2)輸入牛肉に対するBSE対策について

Q1:わが国における輸入食品に対するBSE対策はどのようなものですか?

A1

 前述のとおり、1996年以降、vCJDがBSE感染によることを示唆する実験結果 が蓄積してきていますが、現在までBSEがヒトへ感染したという直接的な証明はな されていません。
 しかしながら、高発生国である英国については牛肉等(牛肉、牛内臓及びこれらの 加工品)の輸入自粛を要請するとともに、低発生国についてもOIE勧告を踏まえ、 健康牛であっても脳、脊髄等の危険性の高い部位が輸入されないことが重要との認識 で対応してきました。
 具体的には、病原体の牛肉等から人への感染については未確認であるが、その可能 性が指摘されているため、念のため、1996年3月以降BSE発生防止対策が十分に実 施されていないと考えられる英国産の牛肉及び加工品の輸入自粛を指導してきまし た。
 さらに、2000年12月には、農林水産省が、BSEの我が国への侵入防止に万全を期 すため、EU諸国等からの牛肉等の輸入の停止措置 (2001年1月1日実施)を決定 しました。このことを受け、厚生労働省としても、この措置の周知を図るとともに、 この措置に含まれない骨を原材料とする食品について、緊急措置としてEU諸国等か らの輸入自粛を指導してきました。
 このように、これまでは緊急的に行政指導による措置を行ってきましたが、欧州に おけるBSE急増が継続して問題が長期化しており、国民の食生活への不安が高まっ ている中で、BSEの我が国への侵入防止策をより確実なものとすることが必要と判 断し、農林水産省の家畜等に係る法的措置と並んで食品衛生法に基づく法的措置を行 い、2001年2月15日、牛肉、牛臓器及びこれらを原材料とする食肉製品について、E U諸国等からの
輸入禁止措置をとり ました。

注1)EU諸国とは、ベルギー、ドイツ、フランス、イタリア、ルクセンブルグ、オ ランダ、デンマーク、アイルランド、英国、ギリシャ、スペイン、ポルトガル、フィ ンランド、オーストリア、スウェーデンをいう。

注2)食品衛生法に基づく法的措置とは、法第5条で特定疾病にかかった獣畜の肉等 の販売等を禁止していることから、厚生労働省令を改正し、特定疾病に「伝達性海綿 状脳症」を追加。

Q2:カナダでBSEが発生した時の対応はどのようなものでしたか?

A2

 平成15年5月21日、カナダにおけるBSE発生を確認したことから、カナダから輸 入される牛肉等の輸入を禁止しました。
 また、同年1月以降輸入されたカナダ産牛肉等及びその加工品のうち、輸入届出内 容から特定部位(舌及び頬肉を除いた頭部、せき髄並びに回腸遠位部)の混入の可能 性が否定できなかった 590,350 kg について、都道府県等を通じて調査した結果、特 定部位の混入又はそのおそれがあったものは、子牛の脳 24 kg のみであり、保管さ れていた 14 kg について業者において全量焼却処分としたことを確認しました。

Q3:米国でBSEの感染の疑いがある牛が発見された時の対応はどのようなもので すか?

A3

 平成15年12月24日、米国においてBSEが疑われる牛が発見されたとの米国農務省 の発表を受け、米国から輸入される牛肉等を検疫所において保留しました。同年12月 26日、英国の獣医学研究所における確定診断の結果、BSEと診断されたため、米国 産牛肉等の輸入を禁止しました。
 これらの対応等については、
米国 におけるBSE発生への対応について(Q&A)を参照

(3)牛由来の食品の安全性について

Q1 牛肉は安全ですか?

A1

 「国際獣疫事務局」(OIE)の基準では、筋肉は特定部位ではないとされてお り、牛肉の安全性には問題がないとされています。
 国内においては、食用として処理されるすべての牛についてBSE検査を実施する とともに、と畜・解体時にすべての牛の特定部位(specified risk material)の除去 ・焼却及びこれらにより食肉等が汚染されることのないよう衛生的な処理が義務づけ られています。

Q2:乳製品は安全ですか?

A2

 TSEに関するWHO専門家会議報告によると、動物や人の海綿状脳症においても 乳はこれらの病気を伝達しないこととされており、したがって、BSEの発生率が高 い国であっても、乳及び乳製品は、安全と考えられるとされています。


Q3.食用牛脂は安全ですか?

A3.

 国内においては、食用として処理されるすべての牛についてBSE検査を実施すると ともに、と畜・解体時にすべての牛の特定部位の除去・焼却及びこれらにより食肉等 が汚染されることのないよう衛生的な処理が義務づけられています。食用牛脂につい ては、特定部位及びせき柱以外の部位を原料として、食品衛生法に基づく食用油脂製 造業の許可を得た施設において溶解、精製されており、問題はありません。


4 医薬品(医薬部外品を含む)・医療用具・化粧品に関する現行の規制等について

Q1:現在使用している医薬品(医薬部外品を含む。)、医療用具、化粧品から、B SEが人に感染する心配はないのですか?

A1

1.これまで、医薬品(医薬部外品を含む。)、医療用具、化粧品から人にBSEが 感染したという報告は国際的にもありませんが、平成8年4月には、英国におけるB SEの発生状況等を踏まえ、以下の措置を講じています。

(1) 英国産のウシ等由来原料(羊毛及びラノリン等羊毛由来物を除く。)の 医薬品等(医薬品、医療用具、医薬部外品及び化粧品)への使用の禁止
(2) 英国産以外のウシ等由来原料を医薬品等に使用する場合は、BSE発生 群と関係のないウシ等に由来するものに限定
(3) 当該ウシ等由来原料の製造者、当該ウシ等の原産国、使用部位等を記録 し、保管すること。

2.また、市場にある医薬品などが、ただちに危険性があるものではありませんが、 欧州でのBSEの発生の拡大に対応した予防的な措置として、平成12年12月に、新た な措置を講じています。

Q2:平成12年12月に通知したBSEに対する医薬品(医薬部外品を含む。)、医療 用具、化粧品の措置はどういうものですか?

A2

1.欧州でのBSEの発生の拡大に対応した予防的な措置として、平成12年12月12日 に、厚生労働省では、医薬品(医薬部外品を含む)・医療用具・化粧品に使用される ウシ、シカ、水牛、羊、ヤギなどの動物に由来する原料について、次のような指示を 製造業者、輸入業者に対して行いました。

(1)次の国を原産国とするウシ、シカ、水牛、羊、ヤギなどの動物に由来する原料 は使用しないこと。

BSEが発生している国 英国、スイス、フランス、アイルランド、オマーン、ポルトガル、 オランダ、ベルギー、ルクセンブルグ
BSEのリスクの高い国 アルバニア、オーストリア、ボスニア・ヘルチェゴビナ、ブルガリ ア、クロアチア、チェコ、デンマーク、ユーゴスラビア、フィンランド、ドイツ、ギ リシャ、ハンガリー、イタリア、リヒテンシュタイン、マケドニア、ノルウェー、 ポーランド、ルーマニア、スロバキア、スペイン、スロベニア、スウェーデン
米国連邦規則第9巻第一章第98条第18項(米国農務省告示)(9CFR Ch.I §94.18)より抜粋

(2)医薬品などの原料は世界中の広い地域からくることや今後のBSE発生の拡大 に備え、ウシ、シカ、水牛、羊、ヤギなどの次の部位については、原産国にかかわら ず使用しないこと。

脳、脊髄、眼、腸、扁桃、リンパ節、脾臓、松果体、硬膜、 胎盤、脳脊髄液、下垂体、胸腺又は副腎
2.この指示に基づき、医薬品などの製造・輸入業者は、自らの製品に使用されるウ シ、シカ、水牛、羊、ヤギなどの原料の由来を確認し、使用してはならないウシ、シ カ、水牛、羊、ヤギなどの原料を含む場合は、すみやかに原料の切り替えを行うとと もに、承認内容を変更するための申請を平成13年3月までに、厚生労働大臣に対して 行うことを求めています。

Q3:今後、BSEの発生国が増えた場合の対応はどうなるのですか?

A3

 日本以外の先進国が、使用してはならないウシ等の原料の原産国として12月に厚生 労働省が明示した国以外の国に関し、ウシ、シカ、水牛、羊、ヤギなどの原料を使用 禁止とした場合には、日本においてもその国に由来するウシ、シカ、水牛、羊、ヤギ などの原料について、自動的に使用を禁止することとしています。

Q4:血液を介してvCJDに感染することはあるのですか?

A4

1.血液を介して人がvCJDに感染した事例は世界的にも把握されていません。し かし、現在の科学的な知見では、血液を介した感染の可能性について未知の部分が多 いことから、予防的な措置として、これまで、日本では、献血時の問診において献血 者の海外渡航歴を確認し、1980年から1996年までの間に英国に通算6ヶ月以上滞在し た方については、献血をお断りしています。
 (なお、米国、カナダ、ドイツ、フランス、オーストラリア、ニュージーランド等 において、同様の措置が取られています)。

2.さらに、3月1日に開催された薬事・食品衛生審議会血液事業部会安全技術調査 会において、対象の拡大について検討した結果、下記の7ヶ国に1980年以降、通 算6ヶ月以上滞在した者からの献血を見合わせるよう提言されました。上記措置につ いては、平成13年3月31日採血分より実施することとしております。

アイルランド、スイス、スペイン、ドイツ、フランス、ポルトガ ル、イギリス

Q5:化粧品についても、規制を行う必要があるのですか?

A5

 これまで、化粧品から人にBSEが感染するという報告はありませんが、

(1) ウシ等由来原料が含まれる製品がより広範な地域から輸入される恐れが 高いこと、
(2) ヒトへの伝播経路が現時点では不明であること、
(3) 成分の濃縮等の面で食品以上に感染に対する安全性の確保が必要である こと
などから、これらのリスクに応じて合理的な規制を行っています。

Q6:ウシ等に由来する成分を含む医薬品等を個人で輸入する場合どのような手続き が必要ですか?
 医師や歯科医師が個人輸入する場合と何か違いはあるのですか?

A6.

1.個人が、自己の疾病の治療等の目的で海外から医薬品等を輸入する場合、一定数 量までは、特段の手続きを必要としませんが、それを超えて輸入する際は、薬監証明 の取得が必要になります。また、日本国内で販売されている医薬品等は薬事法で有効 性と安全性の確認がされていますが、個人が輸入したものについてはこのような保証 はありません。

2.また、医師や歯科医師の方が、自己の患者の治療等の目的で医薬品等を輸入する 場合は薬監証明の取得が必要となっていますが、例外として「医療用具を3セット」 までであれば、特段の手続きがいらないものとして扱われています。

3.しかし、今回の欧州におけるBSEの発生動向とこれまでの製造業者等に対する 措置を踏まえて、次のような対応をすることとしました。

(1) 医師や歯科医師の方が自分の患者さんの治療等をするためにウシ等に由 来する成分を含む医薬品、医薬部外品及び医療用具を輸入する場合は、全て薬監証明 の取得が必要なものとして扱うこととする。
(2) 薬監証明の発給に際しては、その医薬品、医薬部外品及び医療用具の品 質及び安全性について証明できない場合は、原則、証明書を発給しないこととする。

4.なお、一般の方が個人使用目的で輸入する場合の手続きについては、変更された 部分はありませんが、自分の健康は自分で守るという観点から、ウシ等に由来する成 分を含む可能性のある医薬品等を輸入する場合には、ご自身でその内容を十分確認し てください。可能であれば、品質及び安全性が確認されるまでの間は輸入をお控えい ただくことが適切と考えます。


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